見出し画像

Facebookの女性COOがいかにキャリアを切り開いたのか?

LEAN INという本をご存じだろうか。2013年に出版され、世界で150万部突破したベストセラーだ。著者はシェリル・サンドバーグ。フォーチューン誌の「世界で最も有力な女性50人」にも選ばれたことのある、FacebookのCOO(最高執行責任者)だ。彼女は著書の中で、女性リーダーとしての生き方や、その苦悩を明かし、私たちがこれから目指すべき社会とは何かを読者に問いかけている。

■シェリル・サンドバーグから学ぶ、自分らしく生きる方法

実は、この本が出版された当初、アメリカでは賛否両論があったようだ。

シェリル・サンドバーグは、ハーバード大学を首席で卒業後、マッキンゼーアンドカンパニーで経営コンサルタント、アメリカ国務長官ラリー・サマーズのアシスタントを務め、その後Googleに移籍、そして現職・・・と、華麗すぎるほどの経歴の持ち主。本が出版されると、たちまちバッシングは起きた。

「シェリルだから成功したんだ」

「自分のキャリアを見せびらかしたいだけ」

「そんなすごい経歴と才能の持ち主から、学ぶことは何もない」

本当にそうだろうか?確かに、彼女に全く才能がなければ、ここまでのキャリアは築けなかっただろう。しかし、今の成功の裏には、計り知れない程の努力と苦労があったはずだ。

僕は彼女を努力の人だと思うし、彼女の生き方から学ぶことは沢山ある。

そのうちの一つが「選択する自由」。シェリルが家庭を持ち、母親になった後もすばらしいキャリアを形成できている理由の一つは、既成概念にとらわれず、自分の選択を諦めなかったからだろう。

例えば、FacebookのCEO、マーク・ザッカーバーグが、当時Googleにいたシェリルに声をかけた時、彼女は二人目の子供がまだ生後7ヶ月の頃であった。新しい仕事を始めるには、決してベストなタイミングとはいえない。しかし彼女は、この新しいチャンスに挑戦し、自ら選んだ道で見事に成功を収めている。

“女性も家庭に入らず、仕事をするべきか”という議論については、様々な意見がある。僕自身は母が自営業を営んでいたので、子供を持つ女性が働く姿を当たり前に見て育ってきた。しかし、そうではない人ももちろんいるだろう。重要なのは、たくさんの選択肢があることを認識し、その中でのベストを自分の意志で選ぶことだ。これは女性だけでなく、男性にも同じことがいえる。

僕は、できればこの本を、社会人になる前に多くの人に読んでもらいたい、と思った。なぜなら、目の前に多くの選択肢が提示されていることに気がついて欲しいからだ。大学を出て就職するのもいい。大学院に行くのもいい。海外に行くのもいい。何歳だから、こうしなくてはいけない、という概念に縛られる必要はない。自分の意志に添った、自由な選択ができるようにするには、教育面での改革も必要だ。若い人が社会に出る前に、自分の意志でベストな選択肢を選べるようなキャリア教育が、もっと実施されるべきだろう。

■なぜ、日本には女性リーダーが少ないのか?

日本でも、既に活躍されている女性役員の方やリーダーの方もいらっしゃるが、残念ながらまだまだその数が多いとはいえない。本書の中でも「先進国中で最低の数字」といわれているのが、日本企業で女性役員が占める割合だ。2015年のデータを見ても、日本の主要企業における女性役員の割合は3.1%と世界20カ国中、最下位であった。

<日本企業における女性役員の割合>

(参考画像:http://www.catalyst.org/knowledge/women-japan)

少子高齢化傾向にある今の日本社会において、労働人口の確保は、重大な課題の一つ。これからは、女性の活用のみならず、女性役員の割合を増やすことも不可欠だろう。それを実現する為には、重要なポイントが2つある。

1つ目は、女性特有の行動・思考傾向を認識することだ。メタ認知とも言うが、自分の行動や思考傾向を客観視し、認知することである。例えば、本書の中にはこのような例がある。

・女性は男性と比べて、意見があっても手を挙げ続けない傾向にある。

・女性は社会通念を受け入れやすく、こうしなければ、という思い込みに縛られやすい。

・子を持つ女性は、「理想の母親像」と自分を比べ、働いていることに罪悪感を感じる。

シェリル・サンドバーグの素晴らしいところは、上記のような女性の意識や思考について、調査結果に基づき、客観的に分析している点だ。もし、これらの傾向を予め、組織や女性自身が認知していれば、社会は大きく変わるだろう。上司は重要なポストへの昇進を躊躇う傾向にある女性の背中を押すことが出来る。女性自身も、「こうあるべき」という姿に縛られている自分自身に気づき、違う選択をすることだってできるのだ。

次に、日本女性の自己肯定感だ。僕自身の経験談だが、女性の方が自身の実績や能力を過小評価する傾向が強いようだ。謙虚である一方、手堅いゆえに新しい道を切り開きにくい。

ミス・ユニバースのプロデューサーとして有名なイネス・リグロンも、著書「世界一の美女の創り方」の中で、こう指摘している。「日本女性の奥ゆかしさや忍耐強さなど内面的な要素は世界的に優れているにも関わらず、その良さをアピールできていない」。この日本女性特有の、自信や自己肯定感の欠如は、女性の社会進出を阻んでいる要因の一つだろう。

社会も女性自身も、女性特有の行動・思考傾向を認識し、自己肯定感を高く持つ。自分の実績や実力を過小評価せず、能力以上に思える仕事にも挑戦していく。このような意識面での変革は、女性リーダーの増加に向けた第一歩になり得るのではないだろうか。

■経営者目線で考える、女性が活躍できる企業とは?

2005年、当時ハーバード大学の学長を務めていたローレンス・サマーズ。彼は、ある発言が原因で、辞任に追い込まれてしまう。

「論争的ではあるが、極端なレベルにおける男性と女性の本質的な能力の違いである。科学と工学への関心の傾向、能力、或いは好みは男性の間のほうが広い分布が見られる(つまり、男性の方が非常に得意/非常に不得意の間のばらつきが大きい)。」

この主張が女性蔑視と批判を浴びてしまった。物議を醸す発言であることには間違いないが、個人的な見解では、彼の発言を真っ向から否定できない。経験則であるが、確かに男性の方がものすごく優れている人とそうでない人の差が大きいと思うし、一方で、女性は総体的に安定している人が多い。

つまり、経営者として、女性は安心して雇用できるのだ。しかし、様々なライフイベントによって、その能力を活かす場を持てていない女性がいるのも事実。出産・育児や、両親の介護などを、女性が率先して行っている家庭もまだ多い。下記のグラフは、仕事を続けたかったが、出産を機に退職した理由をまとめたものである。最も多い理由は「勤務時間があいそうもなかった」で65%。これからは働き方の多様性を認めることが、企業には必要だ。それによって、企業側は、今までは活用できなかった女性の人材を雇用することが出来るようになる。また、出産後も働き続けたいと希望する女性にとっては、それらの制度は職場復帰への安心材料にもなるだろう。

(参考画像:http://www.goldmansachs.com/japan/our-thinking/pages/womenomics4.0-2014/womenomics4.0.pdf)

■日本社会こそ、“LEAN IN(一歩踏み出す)”が必要だ

家庭を持ち、母になった後も素晴らしいキャリアを形成しているシェリルの生き方は、後の世代の女性達に多くの希望を与えてくれている。この本に勇気づけられた女性は、世界に数多くいるはずだ。

日本社会で、より多くの女性が活躍できるようになるには、意識的な問題だけでなく、法や制度など、外的要因にも改善すべき点は多数ある。しかし、ここ数年で、社会全体の意識も大きく変わってきている。日本からシェリル・サンドバーグのような、女性リーダーが誕生する日も、そう遠くないだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?