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おてもやんからブエノスアイレスのマリア様 #移住物語 #ブラジル日報 にて 連載中


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 早いもので新しい年2022年になってから一か月、二月になりましたね。
 去る1月29日からまずは11日間、2022年1月4日より創刊された南米邦字新聞ブラジル日報に拙稿「おてもやんからブエノスアイレスのマリア様 」が掲載されます。

 本日2月3日までに三回掲載されています。

 この物語の主人公は1932年に熊本からアルゼンチンに渡った女性です。カ子(かね)さんに初めてお会いしてから10年ほどお付き合いをさせていただきました。そのご本人から見聞きしたお話を再録した形態をとっています。
 「事実は小説よりも奇なり」と言われることを地で行っている人々は移住者の中に多いのですが、特に女性の人生の話はあまり日の目を見ることは少ないと思います。

 取材を通じて知り合ったのですが、私はカ子(かね)さんの心意気にほれ込んでしまいました。仕事以上に人生の大先輩としていろいろ学ばせていただきましたし、わたしがいつもお話を聞いていたり質問をしていたので、結果、興味深いことに、ご家族の方も知らなかったという事実が多々ありました。

 現在、119歳で世界最高齢は福岡の田中カ子さん(1903(明治36)年)ということですが、奇しくも同じ名前の私のカ子さん田中カ子さんの二歳年下です。

 物語を書くに当たりアルゼンチン日本人移民史(FANA発行)、サルミエント日本語学校創立七十五周年記念誌、邦字新聞などの資料にあたりました。さらに、在アルゼンチン日系社会のいろいろな世代の方々からも家族の皆様の思い出話などを聴かせていただきました。そこで、実際は資料とは違うことが少なからずありました。

 おそらく資料のニュアンスの問題もあるかもしれません。私の当たった歴史的資料は主に男性のそしてまた大変活躍なさった方の武勇伝が多くを占めています。記念誌や発刊に当たってのことばも大事業や行事の記録も重要です。一方、日本とは違い最初は日本のかけらも何もないところで日本人が毎日どうしていたか、日常やどのように乗り越えていったのか、あることはあるのですが、ここをもっと知りたいと思うことがちょうどないのです。わからないのです。

 それをさらに深めるには、誰かを主人公にしてその人の生き様を描くうちに疑問に思ったことを調べていく方法がいいのではないかと思いました。そしてまたどうしてそのようなことが書いていないのか考えたら、二人の方がそれを教えてくれました。

一人は日本人で小さいときにこちらに親に連れられて移住された、もうひ孫さんがいる方でした。もう一人はお母さんもアルゼンチン生まれの三世の方でした。二人とも全く違う地域に住み世代も少し違いますが同じように口をそろえておっしゃいました。

 それは男の人が書いたからですよ。

書いてくれるのなら母のことを話します。こんなおもしろいこともありました、と次々に教えてくださるので私にとっては嬉しい悲鳴をあげる状態となりました。

 一方で、日本語はできるが、日本の日本語の本や邦字新聞の高齢な日本人の書く漢字の比重が大きい記事は難しすぎて読めないという声も聞いていました。そのため、自分の母親か祖母のような人の話でアルゼンチンが舞台ならこちらの事情もわかっているのだから、読みやすいだろうと思い、同時に、ブラジルをはじめ南米生まれの方々のために読みやすい日本語で書くように努めました。日本文化の説明や描写が日本の方には少し細かすぎるかもしれないのはそういう理由があります。主人公のカ子さんが子どもたちにそして孫たちに諭すようにそして説明するという手法を取っています。同時に異文化理解のテーマなどが出てきます。
 第一部はカ子さんの移住のストーリーが中心です。
 1930年頃から45年ごろまでのお話しです。
 第二部ではもう少し現代に近づきます。実はこのカ子さんは2002年NHKのど自慢 in ブエノスアイレスに出演されました。
 皆さまの応援と私の余力があれば第三部も書きたいです。
 アルゼンチン日系社会の歴史に少しでも興味を持っていただければ幸いです。新聞小説で一生ずつ掲載されますので読み続けやすく、また次の日の新聞を待つ楽しみになったら幸いです。また読み切り形式なのでバラバラに読んだり少し戻ってもお楽しみいただけると思います。
 また感想をいただければ喜びますので、ときどき誤植もありますし、またわかりにくいところもありますので、ご叱責ご鞭撻いただければ幸いです。
 そして日本の日本人の方々だけではなく、南米の日系社会のそれぞれのご家庭で、おばあちゃんやおじいちゃんがこうやってこの地に来たから今があるんだよ、というルーツを知る、調べるきっかけになれば幸いです。
 日本時間で午前8時頃にその日の新聞が更新されます。

ブラジル日報  https://www.brasilnippou.com 
日系コロニアニュース https://www.brasilnippou.com/colonia ここから日付けから探すことも可能です。
 またご購読された場合は添付写真のようにルビ付きの枠組みが入ったものになります。 

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 ときどき誌面の都合で掲載されない日もあります。
是非ビューやLIKE、シェアがあれば新聞の継続にもつながりますのでよろしくお願いします。 
なお、作家の水村美苗さんに応援記事をいただきました。ニッケイ新聞は2021年12月廃刊した最後のブラジルの邦字新聞で、ブラジル日報はその流れを汲みながら新しいコンセプトで今年創刊しました。
特別寄稿=相川知子さんと「ニッケイ新聞」と私=小説家 水村美苗 https://www.brasilnippou.com/2022/220129-31colonia.html
連載小説=おてもやんからブエノスアイレスのマリア様=相川知子=第1回https://www.brasilnippou.com/2022/%e9%80%a3%e8%bc%89%e5%b0%8f%e8%aa%ac%ef%bc%9d%e3%81%8a%e3%81%a6%e3%82%82%e3%82%84%e3%82%93%e3%81%8b%e3%82%89%e3%83%96%e3%82%a8%e3%83%8e%e3%82%b9%e3%82%a2%e3%82%a4%e3%83%ac%e3%82%b9%e3%81%ae%e3%83%9e.html
連載小説=おてもやんからブエノスアイレスのマリア様=相川知子=第2回  https://www.brasilnippou.com/2022/220201-24colonia.html 

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写真は元中央郵便局(1928年、カ子さんがブエノスアイレスに到着する少し前に完成しました2006年まで郵便局として機能していました)の建物

そして 外国郵便 航空便 船便の投函口 カ子さんへの手紙はここから送られたのであろう。


連載小説=おてもやんからブエノスアイレスのマリア様=相川知子=第3回  https://www.brasilnippou.com/2022/220202-25colonia.html


皆様方のご感想はこちらのコメントでも tomokoargentina3@gmail.com でもお送りください。

そして、多くの日系家庭でそれぞれの物語が語られることになりますように。


2022年2月3日 1898年日亜修好通商航海条約から124年目の日に

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