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あるサソリ座の女のレンアイ     プロローグ 藤原竜也の映画

コロナのさなかにアメリカに戻って、就活をしていた私が

藤原竜也が佐藤正午の小説の映画の主人公になったという

記事をどこかで読んで、

宣伝のスチール写真をネットで見たとき、

ああ、これは帰国しないといけない、これをどうしても見ないといけない

と思って、東京でのパラリンピックのさなか、

東京に戻ってきてしまった。

そして誰かを誘って見に行こうと思っていたのだが、

考えれば、東京にいる私の知り合いは誰もが忙しく昼間働いていて、

誰が、昼の1時から藤原君の映画を私と一緒に見に行けるというのか。爆笑

そうして、9月の新月の昼間に突然、何かに誘われるかのように

映画館に出かけてしまい、

途中、自分が誰だったかも忘れるほど、話の中に入ってしまい、

最後のKIRINJIの氷の世界を聴いて、

我に返り、映画の筋なんかどうでも良かったんだと思い、

ただ大きな藤原君が見れればそれで良かったんだと。

それでも、藤原君はいつの間にか中年になっていて、

スクリーンの中の夢のような中でも藤原君は中年で、

他に出てきたトヨエツも、驚くほど、年をとってしまっていて、

二人ともシャツの衿のあたりの皮膚が加齢を隠せずに

特にトヨエツは昔はほくろだったのかもしれない部分が

形を変えていて、

当たり前だが誰でも年をとるのだと、

思い知らされた白昼夢のような映画だった。

とてものどが渇いて、映画館の前の広場で水分をとって、

ちょっと座っていると、ふっと風が吹いて、

どうしても歩いてどこかに行かないといけない気持ちになって、

ふらふらと近くにあった、理工系の大学のキャンパスに入り、

そして、そこからすぐ隣にあった、天神の境内へ。

細かい白い小石を見ながら歩いていたが、どうしてもお祈りしないといけな

い気分になり、お祈りが終わると、今度はどうしても、また何か創作をしな

ければならないイメージがわいてきて、家までの道を歩きながら、ずっと自

分の夢のような過去の出来事を何度も思い返していた。

絶対に過去にならないと思っていた、苦く苦しい恋愛について考えていた。

そして私を包むその天神の空気はその話を書けと露骨に私に促していた。

私は無理だよと、空気に抵抗していたが、どうしてもといってきかない空気

があった。

だいたい西欧人とのレンアイ話にはキスから始まって、肉体関係の描写を

はずすことがむずかしそうで、私のように無粋な人間にそんなことがかける

のか。

いや、私が書いているのではない、誰かに書かされているのだと

私は指を貸しているだけなのだと思って書くしかないと

心を決めざるを得なかった。別に書かなければ生命に危険があるとか

そういうことを感じたのではないのだが、

もっと生理的な欲求に近い、

これは身体の中にたまっている烏鷺(ウロ)を全部、出せというサインだと

思わざるを得ない。

よおく思い出してみれば、2016年晩秋に父が逝き、その翌夏に

どうしても居ても立ってもいられないという衝動に駆られて、

『20世紀最後のボンボン』というタイトルで

最初の結婚のあたりを文字にした。

そして、その澱が出たからか、2017年の12月に肺炎にかかり、

生死をさまようほどのことがあって、

そのあと、突然、そこから数えて、16年前に別れたはずのアメリカ人からの

突然の求婚があり、

2018年にあれよあれよという間に結婚してしまった。

そのアメリカ人は私とのレンアイを小説に書こうとしていたが、

私もまさか過去にならないだろうと思っていた、彼との話を

書かないといけないときが来たのだと覚悟を決めたのだった。

この話がどこまで本当で、どこまで架空なのかは私にもわからない。

だいたい私の友達(アメリカ人でも日本人でも)のなかで、

彼を実際に見たことがある人は極めて少ない。数少なく残っている結婚の誓

いの時の写真でも何度見ても夢の中で起こったこととしか今でも思えないの

である。

自分にとっては外国語である英語でしかコミュニケーションが出来ないこと

も一因かもしれない。

たまに彼が話す片言の日本語も聴いたときにはひどく滑稽だったので、

私の英語も彼にはそういう風に聞こえていないのか、そういうコミュニケー

ションでだいたい成り立つのか、レンアイなり、結婚なりというのはどうな

んだろうかというのはある。

二人とも夢見がちだから成り立った関係だったんじゃないのかという思いは

今もあるのである。

それでも、ただつきあっていただけでなく、結婚までしてしまって、正式に

戸籍にも載ってしまっているので、夢じゃなかったんだと確認する。

この話をこの秋に書き上げてしまったら、また次のレンアイが始まるのか、

そういう見通しまで立ててしまう現実的な私がいる。

藤原君の映画を見たかっただけなのに、

キリンジの音楽が私をいろいろな世界に踏み込ませてしまった

とても神秘的な体験を今日はしました。

今日このときからまた集中してこの話を書いていくのであるが、

何かひどく興奮している自分がいる以外は

どういう話になっていくのか,見通しがたっておらず、、、、。

本当に説明の難しい神秘的な体験をしてしまったんだなと思います。

今日は実際は2021年の9月7日なんですけれども、これが本当に発表されるの

はいつになるのか、、、。全部書き終わらないと、発表してはいけないよう

な。.。。。


What an amazing choice you made! Thank you very much. Let's fly over the rainbow together!