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【小説】アルカナの守り人(6) フウタ

※誤って、記事を消してしまいました。。。スキをしてくれた方すみません。
再アップします。

 
 二人は無事に、NYエリアに転移した。ヒカリがあの身分証のようなカードを掲示した途端、係員はさっと道を創り二人を通したのだ。もちろん、高額な転移料金を徴収されることもなかった。色々と疑問はあるものの、フウタは尋ねはしなかった。というか、聞くタイミングを完全に逃していた。
ヒカリは事情を説明することを避けているようだったし、何よりどんどん口数が減っている。フウタはヒカリが醸し出す緊張を敏感に感じ取っていた。
二人はただ黙々と歩き続けた。

 ヒカリの家は、大きな洋館だった。背丈を遥かに超える、頑丈で立派な正面の門から敷地に足を踏み入れる。庭の手入れはあまりされていないようだ。広すぎて手が回らないのか、所々、伸び切った草木がある。
それでも、玄関までの小道は、きれいに整備されていた。

重厚な扉を開き、屋敷の中に入る。目の前には、大理石で作られた立派な螺旋階段。手すりも華やかな細工が施されている。

 ヒュー♪  醸し出す雰囲気からも、お金持ちそうだとは思っていたけど、これは、すごいな。依頼料の追加も期待できちゃったりして…。

 フウタはすっかり緊張も忘れて、胸を弾ませつつ、ヒカリの後に続いて階段を上がる。長い廊下を歩き、二つ、扉の前を通り過ぎた。三つ目の扉の前で立ち止まる。そして、ヒカリはフウタを部屋に招き入れた。

 「…鍵があるのは、この部屋です。」

 ヒカリは部屋の電気を付けると、振り返りそう言った。
 少し埃っぽい。雑然と物が置かれている。大きい、小さい、丸い、細長い、様々な形状の箱。本も至るところに乱雑に積み重ねて置いてある。年季が入った美しいランプシェード。重厚な輝きを放つアクセサリーの類も見える。壁には、時代を経て艶めいた額縁に入れられた絵画たち。フウタは部屋を見回しながら、どっかのアンティークフリークが見たら発狂しそうな場所だなと思った。




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