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休息日には | ヒマラヤをうろうろと 7

午前11時にもなると、テント内の気温が少し上がり過ごしやすくなってきます。寝袋の中で着ていたダウンジャケットを脱ぎ、外に干そうとテントから出るとシェルパたちが少量のお湯で洗髪をしているところでした。

そういえば、三週間全く触れていない髪の毛はニット帽の中で頭皮と一体化し始めています。耳を澄ますと毛根の悲鳴が聞こえてきそうです。
お湯でさっぱりしたい気持ちに駆られますが、それは下山後の楽しみにとっておくことに決め、テント内に戻ると寝袋に潜り込みます。

キャンプでの休息日。
休みの日には、今後の行動計画の確認やこれから使う装備や機材の確認と整理などを行います。空いた時間は基本的にゆっくりと過ごしますが、大抵は寝袋でお茶をすすりながら本を読むことになります。

山ではなるべく荷物を減らすのが鉄則ですが、本だけは毎回必ず持ってきます。今回持ってきたのは、S・キャラハンの「大西洋漂流76日間」。ある作家で探検家の方が以前紹介していた本で、山に来る直前にアマゾンで購入したものです。
内容は、小型ヨットがクジラにぶつかり大破したため救命イカダに逃れた主人公が、モリで魚を取り、雨水を溜め、サメや魚の攻撃をかわしながら2か月間漂流し、最後は漁師に助けられついに陸に戻るという実話。
開くと止まらずに一気に読み進んでしまいました。ノンフィクションなので、救出された後の治療描写や実際の写真も興味深かったです。
天測で自分の位置をほとんど正確に割り出していたという事実と、彼の精神力にただただ脱帽します。私は山屋さんではないですし、GPSとシェルパ達の助けがなければ調査はほとんど行き詰ってしまいますが、もっと技術を磨かなければと内省。

その後寝袋を干したり、下山してから食べるものリストを勝手に作って悩んでいるうちに、太陽は周囲の高い山に隠れ始め、気温が急激に下がり始めます。また夜が近付いてきました。
何となくテントから出ると、カメラをもって少し歩きます。良い写真を撮れるようになりたいのですが、下山してから写真を見ると全く雰囲気が伝わらないものばかり。景色がちゃんと撮れるぐらいにはうまくなりたいものです。

前回のお話はこちらです。もしよければご一読ください。


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