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81 発達障害の理解 ASD編

新年度に向けて
特別支援教育について
基礎から学び直しです。
発達障害の主な3つの障害として

自閉スペクトラム症:ASD
注意欠陥・多動症:ADHD
(限局性)学習症:LD

の大きく3つがあります。
これらは、生まれつきの「脳」のタイプで、
ものの見方、感じ方、考え方についての
生まれつきの偏りがあります。
中枢神経系の機能障害と推測されており、
おそらく脳の中での情報処理が、
多数派の人達と異なっているのです。

今回はASD編として、この発達障害の理解を目標に
まとめていきます。皆さんも、一緒に
勉強しましょう!


ASDとは

ASDとは医学領域における診断用語です。
以前は自閉症の特性がある人たちを
広汎性発達障害
と総称し、その中に
自閉症、アスペルガー障害、特定不能の広汎性発達障害
などの下位群が設けられていました。
2013年からこれら3つを合わせてASDとなったのです。
当時は、「特定不能の広汎性発達障害」
と診断されていた子が多かったです。
文科省から、高機能障害について次のように定義しています。

高機能自閉症とは、3歳位までに現れ、①他人との社会的関係の形成の困難さ、②言葉の発達の遅れ、③興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害である自閉症のうち、知的発達の遅れを伴わないものをいう。

文部科学省 「高機能自閉症とは」から引用

高機能自閉症とは正式な診断名ではありません。
実際に医療機関などで診療を受ける場合、ASDと診断を受けます。
上記の説明から分かるように、
知的発達の遅れを伴わない自閉症
のことです。

高機能と聞くと、一見、能力全般が高い
印象を持ちますが、
「知能検査の結果では、知的機能の遅れが認められない」
という意味になりますので、我々はその意味を
性格に理解しておく必要があります。

ただし、知的障害があるなしに関わらず、
ASDは
・他者とのコミュニケーション
・社会的関係の形成
に困難を示す固有・独立的な発達上の障害であり、
知的障害教育や情緒障害教育とは異なる配慮・支援が必要です。

支援のポイント 特性の理解

ASDの支援のポイントとして、
特性を理解することから始めましょう。
まず、固有の特性について4点まとめました。

①見通しが立ちにくく、
 急なスケジュールの変更や自分の予想を超える事態で、
 混乱したりパニックを起こしたりしやすい
②自分なりのやり方や
 手順へのこだわりを示す
③感覚の過敏がある人が多く、
 一般の人には何でもないような
 感覚刺激(特に音や感触、匂い)に
 強い不快を感じる
④他者の気持ちや考えを推測したり
 場の雰囲気を理解したりすることが苦手で、
 相手の気持ちや都合を考えずに行動してしまう

これらの理解がなく、
定型発達の人と同じような接し方をしてしまうと、
よかれと思って働きかけたことが
「善意の押し売り」になりかねません。
支援者の意図とは裏腹に、
ASDの子どもを苦しめてしまう
結果となってしまいます。
ASDの子どもの特性を理解し、
特性に応じた接し方やサポートを行うことが大切です。

支援のポイント 適切な行動のモデルを示す

知的な遅れのない人を含めて、
ASDには社会的な理解の困難さがあります。
そのため、場面にそぐわない行動をしたり、
悪意なく他者に不快感を与えたり
することがよく生じます。

この時、
ただ注意や叱責をするだけでは、
効果がないことが多いです。

それは、
注意されたことで
その行動が不適切だと
分かっていても、
ではどう振舞うことが
適切であったかを
つかめないからです。

この状態で注意・叱責が重なると、
被害感情が高まり、
周囲の人への敵意に
つながることもあります。

不適切な言動が見られた時は、
不適切なことを伝えるだけでなく、
「こうすれば(言えば)よい」
というモデルを示すことが重要です。

最初は頭では分かっていても、
実際にはうまく行動できないこともあります。
行動には移せなくても頭では理解している
という段階も大切です。
本人に適切な行動を求めるだけでなく、
適切な行動を身に付ける上で役立ちます。

ASDの症状とその根っこにあるもの

ASDの症状の根っこにあるもの、それは
「常同的・反復的行動」
です。このことから、
①好きなものが増えにくく、
 逆に嫌いなものが増えやすい
②社会的コミュニケーションの障害もあり、
 「人づき合い」が動機での行動に
 なりにくい
③「般化」の難しさ
 などの特徴が見られます。
そのため、1つの場所、1つの場面で
できるようになったことが、
他でもできるとは限りません。

例えば、定型発達の子どもは、
おむつが取れれば
お家のトイレですることになるでしょう。
お家のトイレでできれば、
そのスキルをもとに保育園やスーパー…等、
様々な場所でのトイレもできるようになります。

しかし、ASDの子どもはそうはいきません。
お家のトイレができたとしても、
その他の場所でできるとは限りません。
よって、できる限り最初から
広がりやすいやり方を教えることが望ましいです。

また、理念形成に困難を抱えています。
オレンジジュースの1つの種類がスキであっても、
他のメーカーのオレンジジュースには
見向きもしないことが起こります。

歯みがきの例で言うと、
お母さんが歯みがきしていると
「真似したい」
「お母さんに、自分から歯みがきをして『えらいね』ってほめられたい」
と思うのは、定型発達の子ども。
だから教えやすいのです。
しかし、
ASDの子どもはマネしたい、褒められたいと思わないのです。
やる気になっていないのに、やらされると、きらいになります。
好き嫌いの記憶が強いので、
一度嫌いになると、その感情は薄れません。
忘れるのが、苦手なのです。

これらのことから、
ASDについて適切に理解をしておかなければ、
その後の適切な支援に結びつきません。
注意、叱責を繰り返した結果、
不適応を起こし、2次障害につながってしまう子どもを
数多く見てきました。
実際に、私も行動のみにフォーカスした
指導(頭ごなしの注意・叱責)を行ったことがあります。

結果は皆さんの想像通りです。
子どもとの信頼関係を崩し、
不適応行動を引き起こしてしまいました。

ASDの特性を理解した支援を行わなければ、
子どもにとって、保護者にとって、我々教員にとって
苦しく、悲しい結果をもたらすのです。

ぜひ、皆さんも特性を理解した支援を意識して
行ってみてくださいね。

今日の記事は以上になります。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。


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