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( )と( )の焦点距離
夜明け前のアーケード街を、二人で歩く。
どの店も既にシャッターを下ろしているそんな昔から続く商店街の中を酔っ払いが歩いているのは別段奇妙な光景ではないだろう。
私の前を千鳥足で進む彼が面白くて、思わず携帯のカメラでパシャリとやればその画面に小さくなった彼の背中が現れる。
画面の中の小さな背中を見ていた私が、シャッター音に気付き振り返った彼のその表情に焦点を結ぶまで、あと数メートル。
( 私
わたしの色に染まって
「土によって色を変えるらしいよ」
紫陽花を見ながら、隣に立つその人は無邪気に私へとそう告げた。
「へぇ、しらなかった」
そんな感想をしらじらしく返しながら、土になれたらいいのに。とぼんやり思う。
あなたが紫陽花であるならば、わたしはその花を育む土になりたい。私という土で咲くあなたは一体何色になるのだろう、と。
そしてその葉で、その花で、殺されるのなら本望だわ。なんて、あなたには言える筈ないのだ