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企業再生メモランダム・第51回 ディープ・チェンジ 前編

「企業再生メモランダム」では、私が、20代の時に、複数の会社の企業再生に従事する過程で作成したメモを題材として、様々なテーマについて記載していきます。

メモの41枚目は7年前に作成した「ディープ・チェンジ」と題したメモです。

ミシガン大学経営学大学院教授のロバート・E・クインの著書「ディープ・チェンジ 組織変革のための自己変革」からの転載になります。

今回は長くなってしまったので、前編後編の2つに分けて記載します。

メモの背景

企業再生とは、組織の再生と人の再生です。

対象会社は、企業再生から3年以上経過して初めて、多くのスタッフは本当の意味で自分と向き合う機会を得ました。

今までは、自分と向き合う前に、言い訳する理由がたくさんあったのです。

それは天気、景気、暦、上司・部下・・・など、誰かのせいにするには十分すぎるぐらい言い訳のネタはあります。対象会社の場合は、一番分かりやすい言い訳が社内政治だったわけです。

経営者がスタッフにしてあげなければならないことの一つは環境整備があると思います。

人間は「楽ちん」な方に流されてしまいます。そのため、その人のためにも、退路を断ってあげることが必要なのです。

言い訳できる環境に身を置きながら、「さぁ自分と向き合って自己鍛錬しなさい。」というのは、現実的ではありません。

社内の風通しが良くなった今こそ、対象会社の全スタッフが、対象会社を「普通の会社」にするために、自分と向き合って、緩い環境から抜け出し、「普通のサラリーマン」になる努力をしなければならなかったのです。

メモ「ディープ・チェンジ」の内容

1.この本は、一人の力で組織やシステムを変えることは可能だという前提に立っている。

2.個人でも組織でも、ディープ・チェンジには勇気が必要だが、その資質は誰もがもっている。人は自己鍛錬を重ねて自分の才能に磨きをかけるにつれて、ものごとの可能性を否定しなくなる。代わりにそれを成し遂げるプロセスと人間関係を尊重しはじめ、より好ましいビジョンを思い描き、道徳に従って生きるようになる。そうやってこれまでより人生に意義を見いだせるようになると、力と自信がわいてきて、まわりの人たちにも力と自信を与えられるようになる。

3.ディープ・チェンジは、誰かが大きなリスクを覚悟して行動しないかぎり実現しない。

4.組織が選択を迫られるのは、内部の行動パターンと外部の現実の間にズレが生じはじめたときだ。環境の変化に適応して自分たちも変化を遂げるのか、それとも緩慢な死への道を歩むのか。組織を再生させ、エネルギーを注ぎ込み、大きな成果をあげるためには、誰かがリーダーシップを振るい、大きなリスクを背負って既存の境界線の外に足を踏み出さなくてはならない。

5.押しつけられた行動パターンどおりにふるまうのをやめ、内面からわき上がる思いに突き動かされて行動することで、主体的に世界を築けるようになった。力もみなぎってきて、まわりの人たちにまで力を与えられるようになった。絶え間なく変化する世界でリーダーシップを発揮する能力を高めていった。

6.個人がディープ・チェンジするためには、現実世界にふさわしい、新たな思考の枠組み、そして新たな自己を築かなくてはならない。これを実現できるのは、未知の世界への旅に乗り出し、そこで遭遇する手ごわい問題に立ち向かう意志がある人だけだ。

7.ディープ・チェンジしたいなら、リスクを背負って行動するしかない。ほかの人にディープ・チェンジを促したいなら、その前にまず自分が変身しなくてはならない。

8.他人にディープ・チェンジを起こさせるために知っておくべき最も重要なこと、それは、まず自分自身がディープ・チェンジに踏み出さなければならないということだ。

9.実際に、恐怖を味わいながらも未知の世界へ何度も旅した人たちは、この点を理解している。恐怖がやがて自信に変わることを知っていて、自信をもって道に迷うことができる。いま出現しつつある新しい世界に踏み出し、道を見つけながら前に進む方法を身につけている。だからこそ、変革の担い手となり、自分自身を、自分とまわりの人たちの関係を、さらには自分の組織をディープ・チェンジできるのだ。

10.本来、人間は前向きな解決策を見いだしたいと思う生き物だ。どんなに暗い状況でも、前向きになれる理由さえあれば、建設的なことを考えたいと思う。試練のときこそ、人々はリーダーシップを渇望し、信憑性のあるビジョンを強く欲するのだ。



本連載は事実を元にしたフィクションです。

株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介
 2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。

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