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270万人の調査でわかった理学療法が届きにくい人の特徴

▼ 文献情報 と 抄録和訳

健康の社会的決定要因は理学療法の利用と関連している:システマティック・レビュー

Braaten AD, Hanebuth C, McPherson H, Smallwood D, Kaplan S, Basirico D, Clewley D, Rethorn Z. Social determinants of health are associated with physical therapy use: a systematic review. Br J Sports Med. 2021 Nov;55(22):1293-1300.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar 

✅ 前提知識:健康の社会的決定要因(SDH)とは?
健康の社会的決定要因(Social determinants of Health: SDH)とは、健康上の成果に影響を与える医療以外の要因のこと。社会的決定要因とは、人々が生まれ、成長し、働き、生活し、年齢を重ねる条件であり、日常生活の条件を形成するより広範な力とシステムのこと。 >>> 参考サイト
【例】
・収入と社会的保護
・教育
・失業と雇用の不安定さ
・労働生活の条件
・食糧不安
・住居、基本的な設備、環境
・幼児期の発達
・社会的包摂と非差別
・構造的紛争
・適切な品質の安価な医療サービスへのアクセス

[目的] 本システマティックレビューの目的は、文献に引用されている健康の社会的決定要因(SDH)を特定して要約し、理学療法サービスを利用する個人との関連を評価することである。

[方法] デザイン:SDH と理学療法利用との関連を記述するために、定性的に合成された情報を用いたシステマティックレビュー。データソース:電子データベース Medline、Embase、および Scopus を開始時から 2021 年 2 月まで検索し、観察研究および質的研究を特定した。対象基準:公開された研究には、すべての地理的場所のすべての診療環境において、理学療法を自主的に利用しようとする18歳以上のすべての成人が含まれていた。

[結果] スクリーニングされた9248件の研究のうち、36件がレビューの対象基準を満たしていました。参加者は8カ国を代表し、総計2,699,437名であった。大半の論文は、各SDHについて中程度の関連の強さを報告していた。女性の性別、非ヒスパニック系白人の人種/民族、教育水準の向上、都市環境、交通手段へのアクセス、雇用、高い社会経済的地位、民間保険は、理学療法を利用する可能性が高いことと関連していた。

[結論] 本システマティックレビューでは、異なる国および理学療法の設定を超えて、成人の理学療法利用に影響を与える素因および可能因子を特定した。本研究の結果は、教育水準の低い人、農村地域の人、社会経済的に低い階級の人など、理学療法サービスの利用が少ないことが示されている集団に関する政策および今後の研究に示唆を与えるものである。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

予防分野、とくに「1次予防、2次予防」(以下参照;>>> 参考サイト)におけるパラドックスがある。

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『届けたい人に届きにくく、届ける必要の少ない人に届きやすい』である。

具体例を考えてみればよくわかる。
理学療法士が主催する健康教室などを開催したとする。
①自分で情報収集した上で積極的に参加してくる意識の高い高齢者
②その情報を知らず、いつも通りこたつでテレビを見ている高齢者

明らかに②の人の健康上のリスクは高く、サービスを届けたい人だ。
にもかかわらず、②の人にこそ、サービスが届きにくくなってしまう。
それはヘルスリテラシーの低さによって、経済事情によって、アクセスしにくさによって・・・。

人生は、選択だ。
選択である限り、そこに自由や自発性が担保されるべきだろう。
医療者はなんとか②の人を救う手立てを!、と本能的に思ってしまうのだが・・・。「健康上のリスクが低い方が善である」、これもエゴなのだろうか?
なんにせよ、今回の論文が明らかにしたような理学療法リテラシーの低い層への取り組みや政策を考える際には、「心」「選択の自由」「意欲」「自発性」などがキーワードになりそうだ。
提供側が躍起になって、当の本人が冷淡なままでは、何かが違う。 #心を燃やせ

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