衣笠祥雄はなぜ監督になれないのか

天国から来たストッパー! #13

 指名順位最後のファイターズが7位まで指名したところで各球団の指名がすべて終了した。あとは育成選手の指名が残されているばかりだ。育成枠の指名をしない球団は、代表ひとりをテーブルに残してすべての関係者が退席した。
 育成枠は、支配下選手の上限70名を超えて選手を保有できる制度で2005年のシーズンオフに導入された。社会人野球のチームがあいついで廃部されていきプロ野球予備軍の裾野が狭まるなかで、将来有

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天国から来たストッパー! #12

 阪急はオリックスからバファローズを譲渡されるとすぐに、監督人事を発表した。新監督に就任したのは森脇浩司。オリックス・バファローズ時代からの復帰だった。2015年に偏った大補強の失敗と、続出したケガ人による戦力の低下で低迷した責任をとってシーズン途中で退任した森脇に、阪急はリベンジの機会を与えた。それはみずからが球団を一度は手放しながら復帰した企業としてのお詫びと、あらたな意欲を表明することでもあ

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天国から来たストッパー! #10

 さて、ドラフト会議。その1巡目の指名がはじまった。
 この年はセントラル・リーグ最下位の横浜DeNAベイスターズをトップに、パシフィック・リーグと交互に成績下位のチームから選手を指名していくことになっていた。
 ベイスターズは予想どおり東田投手を1位指名した。そして2番手の西宮阪急バファローズから阪神タイガース、ロッテ・マリーンズまでの3チームがたてつづけに藤澤投手を指名したあと、5番目に広島東

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天国から来たストッパー! #9

 この年のドラフトは、甲子園で春夏優勝した大阪東城高校の藤澤公太郎や、160キロ右腕、鶴崎一高の大黒翔太といった超高校級投手をはじめ、東部大学リーグの最多勝記録を塗りかえた大東亜大学の東田大志、前年のドラフトでファイターズの1位指名を蹴り、ジャイアンツの指名を待って一浪した東雲大学の菅井智也といった投手の逸材が目白押しだった。
 しかしカープは他球団との競合をさけて、東博多高校の左腕、森保雄大投手

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天国から来たストッパー! #8

 ドラフト会議は10月25日、都内のホテルで開催された。
 セ・パ両リーグ12球団のシンボルマークを一堂に映じた大型のビジョンがホールの正面に設置され、その下には各球団スタッフのためのテーブルが配置されていた。しらじらしいほど広いホールには球場のスタンドを模した客席も用意されていた。
 この空間では、これから野球というゲームとは対照的なイベントがはじまる。それは白球を介してパワーとスピードとを競う

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天国から来たストッパー! #7



 さっそく球団は衣笠祥雄本人に意向を伝えることにした。そのとき交渉役として白羽の矢が立ったのが、すでに引退し球団を離れていた福永だった。衣笠の現役時代、まるで個人トレーナーのように寄りそい衣笠の肉体的な危機も精神的な苦悩も共有してきたのが福永だったからだ。ふたりは「サチ」「ドク」と呼び合う仲で、今でも家族同然、いやそれ以上の交友をつづけていた。
 その福永をもってしても交渉は難航した。衣笠には

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天国から来たストッパー! #6

 そんなある日の幹部会議で、スカウトの尾花が唐突に提案した。
「衣笠さんはどうでしょうか。あのひとなら、実績も人気も知名度も、もうしぶんないですし……」
 会議室のテーブルに顔を並べた幹部たちは、口をあんぐり開けたまま背筋を凍らせてしまった。「まずい名前をあげてくれたもんよ」と、頭を抱えてしまったものもいた。
 尾花がいうとおり、衣笠はカープの監督として、もうしぶんないキャリアの持ち主だ。現役生活

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天国から来たストッパー! #3

 2012年の松井の現役引退を潮に日本にもどった陽子は、注目される選手や監督を追うために遊軍のような立場で取材を担当するようになっていた。そして衣笠祥雄が監督に就任したのを受けて、このシーズンを前にカープ担当のサポートにまわったばかりだった。
「福永さんに褒めてもらえるなんて光栄です。お世辞でも」
「お世辞なもんか。本気のストレートだよ。ほかの記者とは視点がちがっていて、おもしろかったよ」
「でも

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“権力”としてのカープ球団



きのう、新宿ピカデリーで映画「新聞記者」を鑑賞。広島では機会を逃しつづけ、上京してようやく念願が叶いました。

映画は時代の空気のなかから生まれ、それをスクリーンに映しだすものでしょう。たとえそれが過去の歴史ものであっても、未来に舞台を設定したものであっても、現代に通底するテーマでなければ共感を得られないし支持もされない。たとえそれが娯楽ものであっても、そのセンスは現代的であるかは問われること

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爬虫類の眼とウサギの眼



6時間という長丁場。まんじりともせずにスクリーンに見入っていた。
こんな経験は初めてのことだ。

それでも息抜きがしたいとか、中座して帰ろうと思いもしなかったのは、この映画の不思議な魅力に魂ごと吸引されてしまったからだろう。

スリリングなカーチェイスがあるわけでもなく、こけおどしのアクションもなく、暴力もセックスもない。
それどころか、BGMすらほとんど流れないモノトーンの映像の中では、米国

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