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#069史料の調査は掃除です(笑)。

 先日、久しぶりに史料の所蔵者の蔵へ入る機会がありました。その所蔵者の方は、事前にかなりきれいに掃除されていたようで、入ることを躊躇するような状態ではありませんでしたが、一般的には蔵は日常で触らないものを入れておく場所ということになるので、日ごろ不要なものが雑然と入っている、というのが通例かと思います。
 そこで、普段なかなか一般的にはどのようにして史料の調査がなされているのかは知りえないと思いますので、今回は調査について述べてみたいと思います。

 まず、史料の所在が明らかになった時に、その所蔵者のお宅を訪れ、史料を確認します。そもそもが普段から使用するものではないので、大体が蔵にある場合が多いです。史料は普段触るものではないので、保管されている箱などもほこりをかぶっていますし、収蔵されている史料もほこりまみれの事が多いです。調査のために借用しますが、まず行うのが史料の掃除です。というのも、そのまま収蔵施設に入れてしまうと、史料の中に含まれている害虫もそのまま施設に持ち帰ってしまうことになるので、一旦ほこりを払ったりすることがあります。これをしないで収蔵施設の燻蒸室などで殺虫作業を行うこともあります。とにかく施設内に史料を食い荒らす害虫を入れないというのが、博物館施設の鉄則です。この作業を済ませてから、一点一点に番号を付して内容を確認をして目録化し、写真やマイクロフィルムに撮影するなどします。これは史料の内容を確認するのに、その都度史料を直接触るのではなく、写真で確認することによって史料の傷む機会を減らして、永続的に史料を保存するという観点から行っていることです。また、この行為には災害などで万一史料が失われることがあった場合に備えるという利点もあります。もちろん、直接見ないと判らないようなことについては、直接史料から確認するということは行います。このような作業を経て、博物館施設の展示や研究論文、書籍などの基礎が作られます。

 今回、久々の史料調査ということもあって、上記のようなことを書いた訳ですが、蔵には大事なものも残っていますが、ごみやほこりもたくさん含まれているので、史料調査は掃除だともいえるわけです。

調査をしていると、シミやヒメマルカツオブシムシが生きた状態や死んだ状態で出てくることが非常に多いです。中にはクモの抜け殻なども含まれていることがあります。笑い話ですが、仕事で調査をしているために、気が付かないうちにシミやヒメマルカツオブシムシを服に付着したまま帰宅してしまうこともあるようで、ウールのセーターなどの穴が開いていると、職場から持ち帰ったためだと、著者のせいだと非難されることがままあります。
 今回、このお話を書いたもう一つの理由として、下記のリンクにある研究のことが念頭にありました。分野が異なるので、初めて聞いたのですが、「もんじょこむし」と呼称される、史料の中に含まれるかこの時代の虫の死骸を研究されている方がいるんです。通常、先の手順で我々は史料調査をするのですが、その際には、ぱっと払って捨ててしまうほこりなどにこのような貴重な研究成果の元があるとは、と。

 ただ、史料に含まれるほこりまで気にしながら調査が出来るかというと、時間や手間がかかるのでちょっとそこまでは気を遣えないな…となるのですが、現在は失われている新種の虫が史料の中に挟まれていた、ということや、史料に含まれる虫の死骸によって、現在と虫の分布が異なっていた、という、この研究成果は非常に興味深いです。

 これらの元の記事も有料ですが、朝日新聞デジタルで読むことが出来ます。また、この取材を受けている方は、「もんじょこむし」のデータベースも作られています。プレスされた害虫のミイラが見れます(笑)。


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