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書くこと、本にすること。

アマゾン出荷

きょうアマゾンから「マツダ商店(広島東洋カープ)はなぜ赤字にならないのか?」の発注がありました。
おかげ様で、この作品は今でもポツポツと売れています。

今では時効でしょうから書きますが、この本は「衣笠祥雄はなぜ監督になれないのか?」につづく〝カープ球団への提言シリーズ〟の続編。
「衣笠〜」は、2007年のオフに黒田博樹、新井貴浩のふたりを本気で引き止めなかった球団に対する義憤から、それまで溜まりに溜まった思いを一気に原稿にしたものでした。
それが思いのほか売れたので、こんどはきちんとした内容のものを、と書いた作品です。

一応はシリーズものですから、「衣笠〜」につづいてという思いで同じ版元に原稿を持ち込みました。
編集者は乗り気で内諾は得たのですが、たまたまその時点でカープが快進撃をしていたため「このタイミングでは出せない」と上層部か営業部かが判断したとかでドタキャンになってしまいました。

それで仕方なくというか、実際には「しめた」(印税ばかりか売り上げ丸儲け)とも思ったのですが、わが文工舎で出版することにしました。

フタを開けてみると、案の定「衣笠本」の勢いの余波もあって、この本も評判になりました。

もちろん、おひとり出版社ですから大々的なプロモーションもできず、出しっ放しのような状態でしたが、文字どおり「飛ぶように売れ」たのです。
全国の主要書店と広島県内の書店、そしてアマゾンだけの販売でしたが、初版の6千部は1週間ほどで捌けてしまいました。
県内の書店の新書コーナーでは、どこも軒並み1位。半年とはいわずランクインしていたのではないでしょうか。

これがもし「衣笠本」のように新聞広告を大々的にやってもらっていたら、かなりのセールスを記録したことでしょう。
その意味では「時期が悪い」と判断した版元は読みを外したことになります。

でも、たぶん時期は口実。実際はカープ球団の方からそれとなくプレッシャーがかかっていたのでしょう。
その版元は毎年のようにカープのムック本を出していましたし、スター選手の本も折に触れて出版していましたから、まったくなかったはずはありません。

あるとき担当編集者から、ぼくの原稿がラインナップされている本には「球団公認」は出せないと広報にいわれた、と告げられたことがあります。
他の出版社にも、きっと同様のことをいっていたのでしょう。そうして兵糧攻めにする…。
想定内のことだったとはいえ、まったく反吐がでそうな反応とでもいいますか。

でもまあ、カープ周辺の言論環境が、こんなさもしい魂胆でがんじがらめにされているのは悲しい現実。
その証拠に、いまカープをきちんと批判できるメディア、解説者、ライターなどなど、果たしてどこに生息しているのやら、というお寒い状況です。

先ごろ亡くなられた高橋里志さん。ぼくが知っている限り、たぶんかれくらいのものでしょう、是々非々できちんと発言されていたのは。

かつて高橋さんほか何人かの〝論客〟と覚しいカープOBにインタビューして、忌憚のないカープ論のような本にまとめてみたいと企図したことがあったのですが、最初に見込んだ人物が意外にも逃げ腰だったのに嫌気がさして頓挫してしまいました。

あのとき、「高橋さんだけでも」と踏ん切れなかったのは、「それで売れるのか?」という出版人の常識に、ぼくもとらわれていたからでしょう。

今にして思えば、残念なことをしました。


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