北沖 五霞

キタオキイツカと読みます。文書を書いたり写真を撮ったりしている人。写真と短い文を中心に徒然と。

北沖 五霞

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      思いついたこととか、備忘録など。

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      撮った写真と短い物語

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    モーニング・レイン

    世界中の涙を集めたように激しい雨粒が傘を鳴らす。 朝だというのに、この世界から悲しみは消えないのだろうかと思ってしまうのは。 きっと、俺の心の中で悲しみが燻り続けて居るからだというのは分かっていた。 今日、秘めた恋は秘めたまま終焉を迎え、愛していた人は他人のものになる。 バスを待つ俺の上等なスーツの裾は跳ねた雨水とコンクリートに溜まった少しの砂利で汚れ、思わず舌打ちをしてしまう。 他人と君の幸せを祈れない俺は、せめて君の白い服と笑顔が虹で照らされる事を祈りながら、式場へ向

      • 雪の果て

        排気ガスで汚くなった雪の塊は、一夜にして粉糖のような真っ白なドレスを纏っていた。 それはきっと、冬の終わりと共に別れを告げる恋人たちの世界を彩るためなのだろう。 この雪の名残が終われば、雪に閉ざされていたこの世界でも美しい草花が咲き乱れる春が訪れる。 私はぼんやりとそう考えながら、突然の雪にも関わらず定刻でやってきたバスに乗り込んだ。 #ss #写真

        • 製本したいと思い立って。

          思い立ったら吉日と、今日は1日誌面構成を考えてた気がする。 今までこちらに投下していたものも4篇組み込みますが、その他は新しく書きます。 全15篇、本文30ページの薄い本ですが、完成したら別名義で出るイベントやBOOTH通販するつもりです。どうぞよしなに。

          • 皆既月食の夜に

            「見てる?」 携帯に届いた短いメッセージは主語もなく、そんなメッセージに「見てるよ」とだけ返す。 丸くトリミングされたその中心に徐々に欠けていく月。その円の中から逃げていくそれを望遠鏡に付いたツマミを調節して追いかける。 「俺のとこ、曇ってて全然ダメ」 「うらやましい」 ぽんぽんと届くその短い文に口端だけ上げて喉で笑い、「しゃあないな、ちょっと黙って待ってろ」とだけ返信をする。そして赤く光り始めたその月を天体望遠鏡の中に収め、携帯のカメラを望遠鏡の覗き穴にそっと重ねるのだ。

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            白と青で告白を

            その人をこの場所に連れてきたのは、何も北国初心者だからと言うだけではない。どうでもいい相手なら、こんな所まで車まで出して連れてきやしないのだ。 ただ、この人には見て欲しかったのだ。わたしが綺麗だと感じたものを、彼と共有したかった。 「なんで連れてきてくれたんだ?」 ひとしきりその光景を楽しんだらしい彼は、私の軽口にそう問いかける。 そんな彼の言葉に「さてね。ま、好きだからじゃないですか?」と軽い調子で返すのだ。 その言葉は、重すぎてはいけない。冗談で済ませてくれるなら、私の

            プリズムの中の恋心

            「そういえば、こっち来て初めての冬でしたっけ」 北国に異動してきて初めての冬、やっと雪道にも慣れてきた頃に社内でよく会話を交わす地元出身者だという後輩が思い出したようにそんな事を俺に尋ねてくる。そんな彼女の問にイエスと返せば「とっておきの景色を見せてあげますから、明日の休み、半日ください」と口端だけ上げて俺に告げた。 そしてその翌日というのが今日である。 後輩が運転する車に乗り込み、普段は行かないような場所へと連れていかれる。 少し郊外の公園の中で「どうです?」と得意気な笑

            ORIGINAL LOVEの夜をぶっとばせの歌詞が最高かよって思う。 「今すぐスピードを上げるからキスしておくれ」 この一節にやられる。

            写真+文のものは今まで撮り溜めていたものに文章を付けてる流しているんですが、星系の写真は以前天体写真の講習会に行った際に講習会場に併設されているプラネタリウムで撮ったものだったりします。 ちなみに月の写真の方は自宅の天体望遠鏡に携帯のカメラくっつけて撮ったものです。

            noteのいいところって、今まで繋がりのなかった方からいいね押していただける事ですね…… 元々の繋がりの方もnoteで初めて私の写真や文を見ていいね押してくださった方も本当にありがとうございます。

            夜間飛行

            真夜中の国際ターミナルは静寂に包まれていた。 ベンチや床で眠りに就く人々の邪魔にならないよう、私はそっと吹き抜けの空間に広がるチェックインカウンターを見下ろして、夜明けを待つ。 その場所は、見慣れた賑やかな昼間の姿とは違う静けさに包まれていて。今なら宇宙にだって行けるような、そんな気がした。 #写真 #SS

            写真+文のやつ。 今後も書き続けていこうとは思っているけど、30p位で製本したいなとふと。 見開きで1篇、15篇くらいのうすいやつ。

            夜明けの珈琲

            人工的な夜空に、どんな星が輝いているのかと男性の声が静かに教えてくれる。解説員の声は隣に座る男友達にはいい子守唄だったようで、私にだけ届くくらいの小さな寝息を立てていた。 プラネタリウムを見たいと言ったのは相手の方だったのに、楽しみにし過ぎたらしい。待ち合わせ場所で欠伸を隠さなかった彼は「遠足前の小学生パターン」と笑っていた。 そんな事を思っていれば人の手によって作られた星空は朝を迎え、私は彼の肩を小さく揺らす。 「うわ、俺寝てた?」 その失態に悔しそうな表情を浮かべた彼に

            ガラス越しに

            日曜七時前のバス停は冷たい冬の空気が張り詰めていた。 踏み固められた雪の上、一人バスを待っていれば道路を挟んだ向かい側、巨大なガラス張りの建物にわたしの背後から射し込む朝日が映り込む。 冷たい冬の匂いを吸い込みながら、バスが迎えにくる数分間、わたしはガラスの鏡面に映るその朝焼けを見つめていた。 #写真 #SS

            わたしを月に

            「連れて行って」と同じベッドの中、隣で眠りにつこうとしていた彼女は窓の外を見ながらぽつりと呟いた。 「どこに」と尋ねれば、「どこだろうね」と返される。その声色で彼女がこちらに背中を向けていても笑っていることくらいは知ることが出来る。その程度には深い付き合いだったから。 「きみと二人で月にでも行ければ、もうなんの気兼ねもしないで一緒に居れるのかな」 そう呟いた彼女に対して出来ることは、その背中をそっと抱き寄せる事くらいだった。 #写真 #SS

            (  )と(  )の焦点距離

            夜明け前のアーケード街を、二人で歩く。 どの店も既にシャッターを下ろしているそんな昔から続く商店街の中を酔っ払いが歩いているのは別段奇妙な光景ではないだろう。 私の前を千鳥足で進む彼が面白くて、思わず携帯のカメラでパシャリとやればその画面に小さくなった彼の背中が現れる。 画面の中の小さな背中を見ていた私が、シャッター音に気付き振り返った彼のその表情に焦点を結ぶまで、あと数メートル。 ( 私 )と( あなた )の焦点距離 久々に夜明け近くまで飲んでいた俺たちは、昔からあ

            わたしの色に染まって

            「土によって色を変えるらしいよ」 紫陽花を見ながら、隣に立つその人は無邪気に私へとそう告げた。 「へぇ、しらなかった」 そんな感想をしらじらしく返しながら、土になれたらいいのに。とぼんやり思う。 あなたが紫陽花であるならば、わたしはその花を育む土になりたい。私という土で咲くあなたは一体何色になるのだろう、と。 そしてその葉で、その花で、殺されるのなら本望だわ。なんて、あなたには言える筈ないのだけれど。 #写真 #SS