記憶の標識

終戦後から、今だに続いている大衆食堂は
まるでタイムカプセルのような場所だった。

私はひとり、片隅の席に腰かけて
注文した料理が、届くのを待っていた。
店内の柔らかい照明が
笑顔で食事を楽しむ労働者風の人たちを
包み込んでいた。

そんな中、私の視線をくすぐるように
隣のテーブルに座る初老の男が
私をちらちら見ているのに気付いた。

その男の目から
敵意などは感じられなかった。

彼はボソッと呟いているかのようだが
それが私に向けられているのか
それとも単なる独り言なのか
私にはわからなかった。

男の呟きが途切れ途切れに私の耳に届く。
「あんたの両親、よお覚えとる。
昔、ここにおったその短い時期を・・・
幸せに過ごせるようにお参りに行っとった」

私はその言葉に驚いた。
私の両親の消息を知らないまま育ち
すでに亡くなっていたのか?
それともどこか遠い土地にいるのか?
今まで、そのことを知るすべは無かった。

この男と両親って一体どんな関係なのか?

「おっちゃん、私の両親の事を知っとるん?」
「戦後のこの大衆食堂で両親は
本当に幸せそうに過ごしとったん?」
私は思い切って男に問いかけてみた。

男は微笑んで頷いた。
「そうじゃ。あんたの両親は
この地に短い間だけ住んどったけんど
ここの人らとホンマに仲良うしとった。
ところで、あんたがこの地に来たのは
二度目じゃろう?」

私は驚きながら頷いた。
初めて来たときは幼すぎて
ほとんど記憶はなかったが
今回は両親が残してくれた
僅かな記憶の行方を追って訪れた。

男は続けた。
「あんたの両親は
この食堂の隣に住んどってなぁ〜
ワシらはしょっちゅう
おしゃべりしとったんじゃ。
その頃はなぁ
戦後間もない時やったから
誰もが生きていくんが精一杯の
しんどい状況やった。」

「けんどみんな、よお笑ろとった。
笑うと元気になれたんじゃ。」

懐かしい時間の光景


男の話の中には
幸福そうだった両親と
過ごした時間が流れていた。

ほのぼのとした人の絆を感じさせてくれた。
そしてその時間の中に確かに私も居た。

この男と出会いは私にとって
大切な記憶の標識になったようだ。

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このショートストーリーは
2008年03月21日の夢日記をもとに
Chat GPTにお手伝いしてもらいながら
書き上げたものです♪

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