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【実例付】どっちかなんてもったいない!ECこそリアル店舗を有効に活用せよ!

Eコマース先進国アメリカ。アメリカでも、ネット通販はまだまだ成長している。アメリカのEコマース売上高は2014年に約2900億ドルであったが、2016年の終わりには約3500億ドルに到達し、さらに今後数年で4000億ドルを突破すると予測されている。

一方で、近年見られるのは、ECサイトとリアルでの店舗展開を組み合わせた、ハイブリット型である。ここ数年で、AmazonやメガネECのWarby Parker他、およそ20社ほどのEコマース企業がリアル店舗での展開に進出している。

今回の記事では、なぜEコマース企業がリアルに進出するのか?どのようなメリットがあるのかというのを考察してみたい。

■Eコマース企業がリアル店舗をどのように活用するのか?

このハイブリット型モデルの代表的な企業はAmazonだ。Amazonは2015年に、アメリカのシアトルに初の書店、Amazon booksをオープンさせた。“体験できるAmazon.com”と表現されるこの店舗では、ECサイトとリアル店舗のハイブリットを実現させている。

例えば、販売されている書籍は全て、表紙を正面にディスプレイされており、その下にはオンラインショップでの読者レビューが、掲示されている。顧客は、まるでECサイトのアマゾンで買い物をしているかのような体験ができるのだ。

(参考画像:http://www.forbes.com/sites/alastairdryburgh/2015/11/07/what-does-amazons-first-bricks-and-mortar-bookstore-tell-us-about-the-future/#3b5009035104)

また、kindleなどのデジタルデバイスのコーナーには、店員に直接使い方などを質問できるようにするなど、オンラインサイトでは実現できないサービスを提供している。

Amazon以外でも、この動きは活発だ。WarbeyParkerはもともと、オンラインでメガネやサングラスの販売を行っており、その商品のデザイン性の高さと低価格で人気を集めた。その後、リアル店舗に進出。2013年に1号店をオープンし、今ではアメリカ国内で30店舗以上を展開している。店舗では、販売だけでなく、オプトメトリスト(検眼医)による検査や、店員が実際にフレームサイズをチェックしてくれるサービスが受けられる。

また、男性用衣料品を取り扱うECサイト、Bonobosも“ガイドショップ”を出店している。このガイドショップが通常の衣料品店と大きく違う点は、客は買った商品を自分で持ち帰らなくて良い、という点だ。ガイドショップには、Bonobosのオンラインストアにある全商品、全サイズが取り揃えられており、客は好きなだけ試着ができる。欲しい商品があれば、その場でオーダーし、送料無料で後日送られてくる。店舗が、まるで展示場のような役割を果たしている。

■Eコマース企業のリアル店舗への進出のプロセスとは?

では、次に、Eコマース企業がどのようにリアル店舗を展開しているのか?その一般的なプロセスを解説しよう。

1.ポップアップショップの開設

まず最初はポップアップショップの開設だ。そこで初めにポップアップショップというのは、人通りの多い場所に開設する期間限定の店舗の事である。最初から、将来の見込みも不確かなまま店舗を持つと、コストだけかかり、実際の売上が上がらないという事態になりかねない。場所は、都市部の人取りの多い場所や地方のショッピングモールなどだ。日本で言うと、銀座や原宿などにあたる。ポップアップ店舗を出すことは、期間限定である事による新規性、稀少性があり、集客しやすいし、そのエリアが有望な市場なのか、テストマーケティングできるというメリットがある。

2.実際に店舗を出店する

そしてポップアップショップの次に、実際の店舗を出店していく。実は、リアルの小売業で一番難しいのが出店戦略。どのエリアにどのように店を出すのか?という方法である。例えば、スターバックスは、ドミナント戦略と言って、一定のエリアに集中して出店する。ユニクロは、ブランドや地名度を一気に引き上げるため、旗艦店を呼ばれる店を都市部の中心に出店している。

しかし、資本力のある会社は、集中出店や都市部の大型店を開設できるが、資本に限界があるベンチャーはどうするのか?実は、シリコンバレーのベンチャーが行っているのは、Eコマースで貯めた顧客データベースを分析し、既に利用客の多いエリアに出店するという事である。

出展

http://www.agilone.com/academy/easy-wins-effectively-use-your-retail-data/

オーガニックの化粧品をEコーマスで展開している100% Pureは、最近リアルの店舗展開を加速している。出店先を選ぶに当たり、彼らは既存の顧客がどこに在住しているのかを分析した。その結果、カリフォルニアのサンフランシスコやワシントンDCエリアに顧客が多い事が判明。そのエリアに出店を決めた。既に顧客が住んでいるエリアだから、店舗展開しても可能性が高いと判断している訳だ。

また、新店舗オープンのプロモーションに関しても、既存の顧客を最大限に活用する。店舗の半径80キロ以内に住んでおり、ライフタイムバリューなどを考慮し、顧客を抽出。店舗オープンのキャンペーン告知を送付する。その際に、家族や友人も一緒に来てもらえるような、クーポンを発行する。

このように、従来では取り込めなかったECサイトを利用しない層という新しい潜在顧客を引き寄せることができる。より多くの人に足を運んでもらえるような店舗を作り上げていくのだ。ネット上で商品を購入したことのある店が、自分の住んでるエリアで店舗を開店すると知ったら、訪れるお客さんは多いだろう。また、お客さんにとっては、全く知らない店ではないので、来店へのハードルもぐっと低くなる。

上記のプロセスを経て、Eコマースで顧客獲得し、リアルに店舗展開するという一連の流れ、型というものができつつあるのである。

■これから店舗型ビジネスはどう変わる?

さて、このようなハイブリット型が主流になれば、店舗の役割はこれから大きく変わるだろう。私は、店舗の目的は従来の「購入」から「展示」にシフトすると予測している。アップルストアのように、商品の展示、顧客サポート、顧客教育などを主目的とする店舗である。

実は、アメリカのベンチャー企業は、既に全く在庫を抱えない、展示場型の店舗をしている。

そこでは、店内には見本しか置いていない。お客さんは来店し、実際に商品を手にとって見たり、もちろん試着なども可能だ。そして、購入する時は、店内にあるPCから注文する。ポイントは、「自分で注文する」というプロセス。「使ったことがないから、ネットでは買い物をしない」という人は多い。ECサイトを利用する習慣がない人にとっては、ハードルが高いのだろう。

だが、実際にその場で注文すると、その障壁は簡単に超えられる。そして、注文の手軽さや、到着の早さなど、ECサイトの利点は体験すると非常に分かりやすい。これは、非常に効果的な店舗展開の手法なので、今後も日本でも拡大していくと僕は思う。

■ネットと店舗、それぞれの強みを理解しよう

ハイブリット型のモデルが優れているところは、それぞれの強みが活かされている点だ。

ECサイトでは、お客さんと結べる関係性やロイヤリティはそこまで強くない。しかし、欲しい物が見つかれば、その場ですぐに購入できるのがECサイトの強みだ。

一方、実際の店舗では、店員と顧客の間にコミュニケーションが生まれるので、ネットよりずっと関係性は強くなる。店員の対応が良かったから購入した、という経験はその代表例。更に、他の客が手に取っている商品や、店舗の混雑具合など、購買意欲を刺激する要因が店舗にはある。これは店舗にしかない強みだ。

また、それぞれのフィールドで、既にビジネスをしている企業同士が提携して、このビジネスモデルを実現するのもいいだろう。ECサイトを経営している会社は、ネットでの集客やメールを活用した顧客フォローアップなどに長けている。一方で、店舗型のビジネスを経営している会社は、経験則的にその地域での顧客動向などを把握できているので、双方の強みを活かし弱点をカバーできるのだ。

アメリカではこのハイブリット型ビジネスモデルが注目されていることもあり、小売企業はECサイトの活用をかなり重視している。例えば、アメリカ小売店業最大手のウォルマートは、eBayのシニアな役員をヘッドハントした。ウォルマートは今後、オンラインやモバイルでの購入体験の強化に注力するという。日本小売企業でも、このようにECサイトの活用を重視する動きは、これからますます出てくるだろう。

■最後に

今では日本でも、多くの企業がECサイトからの店舗展開という流れにビジネスチャンスがあると考えている。楽天に出店しているEC店舗の中でも、リアル店舗の展開などに注目が集まっていると聞いている。今後、このような展開を見せる企業は増えていくだろう。変化の波に乗るなら、今しかない。ネットと店舗、それぞれの強みを活かした、最強のビジネスモデルを試してみてはどうだろうか。

(参考記事)


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