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【原チャリで行こうぜ!】 2001道北編 vol.7 〜通学用スクーターで北海道に向かってしまった件

6日目:2001年8月2日(木)


たくさんのライダーたちに見送られた朝

6:30
起床。
まず、トイレに行って、ご飯の準備を始める。
すでにまわりのキャンパーたちは、動き始めていた。

コッフェルにご飯を炊いて、秋刀魚の蒲焼の缶詰をホカホカのご飯の上に。
大した朝食ではないが、外で食べるご飯は何でも美味しく感じられる。

隣のテントのお兄さんは、爆睡しているようだ。
撤収作業をしつつ、コッフェルにお湯を沸かし、のんびりとコーヒーを入れた。

オレはDioに少しずつパッキングし始めた。
スタートの準備が進むに連れ、Dioのまわりに人が集まってきた。
沢山の荷物を積んだDioが珍しいようだ。
「どちらからですか?」、「原付きで1日どのくらい走るんですか?」など、いろいろ話がはずんだ。

「お兄さん爆睡中…。このまま兄さんとお別れかなぁ?」って思ったら、お兄さんが笑顔で現れた。
「よっしゃぁ、お兄さんだ!」
「オレ、そろそろ出発します。せっかくなので、一緒に写真撮りませんか?」

怖い人かと思ったが、実は超優しいお兄さんと一緒に記念撮影。
本当に楽しい出会いであった。

そして、モトクロッサーに乗っているお兄さんとも一緒にパシャリ。

記念撮影をしていると、アメリカン乗った恐そうなお兄さんたちもDioのまわりに集まってきた。
みんな嬉しそうに、「頑張って!」と言ってくれる。
本当にうれしかった。
名残惜しいけど、そろそろスタートしないといけない。

キャンプツーリングってのは、本当に楽しい。
しかし、出発の時はちょっとさみしい。
そして、逆に、見送る時もちょっとさみしい。
だから、旅人は必ずこの魔法の言葉を使う。
「よい旅を!」

「よい旅を!」、それは、旅立つ人への安全、平和を祈る言葉、そして、見送る側への平穏を祈る最強の言葉である。

楽しかった北の大地も、そろそろフィナーレが近い

8:30
中富良野森林公園キャンプ場から北海道大学を目指して、走り始めた。
Dioのメーターは3092km。

本日は北海道大学に通う友人のナオフミとの再会を果たし、ビール園でツーリングの成功を祝いジンギスカンと新鮮なおいしいビールをたらふく頂く予定である。

まずは、国道237号線を南西に少し走り、国道38号線に入り、芦別方面へ少し走り、すぐに道道135号線へ。
Dioの調子が非常に怪しいので、急坂を避けて、少しでも楽そうなルートを走ることに。

道道135号線を西に向かうと、国道452号線とのT字路である。
この国道452号線の分岐と少し前で、ちょっとうれしい出来事が…。

向こうから走ってきたオフ車のライダーが、50ccスクータでツーリングをしているオレを見て、何かに感動したのであろう。
いきなり、オフ車に乗りながらバンザイをしてくれた。

なんと、彼は両手でバンザイをしつつ、さらに両足も開いてバンザイをしていたのである。
つまり、両手両足の4本でバンザイしながら走行しているということは…。
ステップに乗っているはずの足がバンザイしているってことは…。
まさかの、おしりをシートに載せつつ、両手両足フリーの状態で、バランスを取りながら走行している。
しかも、超絶の笑顔であった。
そんな難しい走行をしてまで、オレを応援してくれるライダー、本当に感謝だ!
かなりうれしかった。

2000年代初頭の北海道、原付きのスクーターでツーリングする人はあまりいなかった。
そういった背景のもと、原付きのスクーターで、しかも身体がでかい男が、結構な荷物を積載しつつ、楽しそうにツーリングをしているというのは、一部のライダーにとってはマニアックでうれしくなり、応援したくなる存在であったのかもしれない。

このオフ車のライダーの”ピースサイン”というのかな?本当に感動的なものであった。

実はその時、オレは肌寒いのに、半袖のシャツを着て走っていた。
短い夏の北海道の空気感を少しでも感じるために、少々無理をしていた。
やはり寒いわけである。
いよいよ風邪を引きそうなほど身体が冷えてきた。

途中、国道452号線で疲労のあまり座り込んでしまった。
ふと、無意識に使い捨てカメラで自撮りをしていた。
”疲労した放浪ライダー”というタイトル?で撮影してみた。

後日この写真を現像してみて笑った。
ヘルメットでつぶれた頭、伸びまくったヒゲ(その頃のオレは、旅の最中は髭を剃らないポリシーであった)、毎日の長距離走行、野営続きで目が充血している。
いろいろな意味で、自分で見てもなかなか恐い男がその写真に写っていた。

国道452号線を南下、いや正確には南西に走り続け、桂沢湖にたどり着いた。
このルート、ツーリングマップル北海道には、”民家、GSなし ガス欠注意!”と書いてあった。

桂沢湖から道道16号線で西へ向かった。
そして、道道30号線を通り、長沼を目指すことにした。
実は、さっきから寒くて仕方なく、震えが止まらない。
温泉にでも入って温まらないと風邪を引きそうな雰囲気である。
そこで、なんとなく去年入った長沼温泉を思い出したのである。

ただ、困ったことにガソリンがほとんど空である。
しかし、スタンドが見当たらない。

山の中のルートを走ってきたので、虫の死骸がヘルメットのシールドにベッタリくっついていて、気持ち悪い状況である。

さて、いろいろ困った状況である。

12:08

ホクレン、長沼、4.3リッター、リッター97円、437円。
どうにかガス欠にならずに済んだ。

長沼温泉(500円)に入って温まる。
温泉は本当に偉大である。
さっきまで、寒さでガクガク震え、風邪をひく直前だったのに、もう、元気いっぱいである。
一年ぶりにこの温泉を訪れたのであるが、非常に懐かしい気分であった。

一度訪れた場所で、良い思い出・印象があった場合、時間が経ってから再訪すると妙に懐かしい平和な気分になることがある。
さらに繰り返しの訪問で、嬉しい経験・気分が重なると、まさに故郷に戻ってきたような心持ちになることさえある。

しかし、旅もそうであるが、その場の状況、そこに居合わせた人々で印象は大きく左右されるものである。
いくら楽しみにして再訪しても、「あれっ?」って思うこともある。

だからこそ、もしどこかを再訪するなら、過度な期待をせず、ニュートラルな心持ちでいるのが良いのかもしれない。

13:30
長沼温泉で温まったので、元気復活。
再度、北海道大学を目指し、Dioをスタートさせる。

まず国道274号線に入り、札幌市がある北西を目指す。
「去年も走ったし、道路の青い案内標識を辿っていけば、北大、簡単に行けるべ?」
何となく、走っていたら、やはり、久しぶりで道を忘れてしまったようである。
やはり、ツーリングマップル北海道を開いた。

札幌市は御存知の通り、かなりの大都会で、交通量が多く、さらに信号が多くて大変である。
ただ、札幌中心部は碁盤目状になっており、”北◯条西△条”みたいに交差点ごとに案内が出ているので、比較的わかりやすい状況である。

北海道大学で友人との再会、ビール園でツーリングの無事を祝う


正門で北海道大学生に通う友人のナオフミ氏と一年ぶりの対面である。
やっとついた。

「ありゃー?奇遇っすね!マコトさん、久々っすね!」
「おー、ナオフミ氏、久々っすね!今日は学校?奇遇っすね!」

「いやー、スクーターで買い物に行こうとしたら道に迷っちゃってねぇ」
「気がついたら誤ってフェリーに乗っちゃったみたいでねぇ。フェリーから降りれなくなっちゃってねー」
「気がついたら北海道にたどり着いちゃってさ、困ってさー、仕方ないからキャンプとかしてさー」
「気がついたら、北大の近くを走っていてさー」

去年と全く同じのくだらない問答(挨拶?)を一通り交わし、その後、二人でどっと笑った。
二人とも昨年に続く北海道大学での再会を心の底から喜んだ。

そして、ナオフミはママチャリで、オレはDioを押して、ナオフミの家にたどり着いて、バイクを停めさせてもらい、荷物を下ろした。
急に身軽になった。

昨年同様、ナオフミは、北大の友人から前もってママチャリを借りておいてくれた。
二人そろってママチャリで、北大に戻る。
腹が減っていたので、北大の学食で昼食をとることにした。

15:16
北大生協、クラーク店食堂部、牛とろ丼M、豚汁S、483円。
めちゃくちゃうまかった。
やはり、腹が減ったとき学食は最強である。
オレは学生ではないのだが…。
今回のツーリングの面白かった点、大変だった点など旅ネタ、そして、人生をネタに二人で飯を食らった。

今夜はビール園に行く、そして土産も買いたい。
旅もそろそろ終わりであるが、軍資金が心もとなくなってきた。
北大内の郵便局で20000円を引き出した。

16:21

昨年同様、土産は札幌駅で。

実は北海道大学は、札幌駅のすぐ北西に位置している。
ただ、大学構内は南北にかなり長い感じであるのだが。
オレが3月に卒業した筑波大学にそっくりである。
両大学、とにかく南北にかなり広い。
そして、そこには緑がたくさんあり、伝統のある校舎が並んでいる。
北大のほうがさらに伝統があるので、厳かな雰囲気である。

土産(1680円、5410円)を購入して、ナオフミの家に戻った。

18:30

前回は札幌ビール園だったので、今回はASAHIビール園はまなす館を訪れることに。
昨年同様、ママチャリでビール園へ向かうのだが、かなりの距離である。漕いでも、漕いでも、まだまだである。
ママチャリには死ぬほど遠い距離であった。
でも、ナオフミとチャリンコで走っていると、高校の頃を思い出して非常に懐かしかった。

19:30
息も絶え絶え、やっとのことで、ビール園についた。
まずはビールを注文して、乾杯をする。
いやー、本当にうまい。
そして、昨年同様、取り憑かれたように激しくジンギスカンと食べ始めた。
店員のお姉さんがかわいかったので、二人とも、調子にのっておかわりのビールをたくさん注文した。
お姉さんがかわいかったので、ナオフミもとってもうれしそうだ。

各々の酔っぱらい具合を交互に写真を撮った。
満面の笑みを浮かべるナオフミ、視線があさって向いてます。
ビール命なオレはジョッキを持って嬉しそうである。
しかし、ナオフミだけでもなく、おれも目がやばい。

酔っぱらい二人組がビール園でおいしいビールを飲みつつ、ただただ平和に盛り上がっているという状況であった。

21:16
ASAHIビール園はまなす館、札幌市白石区、3500円。

たくさん食べて、いや、気持ちが悪くなるほど食べ、たくさんおいしいビールを頂くことができた。

北海道原チャリツーリングのファイナルは、北海道大学のナオフミ氏の家にお邪魔して、ビール園で乾杯というのが、昨年からの恒例になりつつあった。
しかし、ナオフミ氏、北海道大学の4年生であり、来年3月に卒業である。
つまり、今年のビール園が最後である。

オレは、少々さみしい心持ちになり始めたが、何もかもずっと同じままではない、という悟りに達した。
ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。
奴も口には出さないが、オレと同様、そう思っていたに違いない。

夏の夜の札幌、涼しい風が吹いてきた。
なぜか、懐かしい香りがした。

クラーク像との戯れ

21:33
セブン、札幌本通り店、聞き茶ペットボトル156円。

酔っぱらい二人組は果てしなく遠い、札幌駅を目指した。
夜風がかなり冷たくなってきた。
「寒いぞ、寒すぎる、本当に8月か?」

札幌駅近くに到着した際に、ナオフミ氏はいきなり、意味不明なガッツポーズを決めた。
つられてオレもガッツポーズをした。
酔っぱらいである、いきなりガッツポーズが始まっても驚くことはない。

さて、北大の構内に入り、いよいよクラーク像にたどり着いた。
こんな時間にどうしてクラーク像にたどり着く必要があるのであろうか?
それは、昨年に引き続き、クラーク像に登るためである。

北海道大学には、”クラーク像に登ると留年する”というジンクスがある。
オレはすでに卒業しているが、学生のナオフミにとっては留年の危険性が高まる訳である。
「留年したら、また一年学生ができていいべ!」とナオフミは笑う。

「早く登りてぇ!」とオレは落ち着かなくなってきた。
クラーク像前でカップルが記念撮影していたので、邪魔をしないように、まずはポプラ並木へ向かった。

ポプラ並木に到着すると、オレは急に走り始めた。
それも、なぜか全力疾走である。
オレはポプラ並木の中を真顔で走り始めた。
ポプラ並木の中を爆走中のオレを見て、ナオフミは大爆笑した。
(このストーリーはほぼノンフィクションですが、物語展開上のフィクションを含む場合がございます)

北海道大学には新渡戸稲造の銅像もあるのであるが、なぜか怖くて登れなかった。
稲造に登ったら、怒って振るい落とされそうな気がした。(意味不明)
しかし、少し少年びいきのクラーク博士は許してくれそうな気がした。(?)

クラーク像の前がクリアになった。
すかさず、オレはクラーク像にすばやく登った。
久しぶりのクラーク博士と対面でとてもうれしい。
初めは上着を着たまま登った。
ウォーミングアップである。

「マコト、オレもそろそろ行くわ!」
ナオフミも昨年に続き、クラーク像の上に。
ついに、ナオフミまで”いばらの道”に。
「ナオフミ、落ちるなよ!」

再度、オレも登った。
「ナオフミー、そろそろ上着を脱がないと、博士に対して失礼な気がしてきたわー」
おもむろに、上着を脱いだ。
オレは半裸で、クラーク博士と戯れながら、「オクラーク博士が大好きだぁー!」と笑った。
(このストーリーはほぼノンフィクションですが、物語展開上のフィクションを含む場合がございます)

クラーク像から降りた瞬間、2人で「来年は全裸だー!」と誓った。
(先に記した通り、ナオフミは4年で来年3月卒業なので、来年はないはずである。いや、”留年”を想定して?)

クラーク博士にオレとナオフミは、大変お世話になり、平和な心持ちであった。
ゆっくりとナオフミの部屋に戻った。
サザンオールスターズの「波乗りジョニー」を聴きながら、人生について語った。

1:00
明日は苫小牧港からフェリーに乗って、大洗港へ向かう予定である。
ジンギスカン臭の漂うナオフミ氏の部屋で就寝。

※ このストーリーは、ほぼノンフィクションです。一部走行等に関する描写に関して、物語展開上のフィクションを含む場合があります。実際の道路状況に合わせて、交通ルールを守り、安全運転を心がけましょう。また、現代と時代背景が異なるため、一部現代の感覚など異なる箇所があるかもしれません。ご了承いただけると幸いです。

※トップの写真は、ツーリングマップル北海道2001に掲載された写真です。カメラマンの小原さんから特別な許可を得て使用しております。


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