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ステラおばさんじゃねーよっ‼️87.家族が増えた日
👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️86.秘密のスパイスカレー② 知波は、こちら。
🍪 超・救急車
母子(おやこ)二人旅をどうにか無事に終え、歩の待つ我が家へ帰宅した。
マンションのエントランス器械にルームナンバーを押下しチャイムを鳴らすと、インターホン越しから、
「どちらさまですか?」
と不機嫌そうに応える歩の声がした。
「ただいまー!」
そのカメラに映ったカイワレに気づくと、
「あ、たい兄!今開ける、すぐ開ける!!」
と歩の態度が豹変し、廊下を小走りする音も聴こえドアも解錠された。
ふたりはエレベーターに乗り込み、自宅の玄関に向かう。
「おかえり!」
扉を開けて出迎えた歩の顔は、満面の笑顔だった。
知波もカイワレの脇から顔をのぞかせ、
「ただいま、歩!」
と声を上げた。
「おかえり、ママ!ささ、ふたりともお疲れでしょうからお風呂を沸かしておきましたよ〜!」
ねぎらいの言葉をかけると、歩は早々にキッチンへ駆けていった。
ふたりは顔を見合せ、お風呂の順番をジャンケンで決めた。
案の定カイワレは負けて、知波が先に浴室へ消えていった。
⭐︎
カイワレは自室に戻り、旅の荷物の整理を始めた。
すると歩が部屋の扉をノックし、返事を待たずに入室してきた。
「二人旅はいかがでした?」
よそよそしく歩は訊ねた。
「うん。無事に父さんの一部を海へ帰してきたよ」
「そう、良かったね」
この数日間、家で留守番なのに連絡も寄越さず、野放しにされたのがさぞ不満だったようで、歩は少しふてくされていた。
「それとね、俺のお祖父(じい)ちゃんにも会えたんだよ!」
「え?!そうなの?それって、すごくない?!」
歩ならきっと喜んでくれると思っていたので、その好反応にカイワレも嬉しさを隠さなかった。
「今日我が家にひとり、家族が増えたよ。歩も俺のじいちゃんに会いたい?」
カイワレがそう言うと、歩は顔を間近にし、
「会いたい、会いたい!今度いつ会いに行く?」
仔犬がじゃれつくように、カイワレにまとわりついてきた。
「あはは。今、帰ってきたばかりだよ?」
カイワレは歩にからめ取られた腕をやさしく解きながら応えた。
「早く会いたいなぁ。お祖父ちゃんの写真、ある?」
歩はそばに置かれたカイワレのスマホをすかさず手に取った。
「あ、よせ、ダメだってば!プライバシーの侵害だぁ!!」
と大げさに声を張り上げ歩からスマホを奪い取った。
「あら、ふたりとも元気ね!」
風呂から上がった知波が、ふたりの騒々しさに引き寄せられて部屋をのぞきにきた。
「おじいちゃんに会えたって聞いたから、つい興奮しちゃった!」
舌を出す歩は、頭を掻きながら言った。
「そうなのよ。きっとね、悠一朗さんがわたし達を引き合わせてくれたのよ。ね、太士朗!」
そう言うと、首に掛けたタオルで濡れ髪を拭きながら知波はリビングへ戻っていった。
⭐︎
「じゃーん!」
ダイニングテーブルには、知波の好物のポテトサラダやカイワレの大好きなコロッケなどがテーブルいっぱいに並んでいる。
「おお〜すごいご馳走だ!」
カイワレは自席に着きながら歩を見て言った。
「わぁあ本当にすごいわ〜!!歩、ひとりで全部作ったの?」
「えへへ〜そうだよ!でも、じゃがいも料理ばかりになっちゃったけどね」
普段やらない料理を照れながら自慢する歩を見て、知波は娘の成長に笑みがこぼれた。
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