見出し画像

ep.2 3ヶ月で辞めた回転寿司のバイト先に死ぬほど注文して荒らしに行った話

 僕は高校生の頃、回転寿司屋で3ヶ月間働いていたことがある。
家から自転車で10分ほど歩いたところに店を構え、土日平日つねにお客さんはいっぱいの状態でとても忙しい店だった。
その割には時給は低く、人は少ない状態で常に人を募集していた。
人はとにかく少なく忙しいため、僕は、
「ここならすぐ入れるっしょ」
と、生半可のな気持ちではじめてのアルバイトをすることにした。
回転寿司は初めてバイトする社会に出たこともないなめ腐ったクソガキにはもってこいの場所だった。
なんとなく僕の回転寿司屋のイメージは、寿司ネタ乗っけるだけのちょろい仕事というイメージだった。
なので、時給が低くても
「ラクそうだからまぁ我慢してやろう」
というメンタルだった。
そんなメンタルの人間に当然仕事ができるわけだかない。

最初は軍艦を作るポジションを任された。
最初と言っても他の仕事をする前に辞めてしまうので最初で最後の軍艦作りの方があっている。
この軍艦がとにかく難しかった。
ネタを乗せようすれば軍艦が倒れ、作り直している間に注文がどんどん溜まっていき、「やばい」と思って、適当に作ってレーン流せば「乗せるネタの量が多い」と注意を受けまた作り直し、そうしてる間に注文はさらに増え余計に焦り、急いで作ろうとすればまた軍艦を倒す、そうこうしているとついに注文の量は手に負えなくなり他の人のに助けてもらうことになる。
その人はチッと舌打ちをして、蔑むような目で僕を見る。そしてものすごいスピードで仕事し見事に終わらせてしまう。
これが僕のバイトの鉄板パターンである。
ちなみにこの時僕は見学をしている。
手伝えよと思うかもしれないが、バイト先で仕事ができないやつ認定され、おそらく嫌われている僕が手伝えば火に油だろう。
こんな日が続けば、当然バイトを辞めたくなってくる。

このようにして僕は、しっかり初バイトの洗礼を受けたのだ。 
しかし当時の僕は違う。全て自業自得だが逆ギレをしていた。
仕事ができないやつ認定され、蔑むような目で僕を見て、腫れ物のように扱った、すぐに軍艦が倒れるあの店になんとか仕返しがしたかった。
バイト終わりの夜は毎日泣き、翌日バイトがある日は憂鬱になっていた。
僕はそんな辛い日々を過ごしてきた苦痛を店にぶつけてやろうと思っていた。

そしてバイトを辞めた1週間後の土曜日の昼。
僕は野球部の大食いの友達2人を連れて店に行った。
何をしたのかというと、僕と友達二人でひたすら寿司を食いまくったのだ。そうさせることで厨房は混乱しめちゃくちゃになると予想したのだ。
復讐日当日の朝は3人とも朝食を抜き、友達には部活が終わってすぐにきてもらった。
死ぬほど腹ペコのこの状態、お腹と背中はくっついていた。
席に着くと勢いよくボタンを押し注文を開始した。いかに店を困らせるか、ただそれだけのために食べまくった。
もはや味わっていない。一心不乱に口に放り込む、詰まりそうになったらあらかじめ多めに用意しておいた水で流し込む。もはや食事ではない。
怒りの力はこれほどすごいパワーを持っているのかと思うと怖くなった。
しかし、いくしかないと思い必死に食べた。
途中、僕の為に手伝ってくれる友達を見て、
「いい友を持った」
と何度か泣きそうになった。


全員で90皿ほど食べ、終わりが近づいて時、友達の1人が言った。
「店そんな困ってなくね」
できれば言わないでほしかった。
途中から気づいていた。
「全然ミスらんやん」
僕はこの店に完敗した。どれだけ頼んでも丁寧にネタ乗せされたものが来た。
本当にすごいなと思った。それと同時にとてつもない虚無感が襲ってきた。(多分、腹一杯で眠くなってただけ)
こんなしょうもないことをしていた自分が情けなくなった。

友達との帰り道
「全然困らせれてないやん」
「お前いなくなって店回しやすくなったんじゃね」
と、ボロカス言われながら帰った。
しかし、心は晴れ晴れしていだ。
なぜなら、復讐とか意味がない。自分で逃げずに与えられたことをするしかない。
当たり前だか、なぜか本質的に気づけた気がした。

次のバイト先では絶対にしっかり働く。
夕焼けを背中に、そう12,580円のレシートに誓ったのだった。

自分で稼いだお金での奢りはきつかった。



この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?