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廃用を防ぎたい?だったら、 筋肉を加熱しなさい。

▼ 文献情報 と 抄録和訳

受動的な筋肉の加熱は、四肢の廃用による血管機能の低下を抑制する

Hyldahl, Robert D., et al. "Passive muscle heating attenuates the decline in vascular function caused by limb disuse." The Journal of Physiology 599.20 (2021): 4581-4596.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

スクリーンショット 2021-11-24 20.03.20

✅ Key points
- 四肢の廃用は多くの理由(怪我、ベッドレスト、手術後など)で避けられないが、筋肉や血管の健康に重大な悪影響を及ぼす可能性がある。
- 下肢を固定することによる血管機能の低下を、受動的な温熱療法によって軽減できるのではないかという仮説を検証した。
- 10日間の下肢固定により、抵抗性動脈径と血管機能が有意に低下し、これらの低下を抑制するには、膝伸展筋群に1日2時間、受動的に熱を加えることが必要であることを示した。
- さらに、筋生検の分析により、10日間の温熱療法は筋の毛細血管密度を変化させないが、血管リモデリング反応を示す複数の因子をアップレギュレートすることがわかった。
- これらのデータは、廃用による下肢の血管機能低下を緩和する治療手段として、受動的な熱の有用性を示している。

[背景・目的] 四肢の廃用は、血管と骨格筋の両方の健康に重大な悪影響を及ぼす。本研究の目的は、膝伸展筋に受動的に熱を繰り返し加えることで、四肢の廃用が血管機能に及ぼす有害な影響を軽減できるかどうかを調べることである。

[方法] 本試験は、無作為化単盲検プラセボ対照試験であった。21名の健康なボランティア(女性10名、男性11名)が10日間の片側下肢固定を受けた後、毎日2時間のシャム(Imm)またはパルス短波ジアテルミーを用いた熱治療(Imm+H)を受ける群に無作為に割り付けられた。血管機能は、大腿動脈のドップラー超音波検査と受動的脚部運動法で評価した。また、介入の前後に外側広筋の生検を行った。

スライド2

✅ 図. (a) 研究プロトコルと群わけ、(b) 温熱に使用された機器、(c) 加熱のイメージ(実際の加熱の場所はこの図とは異なる)

[結果] Immでは、大腿動脈径(FAD)が7.3%、PLMによる貧血(HYP)が34.3%、それぞれ減少した。Imm+Hでは、FAD(4%減、P = 0.0006)とHYP(7.8%増、P = 0.003)の変化が有意に抑制された。側坐骨筋の毛細血管密度は、いずれの群でも変化しなかった。固定化により、血管内皮増殖因子(P = 0.006)とAkt(P = 0.001)の発現は有意に減少し、アンジオポエチン2(P = 0.0004)の発現は時間の経過とともに増加したが、群間に差は認められなかった。また、マトリックスメタロプロテアーゼ2(P = 0.0046)やフィブロネクチン(P = 0.0163)など、細胞外マトリックスのリモデリングに関連する要素の発現が増加したが、群間に差は見られなかった。

[結論] 四肢を固定すると血管内皮機能が損なわれるが、この悪影響を打ち消すには、毎日のジアテルミーによる筋肉加熱で十分である。これらのデータは、受動的な筋肉加熱が障害による血管機能障害を緩和することを示した初めてのデータである。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

圧迫骨折の受傷直後、重度心不全による起立性低血圧、・・・。
どうしても離床できない期間が、臨床現場にはある。
そのとき、『何かできないか!?』、と思うのが医療者である。
今回論文で示された方法は、その有効な一手だろう。
ただし、あくまでも『Passive』であり、威力は押して測るべしだと思っている。
おそらく、加熱+筋トレ、とかActiveとの組み合わせで最大の威力になるのではなかろうか。
・・・Research Questionが1つ出来上がった。

臨床応用への障壁もある。
1日に2時間というところは、考えものだ。
睡眠時間に並行するなどの方法を取るのか、なんにせよ、この時間の長さは透析に近い感覚になる。

筋肉を加熱することで、廃用による血管機能低下を緩和できる。
このシンプルなコンセプトは、受け入れやすい。
ここから、多くの人に育てられていくコンセプトだろう

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