見出し画像

食本Vol.6『バール、コーヒー、イタリア人』島村菜津

画像5

☆バールとはなんぞや?を通してイタリア人のアイデンティティを知る本
自分でもなぜこの本を買ったのか、が思い出せないのですが、初版発行日を見ると2007年3月20日。2007年の日本の大きな出来事の中で”食”に関わる事をたどって見ましたら「各地で食品偽装発覚」「中国食品への安全性問題深刻化」などに注目が集まっていた年でした。
また、”不都合な真実”のゴア氏がノーベル平和賞を受賞した年でもあったようですね。

今から14年前、のことになるわけですが、私自身もご多分に漏れず、食品というものに”安全”や”危険”、という言葉を使わなければならない時代って一体何が起こってしまっているのだろう、と日々報道されるニュースを見て不安感を募らせていたと思います。(”不安感”は過去形にはなっていませんが。。。)

2007年というとイタリア人のカルロ・ベトリーニがスローフードを提唱してから20年余りを経ていた頃です。
スローフードとはその土地の伝統的な食文化や食材、食品そのものを見直す、という運動として世界的なムーブメントが起きました。

その”スローフード”という言葉を生み出した国イタリア&イタリア人の文化の一つである「バール」がどれほどイタリア人の生活に必要不可欠なものであるか、を日本人である著者がじっくりと観察し、率直に、飾りっけなしに書いた本がこの本です。

画像1

新書なのであっさりとした表紙。コーヒー好きなので、タイトルに惹かれて買ったのだと思います。たぶん。

☆目次
第一章 イタリア人のバールとは?
第二章 バールをめぐる大疑問
第三章 わがままな注文が、ファンタジーを育てる
第四章 一杯飲み屋としてのバール
第五章 みんな違って、みんないい、地方色の豊かさ
第六章 イタリア人がコーヒーを手にするまで
第七章 コーヒーをめぐるおもしろ名言集
第八章 コーヒーの経済学
第九章 イタリアのバールに学ぶ、グローバル時代の航海術

☆イタリア人にとっての”バール”とは?
日本であちこちにある「バール」というとお酒を出してくれる夜のお店、というイメージですが、イタリア人のバールはちょっと違うようです。
昼間にコーヒーと軽食だけ、だったり、甘いお菓子を出したり、きちんとした食事を出すところだったり、立ち飲みスタイル、だったり、絶景を観ながらゆったりする店舗だったり、お酒やワインを楽しむものだったり。。。これという決まったスタイルがあるわけではなく、千差万別。
イタリア人らしい、とでも言うのでしょうか。
ですが、一つだけ共通点が。
それは「集える」こと。
本書で著者島村さんも書かれていますが日本的な言葉で表現すると「寄り合い所」みたいな場所です。
例えば、地方に行くとよくありますね。寄り合い所。
地元の世話好きなおばちゃんたちがお茶菓子やらお茶を勧めてくれて、ついつい世間話や人生相談なんかしてしまうような場所。
そんな感じらしいです。

☆いわゆる”長屋”的なナポリのバール文化 カフェ・ソスペーゾ
ナポリには誰かゆとりのある人がバールに入って、一杯のエスプレッソを飲んで、二人分のエスプレッソ代を払っていく。と、その後から懐の淋しい人がやってきて、バールの主人に”カフェ・ソスペーゾある?”と訊ねる。主人が”あるよ”とこっくり頷けば、その人はただでエスプレッソが飲める。。。
という文化があるそうです。
ちょっとおせっかいな(良い意味で!)”長屋的な”感じのする文化です。
Netflixの映画にもなってますので、ご興味ある方は観てみてください。

画像2

画像3

映画「カフェ・ソスペーゾ」の一場面

☆今回の”旅”で教わった「食」「食べる」とは…
私はまだイタリアには行ったことがありません。ですから分かったような事を書くのはお門違いだと思います。
でも本書を読んでイタリア人がちょっと羨ましくなりました。
それは「イタリア人は自国、地元の食文化にゆるぎない誇りを持っている」
ということ。「これが我が国、我が郷土、我が母(マンマ)の味さ!」と言い切ってくれる。
日本人ももっとここは見習って良いと思うんですけれど。

今回の”旅”で教わった「食」「食べる」とは、自国の食文化や歴史を知ることと同時に誇りを持つことで日々の食事をより豊かにすることができる、ということでした。

☆今回の食本
『バール、コーヒー、イタリア人~グローバル化もなんのその』
島村菜津著(光文社新書)

☆本日のおまけ~映画で”おいしいお勉強”

まだまだなかなか海外旅行が難しい世の中なので最近はもっぱらNetflixで海外の食関係の映画を見てはよだれをたらしております。
『旅する料理:イタリアから世界へ』は、世界中に散らばったイタリア人移民が異国の地でどのようにイタリア料理を広め、根付かせていったのか、が描かれています。これを見ると「食」はその民族のアイデンティティなんだと感じます。しかも本当においしそうな”マンマのイタリアン”がたくさん登場するので空腹時や深夜に見るのは危険です。

画像4


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?