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夜明けの珈琲

人工的な夜空に、どんな星が輝いているのかと男性の声が静かに教えてくれる。解説員の声は隣に座る男友達にはいい子守唄だったようで、私にだけ届くくらいの小さな寝息を立てていた。
プラネタリウムを見たいと言ったのは相手の方だったのに、楽しみにし過ぎたらしい。待ち合わせ場所で欠伸を隠さなかった彼は「遠足前の小学生パターン」と笑っていた。

そんな事を思っていれば人の手によって作られた星空は朝を迎え、私は彼の肩を小さく揺らす。
「うわ、俺寝てた?」
その失態に悔しそうな表情を浮かべた彼に「朝だよ」と笑う。
「コーヒーでも飲みに行こうか」
そう続けた私に彼も「そうだな」と苦笑いを浮かべながらその提案に同意をする。

ほんとうの意味で夜明けのコーヒーを飲めるような間柄ではないけれど、せめてこの位の願いは許して欲しい。私は心の中でだけ、先程までドームに輝いていた機械が作る星空へと願いをかけた。

#写真 #SS

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