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風景

 都会の風景はモノトーンだ。どこを見ても鉄筋コンクリートに覆われていて、なんというか息苦しい。僕は緑の多い自然の中のほうが落ち着くたちなので、余計にそう思ってしまう。緑豊かな公園なんかは特に好きで、思いっきり息を吸って、草木のにおいを肺にいっぱいにして、息を吐く。それだけで、日々の疲れや雑念が払われる感じがする。

 そういうわけで、ひどく端的に言うと、僕は都会が嫌いだ。人も多いし、ごみごみしているというか、あの無味乾燥とした建物たちがどうしても受け入れられなかった。けれど最近、そんな都会の中にも色彩豊かな場所があることに気づく。
 そこには、花が少し生けてあったり、赤みがかった木の葉が揺れていたり。そうしたほんのちょっとの暖色が、モノトーンの都市に、よく映える。そうしたことに気が付いた。

 今まで、あまり好きでなかった風景は、その実、自分がよく見ていなかっただけなのではないだろうか。きっと自分の知らない風景はそこら中にあるのではないか。いつだって、美しいものは自分で見つけなければならないし、探していけば、きっと見つかると思う。今は少しだけ、あの建物の間を歩くのが、楽しくなった。

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