世界中の涙を集めたように激しい雨粒が傘を鳴らす。
朝だというのに、この世界から悲しみは消えないのだろうかと思ってしまうのは。
きっと、俺の心の中で悲しみが燻り続けて居るからだというのは分かっていた。
今日、秘めた恋は秘めたまま終焉を迎え、愛していた人は他人のものになる。
バスを待つ俺の上等なスーツの裾は跳ねた雨水とコンクリートに溜まった少しの砂利で汚れ、思わず舌打ちをしてしまう。
他人と君の幸せを祈れない俺は、せめて君の白い服と笑顔が虹で照らされる事を祈りながら、式場へ向かうバスを待つのだ。
#SS #写真