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企業再生メモランダム・第73回 皆さんにお伝えしたいこと④

「企業再生メモランダム」では、私が、20代の時に、複数の会社の企業再生に従事する過程で作成したメモを題材として、様々なテーマについて記載していきます。

「企業再生メモランダム・第70回 皆さんにお伝えしたいこと①」「第71回 皆さんにお伝えしたいこと②」及び「第72回 皆さんにお伝えしたいこと③」では、「皆さんにお伝えしたいこと」と題したメモの背景とメモの中身の一部について記載しました。

残りのメモの中身について、引き続き、ご紹介したいと思います。

メモ「皆さんにお伝えしたいこと」の中身

7.「労働」ではなく「仕事」へ

近年の対象会社の経営改革とは、企業文化の改革、スタッフの意識改革が主で、具体的には労働組合意識からの脱却がテーマでした。

過去の経営体制の移行によって、労働組合そのものはなくなりましたが、労働組合に色濃く影響された企業文化やスタッフの仕事に対する意識が残ってしまっていました。

ここでいう労働組合意識とは以下などです。
・ 同じ労働時間、同じお給料ならば、労働は少なければ少ないほど良い
・ 会社に対する無責任。会社に問題が生じればそれは経営の問題で自分は一切悪くない、部下や若手スタッフの人生に対しても無頓着。
・ 仕事に対する無責任。自分たちの努力は無く、暦のせい、天気のせい、景気のせい・・・と全て自分以外の誰か(何か)の責任。
・ 現状がそのまま続くという幻想。誰かが会社や自分たちの生活を守ってくれる、何もしなくてもお客様は減らないという幻想。
・ 過度な年功序列、セクショナリズム、社内政治。作業の質や量に比例することなく、年長者が昇格・昇給。議論の中身ではなく、発言者の地位や立場が全て。
・ 過去の労働組合の行動と比較すると、自分たちはまともという間違った認識。世間と比較するのではなく、明らかに悪かった過去事例と今の自分を比較して、頑張っている自分を主張。

この労働組合意識を、一部の幹部社員やスタッフが持っていたことが問題でした。

私が全てのスタッフにおすすめしたい考え方は、「労働」ではなく「仕事」です。

対象会社の仕事は、お客様にも直接喜ばれ感謝されますし、多くの人が憧れる仕事をしています。

所詮、日々の労働は、生活のためという後ろ向きな意識ではなく、前向きに毎日の仕事を捉えてもらいたいと思います。

仕事を通じて、会社に貢献したり、お客様に喜ばれたり、同僚に感謝されたりすることは、非常にやりがいがあることだと思います。

「仕事」という言葉には、「労働」と違って、前向きな響きがあります。

もし同じことを行うならば、そのこと自体を前向きに捉えて、日々楽しく仕事をしてもらいたいと思います。

8.苦労は買ってでもせよ

「若い時の苦労は買ってでもせよ」という言葉があります。

「若い時の苦労は買ってでもせよ」とは、若い時にする苦労は必ず貴重な経験となって将来役立つものだから、求めてでもするほうがよいという意味です。

今は80歳が平均寿命の時代ですから、若い時は不要です。当社のスタッフ全てに言えることだと思います。

私も、縁あって、上場会社に新卒で入社し、様々な経験をさせていただきました。

世のため人のためと考えて夢中で働いていたので、苦労とは思いませんでしたが、厳しい環境下での仕事の経験は貴重だと思います。特に、厳しい状況の中でこそ、人格は磨かれると思います。

昨今、対象会社の経営を巡っていろいろとありますが、やはり過去にあったことは許し忘れて、未来へ向かって前向きに頑張らなければならないと思います。

以前お話したとおり「人は性善なれど弱し」なのです。

普段は善い人であっても、追い込まれて心にゆとりがなくなれば、嫌なヤツになるのです。

もし今後そういった人と向き合うときが来たら、そのときの嫌な一面だけを見てはいけないと思います。

もしそのときの嫌な一面を見て、尊敬に値しない相手だと思ったとしても、
こちらが尊敬の念をもって接することで、相手も尊敬の念をもって接してくれるようになると思います。

そうすれば、いつか、その人も「仲間」になるのではないかと思います。

ぜひとも、昨今の一連の様々な苦労に感謝しましょう。私たちの成長のきっかけは、そういった様々な苦労だと思います。

9.会社は誰のもの?

会社は誰のもの?よく耳にする質問、テーマだと思います。

もちろん、法律上では会社は株主のものとなります。しかし、私がここで言いたい話は法律の話ではありません。

一連のこのメールの中で、私が皆さんに一番お伝えしたかったことは、リーダーシップです。

スタッフの皆さんには、自分の人生は、常に自分が主役であって欲しいと思います。

一生の中で多くの時間を費やす仕事とは、人生を豊かにする重要な要素だと思います。そのため、その仕事をする場所である会社も、おのずと重要だと言えるでしょう。

しかし、考えようによっては、会社は仕事をする場所でしかありません。自分がやりたい仕事があって、一緒に働きたい仲間がいる。それであるならば、もし場所としての価値しかない会社であるならば、その価値は半減してしまうかもしれません。

対象会社は、素晴らしい会社です。やりたい仕事ができて、一緒に働きたい仲間がいる会社だと思います。

スタッフ全員が、リーダーシップを持って、会社に関与する。そうすれば会社を変えることができますし、会社に関わる人も変えることができます。

スタッフの皆さんには、最終回のこのメールで、その事実をお伝えしたいと思います。

会社は、誰のものでもなく、自分たちのものなのです。

対象会社は、この数年で大きく成長しました。多くのスタッフが、自分の弱さと向き合って、そして乗り越えて、リーダーシップを発揮するようになりました。

私は、皆さんと一緒に働かせてもらって、本当に感謝をしています。これからも真摯に、誠実に、会社と仕事と多くの人たちと向き合ってもらいたいと思います。

リーダーシップは、経営陣や上司のみが発揮するものではありません。全ての人が、リーダーとなって、自分の周りの多くの人に対して、良い影響力を発揮するのです。

これからも全てのスタッフが幸せに働いて、対象会社が今よりさらに発展するように頑張りましょう!



本連載は事実を元にしたフィクションです。

株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介
 2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。

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