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語彙日記 12/25〜27 デペイズマンと1984

前回の記事で、語彙日記を週一程度の頻度で投稿するのが目標と言っていたのだけれど、一週間で新しく知った言葉を一つの記事にまとめようとすると、今週のペースだと明らかに5000字は超える量の記事になってしまうことがわかったので、読みやすさも兼ねて多くても2500字程度まで溜まったら公開することにした。なので今回は12/25〜27の3日間で得た語彙について。

12/25(日)

・デペイズマン
「人を異なった生活環境に置くこと」、転じて「居心地の悪さ、違和感;生活環境の変化、気分転換」を意味するフランス語。美術用語としては、あるものを本来あるコンテクストから別の場所へ移し、異和を生じさせるシュルレアリスムの方法概念を指す。
渡辺祐真「詩歌の話/詩歌の楽園 地獄の詩歌」
河出書房新社「スピン / spin」第2号 

スケザネさんがこのデペイズマンを扱った代表的な作品として、人の顔の前にリンゴが置かれたルネ・マグリッドの作品を挙げられていて、その文章から「ん?角川文庫から出ているジョージ・オーウェル「1984」の表紙の絵が確かそうだったぞ?」と思い調べてみるとビンゴだった。こういう点と点が結びつくような体験をすると、脳内にドーパミンがドバドバと溢れる。

ルネ・マグリット「人の子」
・柳人(りゅうじん)
川柳を作る人。
渡辺祐真「詩歌の話/詩歌の楽園 地獄の詩歌」
河出書房新社「スピン / spin」第2号

俳人・歌人・詩人は知っているのに、川柳を作る人の呼び方は知らなかった。ただ「柳人」はあまり一般的な名称ではないそう。けれど愚直に「川柳作家」じゃちょっと味気ないよなあ。

・嘱望(しょくぼう)
人の前途・将来に望みをかけること。
渡辺祐真「詩歌の話/詩歌の楽園 地獄の詩歌」
河出書房新社「スピン / spin」第2号

「嘱」という字は「たのむ」と読むこともでき、「頼む・ゆだねる」という意味を持つ。いっぱい嘱望されたいし、嘱望上手にもなりたい。

・点者(てんじゃ)
連歌・俳諧・川柳などで、作品の優劣を判じ、評点を加える人。
渡辺祐真「詩歌の話/詩歌の楽園 地獄の詩歌」
河出書房新社「スピン / spin」第2号

たまにテレビ番組でやっている俳句の査定を見て思うのだけれど、詩歌のような韻文の評価って本当に難しい。勝手な印象としては、権威のある人が褒めたら良いという風潮が特に蔓延っていそうな感じがする。様々な作品を鑑賞して少しずつ感覚を養っていくしかないのだろうが、今のところ主観的に好き嫌いを判別するしか自分にはできない。

12/26(月)

・大兵(だいひょう)
体が大きく、たくましいこと。そういう男。
三島由紀夫「潮騒」

小学校の低学年で習うような簡単な漢字で構成されているのに、人生で一度も出会ったことがなくて驚いた。大きな体で太っていることを意味する「大兵肥満」という四字熟語でも使われる。

・マドロス
水夫や船乗りを意味するオランダ語。
三島由紀夫「潮騒」
・舫う(もやう)
船と船をつなぎ合わせる。また、杭くいなどに船をつなぎとめる。
三島由紀夫「潮騒」

本を読むことが習慣になってから舷とか艫とか舳といった船関連の用語をかなり覚えた気がする。作家にでもならない限り、使う機会は一度もないんだけど。

・土用波(どようなみ)
風がないのに海岸に断続的に打ち寄せる、夏の土用の時期によくある大波。
三島由紀夫「潮騒」

遠洋で起こる台風が原因で発生するらしい。霊に足を引っ張られるからお盆の時期に海に入ったらいけないとよく親に言われて育ったけど、これが関係していたりするのだろうか?

・仙人掌(さぼてん)
さぼてん科の常緑多年生植物。中南米原産で、種類が多く、高さ一〇メートルに達する巨大なものもある。
三島由紀夫「潮騒」

うん、この字は一度見たら忘れないと思う。

・揮毫(きごう)
毛筆で文字や絵をかくこと。特に、知名人が頼まれて書をかくこと。
三島由紀夫「潮騒」

「揮」はふるう、「毫」は筆の意味。

・鰭の広物(はたのひろもの)
ひれの広い魚。 大きな魚。
三島由紀夫「潮騒」

なんか縁起のよい感じがする。

・狷介(けんかい)
自分の意志をまげず、人と和合しないこと。
三島由紀夫「潮騒」

個人的に本の中で何度も出会っては何度も意味を忘れる単語ランキング1位。「狷」は気が短く、心が狭いといった意味で、「介」は身を守るや固いといった意味を持っている。

・翻案
前にだれかがした事柄の大筋をまね、細かい点を造り変えること。芸術作品・エンターテインメント全般において、既存の作品を原案・原作として、新たに別の作品をつくる行為を指す。
三島由紀夫「潮騒」

濱口竜介監督は「ドライブ・マイ・カー」で異次元の翻案をやり遂げていた。

12/27(火)

・オンドル
朝鮮、中国東北地方の暖房装置。床下の数条のみぞに煙を通し、床の板・石を熱するもの。
茨木のり子「倚かからず」

地理の授業で習ったような気もする。効率は良さそうだが、温度調節が難しそう。

オンドル
・身につまされる
他人の不幸などが、わが身に引きくらべて同情される。 他人のふしあわせなどが、ひとごとでなく思われる。
茨木のり子「倚かからず」

ちいかわを見て時々抱く感情。作者ナガノさんの狂気が巧妙に隠された世界で、可愛く健気な奴らが時にはひどい目に遭いながらも和気藹々と生活している姿が魅力のちいかわ。身につまされる思いをしながらそれを読むと、ちょびっと辛い(つらい)スパイスが効いててたまらん。(引かないでください。)

・ものものしい
人を威圧する様子。
茨木のり子「倚かからず」

ものものって可愛らしい響きの言葉だから全然威圧感がない。

・あきんど
商売をする人。商人(しょうにん)。
茨木のり子「倚かからず」

うちの近くのスシローが子供の頃は「あきんど」って名前だったことを思い返した。「あきんど」じゃ抽象的すぎてなんのお店かわからんないよ。

・犇めく(ひしめく)
人が集まり、押し合ってうごめきどよめく。
茨木のり子「倚かからず」

牛牛牛。ひしめいてるなあ。

・キュビスム
20世紀初頭にパブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックによって創始され、多くの追随者を生んだ現代美術の大きな動向。それまでの具象絵画が一つの視点に基づいて描かれていたのに対し、いろいろな角度から見た物の形を一つの画面に収めた。
茨木のり子「倚かからず」

覚えては忘れる芸術の流派。言葉だけで分かったつもりでも、自分の目で見なければ本当には納得行かないだろう。一応自分が知っているキュビスムの作品だと、原田マハ「暗幕のゲルニカ」の表紙に使われていたピカソのゲルニカが最も馴染み深い。

パブロ・ピカソ「ゲルニカ」




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