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小湊すい
2024年8月28日 21:52
「小さい頃の夢はなんだった?」 シェイクを吸いながら、真美ちゃんは突然尋ねた。脈略のない質問に、何だったかなあと幼稚園あたりの記憶を思い返す。「お花屋さんだったかな。庭の花を引っこ抜いて並べてたら怒られたの覚えてる」「あはは!結衣は意外とわんぱくだね」「いまは違うもん」 期末テストが終わり、放課後はマックに寄った。スタバの新作も出たけれど、電車を乗り継いで街まで行くには気合いが必要
2024年4月3日 19:44
空が白み始めた頃、まだ辺りは薄暗いというのに、きみは「おはよー!」と大きな声で言う。わたしはまだ眠くて、布団に包まり、寝ぼけたまま返事をする。もう少し寝かせてくれたらいいのに、ごはん食べようよ!と目をキラキラさせるものだから、仕方がないなあと身体を起こす。 眠い目を擦りながら、ふたり分の朝食を用意する。トースターで食パンを焼くけれど、きみは待ってくれなくて、わたしより先に食べ始めてしまう。自
2024年3月28日 21:46
近所に腰の曲がった老婆が住んでいる。古びたアパートの1階、角っこの小さな部屋。前を通るといい匂いがする。おばあちゃんは料理が上手だ。扉の前に立ち、大きな声でただいま!と叫ぶ。しばらくすれば、彼女はゆっくりと出てくる。いらっしゃいと微笑んで。 あまり陽の入らない部屋だけれど、空気は温かい。大きな鍋が火にかけられているから。薄暗い小さな空間に、大きめのテーブルと椅子が4つ。そのうち半分は荷物で埋