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社会人2年目の読書感想文#5 独立記念日 原田マハ

よっこいしょ、と何かを越えようとする時
その何が小さくて低いほど、何にもつかまらずに越えられる。

いつもなら、ほんの軽い反動で越えられるのに
なぜか今日は越えられない時。
他人は軽々と越えられるのに、いつまでも自分だけ越えられない時。

そんな時に、私たちは何かを支えに、何かに掴まって、自分の力で超えていく。

独立記念日 原田マハ


自分のささえといえば、ふたつのぬいぐるみかなと時々思う瞬間がある。

生まれた頃に両親が私に与えてくれたカラカラと音のなるうさぎのぬいぐるみと、祖父母がくれた犬のぬいぐるみ。

今となってはもうボロボロで色あせて、自分のものでなければちょっと触りたくないと思うかもしれない。

そのくらい古いぬいぐるみ。

小さい頃から人が沢山いるところが苦手で
人との関わり方に悩んできたと思っている。

なんでそんなことを言われなきゃいけないんだ、と涙した時も
自分の置かれた状況に苦しく涙した時も

いつもベッドの上に置いてあるぬいぐるみを抱きしめて涙がかれるのを待った。

いつもはベッドの中で私に蹴られて迷子になっているというのに、そんな時だけはしっかりとぬいぐるみを私の横に並べた。


最近も、とにかく仕事が嫌だった。

仕事はいやではない、のかもしれない。
環境にもどちらかと言えば恵まれている方なのだけれど、それでもやはりその環境でしか生まれない悩みもあるわけで。

職場にいる自分が苦しかった。

2年目ということもあり、仕事の内容も少しずつ掴めてきてこれからなのに、どうしてもエンジンをかけられなかった。

仕事の内容についてどれだけ勉強しても、1つを知れば10ステップアップ出来たような気持ちになれた1年前に比べると、何も得られた気にならなかった。

同僚たちもいい人なのに、少し気になっていた事たちがどんどんと蓄積して上手くコミュニケーションをとれなくなった。

心の中で相手のせいにしている自分が嫌になった。

そうこうしているうちに、夜眠れなくなり
涙が止まらなくなった。
胃が痛くて、何が食べたかったか思い出せなくなった。

自分がなぜ今ここにいなければならないのかよく分からなくなった。

それでも仕事には行かないといけないし
働かないと払わなければならないものも払えない。

何度も涙(というよりはもう唸り声)を流して、ぬいぐるみを今まで以上の力で握りしめて夜が明けるのを待った。


ぬいぐるみがいなければあの朝を迎えられることは無かったかもしれないし、やめていたと思う。

今こうして、「なんとか続けてみよう」と考えていられるのもこのぬいぐるみがあったからなのだ。



川の向こうへの憧れの気持ちも、思い出のパンケーキも、あの時もらった言葉も、あのぬいぐるみも

誰かからすると、大したものではない。
たかが川で隔てられただけの同じ日本で、
ただのパンケーキで
何も考えずに読めば特に意味を持たない言葉で
たかが、ぬいぐるみ。

だけど、それらを支えにすることで
よっ、と、新しい世界をのぞきみすることができる。
つまづいても、また体勢を戻して歩き始められる。

あなたの支えは、何なのだろう?
その支えが支えとなる理由に、私はその人のこれまでのストーリーがあると思う。



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