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いじめ重大事態の調査に関するガイドライン (平成29年3月文部科学省)

はじめに

  • 平成25年9月28日に、いじめ防止対策推進法が施行され、いじめ重大事態に対し学校の設置者又は学校は、速やかに組織を設けえ調査を行うものとされたが

  • しかし、対応を行わない不適切な事例による児童生徒への深刻な被害や保護者への不信感が相次いでいる

第1 学校の設置者及び学校の基本絵的姿勢

  • 学校として自らの対応にたとえ不都合があっても、全てを明らかにして自らの対応を真摯に見つめなおし、被害児童生徒・保護者へ調査結果を適切に説明する

  • 調査は、いじめの事実の全容解明、事案への対処及び同種事案の再発防止が目的である

  • 被害者である児童生徒やその家庭に問題があったと発言するなど被害児童生徒・保護者の心情を害することは厳に慎む

  • 特に、自殺事案の場合、学校以外のことで児童生徒が悩みを抱えていても、自殺に至るまでに学校が気付いて救えた可能性があるため、いじめという背景の有無にかかわらず事実関係を適切に調査して再発防止策を講ずる責任を有している

  • 自殺事案の場合、遺族への調査の説明に時間を要する場合があるが、その心情を理解して丁寧に対応する。必要な時間をとりながら丁寧に説明を尽くして根気よく信頼関係の構築に努める

第2 重大事態を把握する端緒

  • いじめの重大事態は、生命心身財産重大事態、不登校重大事態として定められる

  • 重大事態は、事実関係が確定してから重大事態として対応するのではなく、「疑い」が生じた段階で調査を開始しなければならないことを認識すること

  • (なぜなら、いじめとしての報告はすでに上がっており、重大事態かしてしまっているわけだから、早期の介入は必須である)

  • いじめの重大事態としてこれまでに各教育委員会で取り扱われた事例

  • 軽傷だったが自殺を企図した

  • リストカットなど自傷行為を行った

  • 暴行により骨折した

  • 投げ飛ばされて脳震盪となった

  • 殴られて歯が折れた

  • カッターで刺されそうになったがとっさにバッグを盾にしたため刺されなかった

  • PTSDと診断された

  • 嘔吐や腹痛などの心因反応が継続している

  • 多くの児童のまえでズボンと下着を脱がされ裸にされた

  • わいせつな画像や顔写真を加工した画像をインターネット上で拡散された

  • 複数の生徒から金銭を要求され総額1万円をわたした

  • スマートフォンを水に浸され壊された

  • 欠席が続き (30日に至っていない) 当該学校に復帰できないと判断し転学 (退学も含む) した

誤った対応の事例

  • いじめによる心身への重大な被害 (脳震盪、骨折) が生じて「生命心身財産重大事態」であるにもかかわらず欠席日数が30日に満たないため不登校重大事態ではないと判断して調査を行わず、その結果被害者が長期にわたる不登校となった

  • 「不登校重大事態」は、いじめにより「相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき」とされている。退学・転学の場合には欠席ではないため報告・調査を行わないものを見聞きするが、適切ではない

被害児童・保護者からの申し立てによる重大事態の疑い

申し立てがあった場合はその時点でいじめではないと考えたとしても、共有して調査にあたる
児童生徒や保護者からの申し立ては学校が知らない情報である可能性が高く、重要である

第3 重大事態の発生報告

  • 学校は、重大事態が生じた場合、速やかに学校設置者を通じて地方公共団体の長などまで報告する義務が法律で定められており、そうしない場合は違法行為となる

  • これにより、指導主事、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなどの派遣が行えるようになる

第4 調査組織の設置

第5 被害児童生徒・保護者等に対する調査方針の説明等

家庭や被害者にも問題があるという発言は厳につつしむ
あらかじめ、重大事態の調査について、何を、どのような対象に調査するかを被害児童生徒・保護者に説明する。その際に、被害児童生徒・保護者が調査を求める事項などを詳しく聞き取る
加害者への調査結果の説明方法について、可能な限りあらかじめ被害児童生徒・保護者の同意を得る

自殺の事案

自殺の事案を他の児童生徒外部に伝える際は、遺族から了承を得る

第6 調査の実施

  • いじめ重大事態の調査は、その目的と、結果を被害児童生徒・保護者に提供する場合があることをあらかじめ調査対象者である他の児童生徒およびその保護者に説明したうえで実施する

  • 記録は各地方公共団体等の文書管理規則に基づき補完し、最低でも5年間の保管が望ましい

  • 記録の破棄は、被害児童・保護者に説明の上で行う

第7 調査結果の説明・公表

  • いじめ重大事態の調査結果と対応方針は地方公共団体の長に報告

  • 教育委員会会議え議題として取り扱う

  • 私立学校でも総合教育会議で議題とする

  • 調査結果は公表が望ましく、その可否や方針は被害生徒・保護者の意向による

  • 報道機関等外部に公表しない場合も、再発防止に向けて、調査結果を他の児童生徒または保護者に説明することを検討する

第8 個人情報の保護

  • 各地方公共団体の情報公開条例等に照らして適切に判断

  • ただし、個人情報と同時に学校の対応やその批判にかかる記述を不開示とすると外部から不信を招くから、適切に開示し、いたずらに個人情報保護を盾に説明を怠ってはならない

第9 調査結果を踏まえた対応

  • 被害者の保護とケア

  • 加害者の個別指導 (いじめの非を理解させ、謝罪の気持ちを促す) および保護者にも協力を依頼し、懲戒の検討も適切に行う

  • (と記載があるが、児童の加害者はおおむねその生活に困難を抱えていることから、懲戒や指導は行ったとしても、背景のケアはこれを契機に行うべきだと思われる)

第10 地方公共団体の長等による再調査

  • 以下の場合は学校又は学校の設置者による重大事態の調査が不十分な可能性があるため地方公共団体の長等による再調査を検討する

  • 調査時に知りえなかった新しい重要な事実が判明した場合・新しい重要な事実が判明したが十分な調査が尽くされていない場合

  • 事前に被害児童生徒・保護者と確認した調査事項が十分明らかにされていない

  • 学校の設置者及び学校の対応について十分な調査が尽くされていない

  • 調査委員の選定の公平性・中立性に疑義がある場合

  • 地方公共団体の長が再調査を実施した場合は、その結果を議会に報告する (法第30条第3項)

感想

調査・報告・介入の手続きである
同時に、各手続では被害者の保護と、調査結果に基づく加害者への対応、事後の防止措置が調査に関連付けて行われるもの
主目的は介入 (被害者保護と加害者対応と事後の防止策再構築)であり、そのために必要な情報を得られるまで調査する



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