見出し画像

人が集まることで完成する家。絶対条件がなくなる時とは

不動産物件を探す上での絶対条件が「新築」だった渡辺さん。しかし実際には中古物件を購入して、フルリノベーションした部屋に住むことになりました。絶対だった渡辺さんの住まい探しの条件はいつ変わったのでしょうか。そして、どのように希望を実現させたのでしょうか。そこには、、、紆余曲折のストーリーがありました!

高輪W邸リノベーション

DATA
エリア |  東京都港区(高輪周辺エリア)
家族構成  |  ひとり暮らし
プラン  |  2DK→ワンルーム
面積  |  47.04㎡(登記簿)
構造  |  RC造
所在階  |  7階建の5階
主採光  |  南東
建築竣工年  |  1970年(築40年*購入時)
不動産購入  |  2010年5月
リノベ完成  |  2012年11月
権利  |  所有権
工事費用  |  850万円(設計料・税込)

CREDIT
プロデュース  |  スマサガ不動産
設計  |  スマサガ不動産+one flat design
施工  |  セットアップ
写真  |  平林克己


「新築」は外せない条件だった

人々をつなげる場となっている住まいについて、楽しく語ってくれる渡辺さん

外資系企業に勤める渡辺さん。以前、渡辺さんが住まい探しで絶対に外せないポイントだと思っていた条件は「新築」「商店街がある街」の2つでした。でも、実際にその条件で新築の賃貸物件に3年ほど住んだところ、さほど重要なポイントではなく、何か違うと思いはじめたそうです。
渡辺さんが次にこだわったのは「食」と「住」でした。

「どんな街に住むのか」という視点で出会ったスマサガ不動産

4mの大きなカウンターを持つ木製キッチンを造作した

渡辺さんは「どんな家か、ではなく、どんな街に住むか」という視点で物件購入を考え始めます。不動産探しでは、どうしても物件スペックばかりを見がちですが、「どんな街でどんな暮らしをしたいのか?」を考えることが重要な要素になります。

2010年当時は、女性が一人で不動産を購入することも、また不動産会社側もその対応にまだ慣れていませんでした。

「当時、中古やリノベーションを全く考えていなかったにもかかわらず、偶然スマサガのサイトを見つけました。サイトを端から端まで全部読んで『これだ』と思いました。実際に足を運んでみると、私が一人で家を買おうとしていることに何の偏見も持たず接してくれました」(渡辺)

打合せを重ねて気づいた、本当に自分が叶えたかった希望とは

もともと新築にこだわりがあった渡辺さんでしたが、よくよくお話を伺うと中古マンションを購入しフルリノベーションすると、新築でなくても自分の希望を叶えることができることに気がつきます。

「手垢がついていないどころか、自分の好きなようにできるなんて、こんなに面白いことはありません」(渡辺)

渡辺さんは田町で育ったこともあり、馴染みがある高輪台や麻布十番周辺の物件を探しました。実際に購入されたマンションは、女性がひとりで住むのにも安心なオートロックで戸数も多く、適度な生活感があるという点でおすすめの物件でした。マンションの管理人が住み込みという点も大きなポイントでした。

質感の良い木製の天板にはコーティングを施し、メンテナンス性も考慮している

「もともとこういった家を作りたい具体的なイメージがあったわけではなく、スマサガの皆さんと設計の打ち合わせを重ねていくことで、少しずつ今の形になってきました」(渡辺)

全てお任せであれば1ヶ月で設計し、その後2ヶ月で施工、合わせて3ヶ月程度で終えることも可能です。でも実際には半年ほどかけて取り組むことを選択されるケースがほとんど。イメージをすり合わせて、最初の設計(基本設計)に落とし込むのに約1ヶ月ほどかかります。希望通りにやりたいことを詰め込むと大体は過剰スペックとなりがちなのですが、実はこの過程が自分のコアな部分と向き合ったり、設計者とプラッシュアップを繰り返す大切な時間になるのです。そして、数ヶ月かけて本当に求めるべき着地点に向かっていきます。それはクライアントが本当に欲しいものがわかる期間でもあり、スマサガの設計スタッフがクライアントのコアにある本音の部分を自分たちに移植するための期間でもあります。

「そんなやり方もあるんだ!ということを惜しみなく教えてくださるので、毎週の打ち合わせのたびに夢が広がり、 だったらこんなこともできますか?とさらなる打ち合わせが重なっていきました」(渡辺)

自分が本当に欲しかった満足感はこれかもしれない

リビングの床は、調湿効果の高い桐の無垢フローリングを採用。一段下がった床には、
ワインがこぼれてもOK!の防水加工されたコルクタイルを施して

以前の2DKの間取りは、部屋の奥まで光が届かず暗い印象でした。それを明るく広いワンルームにするため、光をさえぎるものは全て取り外しました。

渡辺さんが一番欲しかったものは、心地良い床でした。そこで床材を最優先にして、無垢の桐を使うことにしました。桐は素材が柔らかくて、夏は涼しく冬は暖かい、さらに部屋に湿気がこもらないという利点があります。

天井は高さをとりたかったので既存の造作部分を取り払いました。そうすると建築物の構造体の部分であるコンクリートが打ちっ放しの状態で見えるのですが、そのままでも充分キレイだったので手を加えませんでした。

キッチンでは、複数人で料理をするだけでなく、自然と集まり団欒の場となることも。

当初は、対面式のキッチンが希望でしたが、今回はカウンターキッチンを作るとスペースに無駄が多くなるため、抽象度を上げて考えてみると「みんなと話をしながら料理を作りたい」という想いが渡辺さんの核心にあると分かりました。実際に完成したキッチンは壁に向かっていますが、みんなで料理を作りながらキッチンに立つことができて、その想いを叶えられました。

住めば住むほど味が出る家

ベッドエリアは小上がりに。天井をコンクリート現しにすることで、
リノベ前より20〜30cmも天井高があがった

「さらに家に味が出てきて楽しいんです」(渡辺)

モルタルを使っているのでヒビが入ってきたり、桐材の無垢フローリングの床も傷ついてきたりもするのですが、それが味わいで楽しいとおっしゃいます。
後悔したポイントはないですか?という私たちの問いに対し、「ない」と即答されました。

「もともと何もなかった状態から最大限引き出してもらって、自分がうまく言葉にできなかったものをカタチにしてもらいました」(渡辺)

この家に住むようになって、いつ人が来てもいいように常に片づけをするようになったそうです。どんなにステキな家が出来ても、それは渡辺さんにとって完璧ではなく、人が集まることで完成される家だったのですね。

▼高輪W邸のインタビューはこちら

▼高輪W邸の「ROOM TOUR」動画はこちら!


▼メディア掲載