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【原チャリで行こうぜ!】 2001道北編 vol.4 〜通学用スクーターで北海道に向かってしまった件

3日目:2001年7月30日(月)


バス停での目覚め、道北へ向けてスタート

5:30
起床、というか、少しはうとうとしただけで…。
相当眠い。
ただ、そろそろ動かないとまずい感じである。
というのも、オレはバス停の中に眠っていたのであった。
バスの始発前に、何事もなかったように立ち去る必要がある。急いで準備開始!

ふと、バス停のドアを開けてみた。
「おっ、雨止んでるじゃん!」

外の空気は雨降り後の湿気を感じるものの、北の大地の新鮮な空気であった。
そして、土の薫りというか、草の薫りもなかなかいい感じではあった。

でも、かなり寒いわけである。
体感、10度ぐらいであろうか?
一応、今の季節、真夏なはずだが…。

6:15
身支度をササッと済ませ、いよいよスタート。
Dioのメーターは、2260kmを指している。
「かなり眠いけど、今日もガツンと走っていくぜ!」

本日のルートは国道233号線を北西に進み、留萌に入る。
その後、海沿いの国道232号線をとにかく北上、そして、道道106号線に入り、サロベツ原野を楽しみながら稚内まで北上して、稚内森林公園キャンプにて予定である。

気合を入れて走り始めたのだが、残りのガソリンが心細い。
「そろそろガソリン入れてやらないと、落ちつかねぇなぁ」と思っていると、タイミングよくスタンドが見えてきた。

6:55
出光、留萌南SS、3.1L、104円/L、338円。

国道233号線から国道232号線に入ると日本海が見える。
「おぉー、海だ!」
海水浴場と書いてあるが、かなり寒そうである。

かなりの大雨で、寒々した海である。
「海水浴場とあるが、北海道の人は、いつ入るのだろう?」
「水温、相当低くねえか?」

オレは大学の頃から茅ヶ崎の海で、ボディボードをやっていた。
ひょんなことから、茨城県の海水浴場に遊びに行ったことがある。
そして、あまりの水温の低さにビビったことがある。

いつも入っている茅ヶ崎の海は湘南であり、水温が高い南側の海からの潮の流れの黒潮である。
そして、茨城県の場合、水温が低い北側の海からの親潮である。
茨城県の水温にビビっていたオレとしては、北海道の海水浴場には凍えてしまいそうだと思った。

留萌から国道232号線を北上すると、さびれた感じの漁村が続いた。
さすが、最果てである。
とにかく、ひたすら北上する。
「聞いた通り、本当に何もねぇ。」

8:10
セイコーマート、むらい苔前、苔前郡苔前町、鶏丼、とうがらしスープ、554円。ちなみに苫前という地名、”とままえ”と読む。

「寒い、寒過ぎる!」
寒いときは、辛いものに限る。セイコーマートで買ったとうがらしスープ、めちゃくちゃうまいのである。

雨の中のセイコーマートの軒先を借りて、駐車場での朝飯。
こんな寒い雨の日に、コンビニの駐車場で朝食。
ある相当意味贅沢である。
旅に出ているからこそ、こんな熱い(いろいろな意味で…)朝食を頂ける。
いい感じである。

さらに国道232号線を北上する。
この国道は通称”天売(てうり)国道”と言うらしい。
羽幌(はぼろ)を通って、初山別(しょさんべつ)へ。

途中、温泉があって入りたかったけど、朝早くてまだやっていない模様。
とにかく体が完璧に冷え切っている。
「風邪ひくぞ、こりゃぁ?」
ガクガクしてきた。
寒くて仕方ない。
体感気温12度ぐらいであろうか、雨に降られているので、さらに寒い気がする。

9:12
ホクレン、初山別給油所、初山別村字初山別、2.3L、107円/L、258円。

ちょっと雨がやんできた感じである。
なんか、天気が回復しそうな気配。

サロベツ原野の青空、どこまでも広がるお花畑

遠別を通過し、天塩で内陸への向かう国道232号線とさらに北へと進む道道106号線の分岐に到着。
もちろん、道道106号線のサロベツ原野方面へ。

どうして、サロベツ原野を目指したかというと、いや、北海道を走るライダーのほとんどがココを目指すかと言うと…。

ツーリングマップル北海道に、「約2万3千haの大湿原に100種類以上の花々が地平線まで咲き乱れる」と書いてあったりするからである。

とにかく、周囲に遮るもののない一直線の道に、右手に見渡す限りのお花畑、左手に利尻島、礼文島が見えるという超絶すばらしい景色の中を快走できるという、ライダー、チャリダーにとって、天国のような場所であるからである。

ただし、雨の日は防風でつらい道と豹変するのであるが…。

サロベツに入ったくらいから雨が止んできた!
そして太陽が顔を出してくれた!
「マジ、楽しくなってきたぜ!」

今日のおれはめちゃくちゃツいていたようだ。
さっきまで雨でつらいライディングだったが、今は快晴の一本道、まるで極楽浄土のよう。

サロベツ原野、道道106号線、左に海、右は原野、どこまでも続く一本道。
おれも大好き、みんな大好き、サロベツ原野!

サロベツ原野の一直線な道路に興奮して、Dioのアクセルを回しながら、使い捨てカメラのシャッターを何回か押してみた。
実は、現像してみると、斜めのアングルの空だけなど変な写真しか写っていなかったという…。

サロベツ原野パーキングで一休み。
「このために、頑張って走ってきたんだな~」としばし感動。

黄色い花が咲いている。
名前はまだ知らない。
原野に咲く花々が、おれを歓迎してくれている感じである。
最高にうれしかった。

何度も何度もサロベツ原野の写真をとる。
あまりにも、景色が良かったので道端に座り込み、走り去るライダーを拝んでいると、みんな「ピースサイン」をしてくれる。
みんなも短い北海道の夏を満喫しているようだ。
激しく腕を振って答えてくれる。

ここで、「ピースサイン」について少々考察してみる。
すれ違いざまのライダー同士、「安全運転で!」、「よい旅を!」、「おはよう!」、「こんにちは!」、「こんばんは!」、「天気良くて最高だね!」、「楽しんでね!」といったポジディブな気分を一瞬で交換するサインといったところであろうか?

ここで、ピースサインについてちょい自信がない書き方をした理由としては、自分は生粋のライダーではないのだ。
そう、おれは自動二輪の免許を持っていない。
自動車免許で原付バイクを運転しているという微妙なポジションなので、ライダー同士のピースサインの本当の意味を知らないのだ。
多分、先に書いたような気分を交換する一手法であると理解している。

サロベツ原野の青空にぽっかりと浮かぶ白い雲が、ゆっくりとゆっくりと流れている。
そんな青空をのんびり眺めつつ、道道106号線を走り去るライダーたちを見送っていると、めちゃくちゃ平和な気分になってくる。
さすらいの原チャリライダーって生活、いいかもしれない?

「誰かにこの景色を伝えてぇ!」と、高校水泳部の同期、現在北海道大学4年生のナオフミに電話をしてみた。
実は、この度のラストは札幌のナオフミの家に泊まらせてもらうことになっている。

「サロベツ原野、めちゃくちゃすげぇぜ!」とおれは熱く語った。
「やっぱ、マコトはやってくれると思っていた!」と無事にサロベツ原野にたどり着いた話を聞いて嬉しそう。
「8月2日に札幌入りできそうだから、ビール園に行こうぜ!」
「ビール園で、生ビールとジンギスカン、たっぷり頂こうぜ!」とナオフミも嬉しそう。

北緯45度通過、稚内でのお昼ごはん

道道106号線をさらに北上すると、北緯45度を示す看板、モニュメントがある。
ついに、北緯45度通過である。

「利尻島が見える!」
「いつか、向こうの島にも渡ってみたいなぁ」
「なんだか、行きたいところばかり増えて、旅ってきりがないなぁ」
「だから、旅っていいんだなぁ」

その後も平和に北上する。
ツーリングマップル北海道には”道には電信柱もなく原野の中を道が延びる”という記載がある。
まさにその通りで、左手に利尻島、目の前にはまっすぐの道、そして原野。
「あー、やっぱ、旅に出てよかった」

さらに北上を継続する。
”抜海”という地名が見えてきた。
道北は初めてなので、なんと読むのか分からなかった。
”抜海”はどうやら”ばっかい”と発音するようだ。

道道106号線を北上すると海沿いを北上する道道254号線の分岐となった。
道道254号線はツーリングマップル北海道の記載によると”抜海港線”と呼ぶらしい。
まずは、稚内市街に向かう道道106号線の方へ舵を取った。

次第に、稚内が近づいてきた。
稚内の町並みが見えたきた。

12:31
日石三菱、グリーンタウンSS、稚内市潮見、3L、110円/L、347円。

稚内駅が見えてきた。
とっても小さな、かかわいい町である。

12:54
車屋 源氏、稚内市中央、たこしゃぶ、1890円。

出発前に購入したガイドブックでチェック済みであるのだが、貧乏学生のオレ的には高級そうで、「大丈夫か?」と思ったが入店。

”たこしゃぶ”を頂いた。
凍ったスライスのたこを昆布だしの湯に通して食べるスタイルである。
「めちゃくちゃうまいぞ!」

ガイドブック見て、「これはぜってぇ、食う!」と気合いを入れて走ってきたかいがあった。
本当においしい。
これはおすすめである。

さらに、店員のお姉さんが可愛くて癒やされた。
「たこしゃぶも、可愛いお姉さんも最高!」

お腹がいっぱいになったところで、稚内中心部よりも北側に位置する野寒布岬を目指す。
野寒布岬と書いて、”ノシャップ岬”と読む。
とりあえず、ノシャップ岬を拝み、「ウニ丼が食いてぇ!」って思って、ウニ丼を食べに行った。

実はそのウニ丼、3500円もする。
貧乏旅行のオレには、かなりハードな金額である。
が、「せっかくだから食うことにしよう!」と思い店に入った。

たまたま、相席となったのは、すごい体格の良いアフリカツイン乗りのジャイアンさん。
アフリカツインというバイクの大きさと、ジャイアンさんの体格が妙にマッチしていた。

オレも身長186cmで身体はでかいのだが、乗っているバイクは50ccのスクーターのDioである。
でかい身体に、ちっぽけなスクーターが全くマッチしていない、いや、かなりアンバランスな状態である。
Dioがちょびっとかわいそうである。
「まあ、アンバランスも、ほとんどネタ的要素で良いでしょう!」

特製バンダナとステッカーセットを会計後に受け取り、謎のスロットマシーンを回したり、”豪華ウニ丼”にまつわるストーリーは、いろいろな意味で個性的で興味深かったという感じであった。
さすが伝説の食堂である。

最北の岬、宗谷岬を目指して

さて、気を取り直して、宗谷岬を目指すことにした。
宗谷岬は国道238号を走って1時間かからなかった。
宗谷岬は、風が強く、体感10度ぐらいに感じられた。
実際の気温は、15度ぐらいあるのであろうか。

2000年9月最東端の納沙布岬、2001年3月最西端の与那国島、そして最北端の宗谷岬をたった今クリアした。
あとは最南端の波照間島をクリアすれば、東西南北制覇である。
最北端の碑を拝んだ時、うれしさというよりは、「早く波照間島行きてぇ!」と思った。

旅をしながら、次の旅の目標(ターゲット)が生まれる。
どこかに行くことで、さらにどこかに行きたくなる。
「旅っていうのはキリねぇなぁ。だから、おもしれぇんだなぁ~」

最北端の碑とでっかいバイク達とDioの記念撮影をした。
最北端の碑の手前には、樺太探検の人の間宮林蔵の碑があった。

みやげ物屋に”流氷館”があった。
そこには、流氷と動物の剥製がおいてあった。
剥製はリアル過ぎ?であったが、なぜかかわいかった。

みやげ物屋で絵葉書を買って、実家に便りを送った。
文面はこんな感じである。
「アホ息子は、まさかの原付きで、無事に最果てまで、たどり着きましたよ〜」
絵葉書売っているおばさんたちがとても優しくいろいろ話してくれた。

16:47
ホクレン稚内給油所、稚内市萩見、2.2L、108円/L、250円。
ここのスタンドでは、”最北端の旗”を頂いた。
領収書には、なんと”日本最北端のライダー様”と書いてある。
なんかめちゃくちゃうれしかった。

キャンプでの出会い、放浪の旅への憧れ

17:15
今夜は稚内森林公園キャンプ場にテントを張る予定である。
このキャンプ場、すごい丘の上にあり、Dioで登るのはちょっとつらい。
どうにか登りきると、二人のライダーがだべっていた。

「ここにテントを張ってもいいですか?」としゃべりかけてみた。
すぐに打ち解け話がはずんだ。
話してみると一人は地元の方で、もう一人は大阪から来たライダーであった。

ここら辺、冬はマイナス10度ぐらい余裕でいくそうだ。
3人で少し話し込んで、テント設営に取り掛かった。

「風呂に入りてーなぁ」と思いつつ、稚内温泉”童夢(ドーム)”にDioを走らせた。
道道254号線で野寒布岬を経由し、南下したところに温泉がある。

18:00
稚内温泉”童夢”、500円。

とても大きな風呂でかなりのんびりできた。
霧のサウナもあった。
たくさん走ったオレにとって、温泉でのひとときは至福の時間であった。

温泉からキャンプ場に戻ろうすると雨だ。
温泉の入り口で、相模ナンバーのバイクと、チャリダーと出会った。
チャリダーは相模原からで、すでに2ヶ月も北海道にいるらしい。
3人とも神奈川出身ということで、意気投合。
20分ぐらいであろうか?旅について語り合った。

3人で雨宿りしつつだべっていたが、雨が降り止まないので、あきらめてスタート。
外はもう暗くなり始めている。
急いで帰らないと本当に真っ暗になってしまう。
北の大地の夜は本当に真っ暗になるので、早く街に戻る必要がある。
そして、その前に、心の燃料?の酒を買わないと。

19:48
稚内市の酒屋、ビール2本、529円。

20:00
例の急坂を登り、キャンプ場に戻った。
さっきと異なり、荷物をほとんど積んでないので、かなり楽であったと言いたいところではあるが、あまりの急坂で、50ccのDioには、相変わらずかなり厳しい状況であった。

ザーザーと本格的に雨が降っている。
夜ご飯を作るために、火を使える場所を探し始めた。
奥の方に炊事場を発見した。
ここなら屋根がある、ホッとした。

3人のライダーが、すでに酒を飲んで盛り上がっていた。
「こんばんはー、雨すごいですねー、おじゃましまーす」と言って、屋根のある炊事場に腰を下ろした。

3人のライダーのうちの2人は、毎年正月に和歌山でキャンプをするのが恒例なようだ。
もう一人のライダーはすでに結婚しているのだが、バイクで一人さすらいの旅にでかけるのが好きと言っていた。
その既婚ライダー、「愛があるから、全然大丈夫」とうれしそうに語っていた。
さらに、沖縄もさすらったことがあるようだ。

途中から先程の大阪の兄さんも現れて、ライダー5人で雨の炊事場で楽しい宴会。
みんなで話していると、いきなり動物が暗闇から現れた。
キタキツネだ。

既婚ライダーは、「キツネにえさなんて、あたえちゃいけねぇ!人間に慣れたらこいつらの生活がおかしくなってしまう!」 と。
既婚ライダーかっこよすぎる。

22:00
大阪の兄さんと和歌山ライダーの1人と既婚ライダーは寝てしまった。
炊事場に残った和歌山ライダー1人とオレの二人で旅について語り合った。
風も強く、気温も下がってきたので、振るえながらしゃべった。

話題は、さすらいの既婚ライダーの生き方について、そしてオレの放浪の素質について、などであった。
「バス停で眠れちゃうし、ハスラー50を欲しいって言っているようだし、いつか本当にさすらいの旅に出るんじゃない?」
そんなことを和歌山のライダーのお兄さんは話してくれた。

「そうですね、自分でも分かりませんでしたが、放浪の旅の素質、少しあるのかもしれませんね。今、旅の最中ですが、帰ってもまた旅をしたくなると思います」
自分でも、新たな発見であった。

雨がさらに激しく、いよいよ本当に寒くなってきたので寝ることにした。

23:00
雨の中、テントに戻った。

「雨がテントに入ってきませんように!明日晴れますように!」
今日は、放浪、人生、価値観について楽しいライダー達と熱く語ることができた。
こうやっておれも成長していくのだろう。

※ このストーリーは、ほぼノンフィクションです。一部走行に関する描写に関して、物語展開上のフィクションを含む場合があります。実際の道路状況に合わせて、交通ルールを守り、安全運転を心がけましょう。また、現代と時代背景が異なるため、一部現代の感覚など異なる箇所があるかもしれません。ご了承いただけると幸いです。

※トップの写真は、ツーリングマップル北海道2001に掲載された写真です。カメラマンの小原さんから特別な許可を得て使用しております。


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