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#163国立公文書館デジタルアーカイブを楽しむ(1)

 昨年度まで、自治体史執筆の仕事を引き受けておりましたが、無事刊行され、次いで別件の余業を昨年から引き受けています。基本的に近代地域社会史を中心に研究していますが、たまにちょっと守備範囲外の仕事の依頼もあります。ただ、守備範囲外とはいえ、興味関心があればお引き受けしており、それが仕事の幅になって言っているのではないかと思っています。
 さて、今回はその余業で調べものをしていた時のお話です。

 最近は調べものをするに際して、インターネットを活用することが非常に便利になっています。たとえば、国立国会図書館でも、以前では東京館に所蔵している資料は、やはり現地へ行って閲覧しないといけなかった訳ですが、最近では資料のスキャンデータを用意しているもので、公開の許諾を得ているものについては、自宅で閲覧することが可能です。公開されている資料については、そのスキャンデータをダウンロードすることも出来るため、一昔前に比べると、東京での閲覧のための交通費や複写料金などを節約することが出来、研究へのアクセスがより容易になっています。

 今回は余業で公家の家のことを調べることになったのですが、そもそも公家に対する基礎的な知識がないので、史料上に出てくる人名がいつの時期のものだか判らない。それを手元で調べるにも、そのようなことが判る辞書も持ち合わせていない、ということで、何かインターネット上で調べる方法がないか、ということで、検索してみたところ、国立公文書館デジタルアーカイブで「公家系図」という史料がインターネット上で写真閲覧出来るということが判りました。

 この史料は、江戸時代までの公家の各家について、氏名、生没年、陞爵の時期などについて記載されている史料で、もともとは江戸幕府が管理していたものを明治新政府が接収したという来歴の史料です。各家の人物が網羅的にこれで把握できるのですが、史料に記載されている時期が幕末のころ、嘉永年間(一八四八〜一八五四)の辺りまでの記載があります。そのため、概ね近世いっぱいまで見通せる史料といえるでしょう。四八冊の和綴じの冊子の形状の史料で、全体で一四五の公家の家のことが掲載されています。
 辞書では苗字や名前から検索することも出来るので、もちろん、公家のことを掲載している便利な辞書もたくさんあるかとは思います。直接史料に当たることで、細かな陞爵についての履歴や両親についての情報などを追うことが出来るため、非常に参考になるでしょう。
 この史料の欠点としては、公家の家の女性についての記載がないことです。系図というと、線でつながれた樹形図を想像するかと思いますが、この史料は人別、編年で記載されているもので、それぞれの公家の家の、各時期の当主について記載されており、家族内の女性の記載については当主の母親の記載があるのみとなっています。そのため、宮中で仕事をしていた女官についてはこの史料からは調べることが出来ないとなっています。
 このような長所、短所を理解して活用すると、公家についての情報がいろいろとくみ取れる史料となっています。

 次回は引き続き国立公文書館デジタルアーカイブで閲覧出来る「府県史料」について紹介したいと思います。



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