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女性を描く広告はなぜ炎上しやすいのか?

こんにちは。すなえり(@suna_book)です。

2019年に入っても、女性を描く広告が立て続けに炎上していますね。
特に「女ってこうでしょ」「女はこうなりたいんだ」と決めつけた広告が多く炎上している印象です。
そんな時よく言われるのが「どうせ男だけで考えてる」「なぜ社内でOKが出たの?女性の意見を聞かないの?」ということ。

はたして意思決定プロセスに女性が入れば炎上はきれいさっぱりなくなるのでしょうか?

他社が炎上してるのを目の当たりにしているはずなのに、ここまで続くのは何か根本的な見落としをしているのでは・・・と疑問に思い、広告に携わる者として私なりに炎上する理由を1から考えてみました。
平成ももう終わろうとしている中で、この問題について少し斬り込んでみたいと思います。

※私自身はジェンダー問題の専門家でもなんでもなく、広告に携わる一介のマーケターです。メディアや広告業界にこの問題を考える人がもっと増えれば・・・!と思い、調べた内容を元に独自の考察を書いています。


どんな広告が炎上しているのか

記憶に新しいのは「女性のみなさんへ。やっぱり車の運転は苦手ですか?」という某自動車メーカーの広告。
Twitter広告配信〜削除するまでの約5時間で「なんで"やっぱり"と決めつけるの?」「女性ドライバーも増えているのに考えが古くないですか?」と批判コメントが殺到し、多くのテレビやネットニュースで取り上げられました。

一方「このくらいで炎上するの?」「一部のフェミニストが騒いでるだけだろ」なんて声も。(某テレビ番組のコメンテーター陣もなんでも騒ぐ社会の方を問題視していた)

えー・・・いやいやちょっと待って、声を上げる社会が悪いの?

ステレオタイプを押し付けられて抑圧された経験は、多かれ少なかれ誰もが経験しているのではないでしょうか。

「男なんだから泣かないの」
「年上なんだから譲りなさい」
「◯◯ちゃん何の仕事してるの?やっぱり事務?」
「マーケターになりたいって、営業が嫌だから希望してるんでしょ?」 etc.

何が言いたいかというと、人によることをカテゴリでくくって決めつけると炎上しやすいということ。
広告主はターゲットである多数派に向かって発信してるつもりでも、受け取る側にとっては1対1で言われているのと同じです。
誰かが不快になるメッセージはマーケティングとしてアウトだと私は思います。


なぜ炎上しやすくなったのか

社会的背景から考えてみると、ポイントは2つ。

1つはメディアの変化。ひと昔前はテレビや新聞などが主流で、情報は一方通行でした。対して現在はSNSで誰もが発言できる時代。他の人の生き方・考え方が容易に見られるようになり、多様化が促進されたのだと考えます。

もう1つは社会的な動き。ハラスメント防止やダイバーシティ推進など、国や企業が女性の社会進出を後押しする流れが来ています。

そんな中で、これまでと同じように多数派を取り上げてステレオタイプを助長するコンテンツを配信すれば、即座にSNSやブログで叩かれます。
抑圧されていた個人の声が届くようになった中で、それでも「なんでも騒ぐ社会が悪い。少数派は黙ってろ!」と言うのは自分が多数派にいるか、我慢するのが美徳という考えが染み付いてしまっているからではないでしょうか。


「見えない前提≒無自覚な思い込み」がないか考えよう

実際に炎上した事例を元に考えてみましょう。

問題:
母親が育児をしている様子を描いた(父親が出てこない)動画広告が炎上しました。なぜでしょう?

広告主の意図:
育児をがんばる母親を応援したい

ここに見えない前提があるのがわかりますか?

たとえ母親メインで育児をしている家庭が実際に多かったとしても、それをそのまま切り取って発信すると「ステレオタイプを助長している」と炎上してしまうのです。
この見えない前提≒無自覚な思い込みが、広告制作側にとって1番の落とし穴ではないかと思います。


時代に合った良い広告とは?

では、炎上しない&時代に合った広告とはどのようなものでしょうか。
私が考える良い広告の条件はこちらです。

コピーとビジュアルがマッチしていないと何が言いたいかわからないし、社会問題に斬り込んでおいてブランドミッションが合っていなければ「で、結局この会社は何をしてくれるの?」と広告を見た人に疑問を与えることになります。
この3つがマッチしているなぁと思う例を2つ紹介します。

「結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです」(ゼクシィ)

ゼクシィのミッションである「結婚したい、結婚してよかったと思える人々が増えている世界を目指す」とも合っているし、結婚しない人のことを否定せずに良さを伝えられているのが素晴らしいですよね。

もう1つは
「#この髪どうしてダメですか」(パンテーン)

地毛証明書の提出、茶色い地毛の黒染め強要、編み込み禁止・・・など昔からの髪型校則に一石を投じつつ、「あなたらしい髪の美しさを通して、すべての人の前向きな一歩を応援します」というパンテーンのミッションを伝えています。

このように単なる商品の機能訴求ではなく、ブランド自体を愛してもらえるような広告が最近は増えています。が、成功した広告を表面だけマネするのは非常に危険です。
「社会問題に斬り込めば注目してもらえるだろう」という安易な考えではなく、きちんとブランドの意義やビジュアル、コピー1つひとつにこだわらないと炎上する可能性が高くなってしまう諸刃の剣です。
(すでに似たようなフォーマットが増えてきたなぁと感じますが、成功した前例を参考にするのは世の理ですよね・・・)


男性を描いた広告が炎上する日も近い?

ここまで女性を描いた広告について取り上げてきましたが、私は男性を描いた広告もいつか炎上する日が来るのではないかと思います。
先に女性を描いた広告が炎上しているのは、単純に女性の多様化や社会的な後押しが先に来たからではないでしょうか。

現在はタレントのりゅうちぇるさんのように個性的な男性やジェンダーレス男子がマイノリティ扱いで、まだまだ「男がこんなことするな」「男はこうあるべき」という言葉がテレビでも日常でも普通に使われています。(疑問を持つ声も少ない)

しかし今後男性の多様化が進めば、ステレオタイプの"男性らしさ"を描いた広告が炎上する日もきっと来るはずです。5年後か10年後かはわかりませんが。


広告を作る側の思考をアップデートしよう


以上で私の考察は終わりですが、ここに書いたことはすべて個人の考えです。このnoteが炎上問題について考えるきっかけになって、いろいろな意見を聞かせていただければとても嬉しく思います。


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