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日本におけるフィンランド式教育の導入の是非



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2022年5月29日 「フィンランド式教育」は日本に必要か?本国は数学力低下の深刻な事態
 https://diamond.jp/articles/amp/303362

 国際学力調査で常に上位のフィンランドは、「誰一人取り残さない」が合言葉の底上げ教育が特徴であり、小学校入学1年前のプレスクールから大学院まで授業料、給食費、教材費の無償化が取り入れられている。
フィンランドと聞けば教育のレベルが高いイメージがある。日本でも一時期フィンランドブームが起こり、そのきっかけとなったのが、2000年に始まったPISA(OECD生徒の学習到達度調査)で1位になったことだろう。PISAはOECD(経済協力開発機構)が実施している生徒の学習到達度調査のことで、日本では「国際学習到達度調査」と言われる。
PISAが始まった2000年の調査では、32カ国、約26万5000人の生徒が参加して、「数学的リテラシー」「読解力」「科学的リテラシー」の3分野で実施された。その結果、数学的リテラシー1位が日本、読解力1位がフィンランド、科学的リテラシー1位が韓国となった。そして、フィンランドは総合1位の結果を示した。 
また、2003年の調査では、4分野で調査され、フィンランドは数学的リテラシーで2位、読解力で1位、科学的リテラシーで1位、問題解決力で2位(香港と同率)を獲得した。
フィンランド式教育の評判は2000年あたりからかなり高まっていたが、ここで「フィンランド(式教育)ブーム」と呼ぶべき状態が起き、日本でも「フィンランドを目指せ」という機運が起こるのである。
文科省によるいわゆる「ゆとり教育」が2002年を境に強化されて2010年頃まで続いたが、その背景にフィンランド式教育の影響があったのは間違いないだろう。フィンランド式教育はいつの間にか日本の「詰め込み教育」の対義語のような存在となり、日本の教育が目指す新たな目標になったのである。そこで今回は「日本におけるフィンランド式教育導入の是非」というテーマで、立論者は「導入しなくてよい」という反対の立場から立論を行うので皆様は「導入すべきである」という賛成の立場で立論をお願いします。

【前提条件】

本議論におけるフィンランド式教育とは、最小限の学習時間、生徒が主体性にのっとって学習内容を決める、偏差値や学力・定期テストがない、部活や学校行事などの活動はなく個人で活動しなければならないことをさす。
追記)義務教育に導入するか否か 小中学校

Q学校側用意した部活を指している、学生が集まって行うサークルは大丈夫か?.
A大丈夫.
Q.模試等もなしか?
A.問題はない
Q.塾はなし?
A.あってもいいがフィンランドは塾がそもそも少ない

Q.フィンランドのように教育が無償になれば浮いたお金で塾には入れたり、むしろ格差がなくなるのでは?
A.教育が無償化になる事と塾はあまり関係ない。

意見・論点

近年ではフィンランドの学力レベルが下がっている→確かに以前(2000年代前半)までは日本よりも高い学力レベルを示していたが、年代がたつにつれて日本とフィンランドの学力の差が開いている。
例)数学的リテラシーの点において、2003年ではフィンランドが2位なのに対し、日本は6位。→2022年ではフィンランドが20位なのに対し、日本は5位。

Q.移民が来ることが要因では?別のところに問題があることが要因では?
A.フィンランド式教育は全員が平等であり、移民も含めて全員が平等の価値観があり、移民の人の価値観も統合することで価値観がバラバラになる。

平等な教育が原因で教員の負担が増えている
→フィンランドの教育の質低下の背景に特別支援学級の統合があるといわれている。数年前にいわゆる特別支援学級をなくして、通常のクラスに統合する取り組みが行われるようになり、通常クラス、特別支援学級の子どもたちは同じレベルやスピードで学ぶことになった。地域全員が同じ教育を受ける。そのため、担任教師の負担が増え、クラス全体の学力の低下につながっているといわれている。

Q.特別支援学級は思考力の乏しい子が多いが、義務教育の中でも差がある。部活動・課題を作る、教師の時間外労働という面からフィンランド式がいいのではないか?
A.授業で分からない子が居たら、スピードをその子に合わせる必要があり、負担が増える。
Q.もっとわからない子に教える制度があればいいのでは?
A.一例として特別支援学級があるが、フィンランド式はグループワークが多く、座学を増やしていくべきだ。
Q.部活動がなくなることで、教員の負担が減るのでは?
A.部活動をなくすかどうかを言いたいわけではない。
Q.インクルーシブ教育は障がいがある無しは関係なく習熟度教育がセットで行われるべきでは?フィンランド式教育は政府のミスでは?
A.その通り。

学習は自己責任という考えが余計に格差を広げてしまう
→平等な教育を掲げているが、学習はあくまでも生徒の自己責任という考え方によって、やる人はやるしやらない人はやらない。落ちこぼれのいない全員が平等な教育を受けることを理想としているが、むしろ成績の良い生徒と悪い生徒の間で余計に格差が広がってしまう。

Q.学習が勉強になっていないか?勉強こそ格差を広げるもので自分自身の問題と向き合うにはフィンランド式は良いのでは?
A.その通り。勉強が自己責任。自分の課題を解決するために、フィンランド式は

予想される反論・再反論

強制的に勉強させられるような学習時間が短いため、効率がよく質が高い学習が可能になる。→フィンランドでは学習を生徒の自主性に任せたことで、理系離れを起こしている。その結果、深刻な医者不足が起こっており、医者をエストニアから招いてなんとかしのいでいる状態である。
さらに、フィンランド国内の140校・5000人に実施された調査で、9年生(日本の中学3年生に当たる)の生徒のうち約3分の2が、パーセントの計算を理解していないことが判明した。(https://yle.fi/news/3-8835412)。
パーセントは数学の中でも日常生活に最も近く、買い物で割引率を考えるなど、普段から多用されている。フィンランドの学生はそもそも分数の計算ができない者も多く、しかも、この調査を実施した専門家は、約半分の生徒が満足なレベルで「暗算」ができなくなっていると述べている。

Q.最小限の学習すらやっていないのではフィンランド政府がミスしているだけでは?
A.フィンランドでも教えているが身になっていないだからこそ、カリキュラム作成時点でしっかりと学習要領を定めるべき。
Q.高校・大学の話は関係ない?学力がないから教養がないは言い過ぎでは?いい暮らしをするためには、いい大学に行くルートばかりが日本にはなってしまっているから、見かけ上は学力格差がでるが、フィンランド式は最低限のレベルを身に付けることができれば大丈夫では?
A.理系離れ→数学などある程度日本は学習するが、フィンランドでは理系を勉強しないため、エンジニアが少なくなっているからこそ、進路の幅を広げていくためにも、ある程度はカリキュラムの幅を広げていくべきだ。
Q.理系離れは専門性を持った需要は高くなるからこそ、給料など待遇は良くなるから、むしろ需給バランスが取れるのでは?エストニアは欧州有数のIT国家だから、悪いことではないのでは?
A.給料が高まるのは、本当に自分のやりたいことを出来ているわけではない。

宿題が最小限の量に抑えられている等、幼少期から自分の好きなことをして個性を伸ばせる。→たしかに、自分の好きなことだけをしていれば才能を伸ばし、個性をはぐくむことができるかも知れない。しかし、最小限の課題のみをだされていたら、勉強をしようと思う子供のほうが少ないといえる。
 日本のような教育制度での意義は基礎的な学力をはぐくむということだけではないと考える。日々の学校生活で出される課題や長期休みに出される宿題、定期的に行われるテスト等に対していついつまでにこの範囲を終わらせよう、一日に何ページ終わらせようといったようなタイムマネジメント能力など社会に出てからの能力をはぐくめることにもあると考える。
 日本の学生は一日中勉強詰めで自由時間がないというわけではなく、休み時間や放課後、長期休みなど自分のやりたいことをできる時間はしっかり確保することができる。「宿題をしてから遊びに行きなさい」とよく言われる説教のように自分のやりたいことをするためにはある程度やりたくないこともやらないといけないと考える。
 このような点から、むしろ日本のように国が定めたカリキュラムで段階的に学習する方が良いと考える。

Q.日本人は一夜漬けが多く、課題のやり方で日本の学生にタイムマネジメント能力に差が出るのか?
A.因数分解は何学期まででと日本は決まっているが、フィンランド式は学校によって教科書が異なる。勉強をやりたい子はどんどん進めることができるが、日本の段階的に計画的に勉強を行っていく仕組みはタイムマネジメント能力が養成される。
Q.社会の教科書など、日本でも学校によって違う部分があるのでは?また小学校などで塾に行ってる子はどんどん学習内容が進んでいるから、できる子はやるフィンランド式でも才能を伸ばせるのでは? 生徒がタイムマネジメントはついていないのでは?
A.日本でも全国的に見て、学習内容は同じになる。平等を目指しているはずなのに、格差が広がっているため、自分で自習したり学習(復習)することを行うべき。生徒の自己責任。

参考文献

国立教育政策研究所OECD生徒の学習到達度調査(PISA)2022年https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2022/01_point_2.pdf

南山大学ヨーロッパ研究センター岩竹美加子「フィンランドの教育、日本の教育」2019年11月8日https://rci.nanzan-u.ac.jp/europe/ja/journal/item/01_岩竹美加子.pdf

北海道大学高等教育機能開発総合センター池田文人「フィンランドの教育における知識獲得プロセスに関する考察」2007年https://high.high.hokudai.ac.jp/wp-content/uploads/2016/02/No1512.pdf

「フィンランドの教育の秘密とは?子どもの個性と学力を伸ばす制度や特徴を紹介」2021年11月.26日https://fulma.com/blogs/21

「フィンランドの教育の特徴は?日本との違い、幸福度ランキング世界第1位の秘密を解説」2019年11月27日https://education-career.jp/magazine/data-report/2019/finland-edu/#:~:text=フィンランドの教育の大きな,されているためです%E3%80%82

「フィンランド教育の特徴とは?世界一といわれる理由からデメリットまで解説」2022年7月20日https://for-teachers.manalink.jp/think-edu/overseas-case/dqzauud9xfr

【先生からのコメント】

ゆとり教育はこのゼミのことだ。
ゆとり教育の前提として、一定以上の学力レベル。
高等教育で行うべき。筑駒(筑波大学付属駒場高等学校)で実践されているが、それは元々の基準が高いからそこを加味するべき。
宿題・予習がカギ。序盤は成功したが、もてはやされて勉強しなくなった。大谷翔平はゆとり教育の賜物である。
ゆとり教育は一定の力のある人には効く制度であることは間違いない。

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