2024ファジアーノ岡山にフォーカス12『 ≫≫攻撃を押し返す堅守~不動~≪≪ 』J2 第5節(H)vs 水戸ホーリーホック
1、連戦と相性への対策~手堅く~
今季の水戸に関しては、連戦前にチェックした印象だとしっかり前からプレスに来るチームで、後半に高さを加えてより攻守でアグレッシブに戦うサッカーができるチーム。
水戸を迎え撃つホームの岡山は、対応できる守備の幅の広いことで、最少スコアである1-0(ウノゼロ*1)2連勝を達成している。守備で、完封してプレー強度が落ちてきた時間に畳みかけるしたたかな戦いができる。
ただ、岡山は水戸に対しての相性が悪く、両チームとも連戦の中で、どれだけ自分たちのサッカーができるか。そういった位置づけの試合ではあった。
岡山は、シャドーの27番 木村 太哉 選手に代わって、2試合連続得点中の10番 田中 雄大 選手が、今季初スタメン。右CBの15番 本山 遥 選手と右WBの16番 河野 諒祐 選手も今季リーグ戦初スタメン。中CBの5番 柳 育崇 選手も今季2度目のスタメン。
ここまでのリーグ戦でスタメンであった18番 田上 大地 選手と88柳 貴博 選手は、リザーブメンバーへと回った。4阿部 海大 選手は、メンバー外となり、25番 吉尾 虹樹 選手が、リザーブメンバー入りで、リーグ戦デビューがあるかどうか注目された。
水戸は、左右の運動量を重視してか、SHとSBの4選手を総入れ替え。1トップの9安藤 瑞季 選手が、前節控えであったのは、もしかすると岡山を意識しての可能性もある。GK21松原 修平 選手のプレーを見ることができなかったのは残念ではあったが、19歳のGKである51番 春名 竜聖 選手を起用した狙いは、試合を見てみると納得できた。
岡山も競争の激しい選手を総入れ替えこそあったものの現状での替えの利かない選手は、連戦でのスタメンとなった。
どちらのクラブも連戦ということもあり、楽な展開となれば、次の試合を意識した交代を考えるところであったと思うが、そうならない難しいゲームでしたが、今季の岡山には、粘り強く勝てる力があることを結果で示すことができた試合を振り返っていきたい。
2、盤石の守備構え~岡山式三段撃ち~
水戸サイドが、風の影響を考慮して攻めるゴールを変更。岡山としてもいわきFC戦のことがあるので、チームが違えどやはり影響が心配された。
立ち上がりは、やはりというかいわきFC戦と同様に、ロングパスを蹴ってセカンドボール回収から一気にプレスをかけて、抑えに行くという手段を取っていたが、この日の岡山のスタメンは、18番 田上 大地 選手ではなく、5番 柳 育崇 選手であった。
まず、ここで前半はしっかり跳ね返すことができたことで、自陣に閉じ込められる最悪の事態は回避できた。しかし、岡山としても中盤の部分での運動量をベースとしたセカンドボールを回収するというのは、岡山の武器であり五分五分の状況であれば、ボールを落ち着かせるところまで持っていき、前に運ぶという選択肢もしっかり持つことができた。
水戸のマークが岡山の選手についた状況でもパスのスピード、判断のスピード、走るスピードをベースと個の力と組織的連動があったことで、パスが多少ずれることがあったものの前に進んでいくことができていた。そのため、悪い失い方も少なかったので、水戸のプレスに嵌められることもなかったと言えた試合ではないでしょうか。
風下といえる状況であったものの風向きも代わることもあったとはいえ、水戸のプレスに嵌められるどころか押し込まれるまでも許さず、9番 グレイソン 選手を活かす攻撃や今季初スタメンの16番 河野 諒祐 選手のクロスを武器と攻撃の形を作ることもできて、よく戦えていた。
一度サイドで囲い込んでいる所を打破されて、深い位置からゴールにクロスを入れられる形を許したこともあったが、基本的には行くべきところでしっかりいって守備対応できていた。
ともあれ水戸の風上で押し込んでリードを奪うという狙いというか逆に岡山が互角以上に戦えたことにより後ろからの繋ぎの形を交えたところをみるや岡山も19番 岩淵 弘人 選手と10田中 雄大 選手を前に押し上げてプレスをかけていくことと、その背後の中央のパスコースを9グレイソン 選手でパスコースを消すことで、岡山も水戸の制限をかけていくことできていたので、水戸のやりたいサッカーを岡山もやることができていたと言える。
とはいえ前半はかなりの風の影響を受けていて、ロングパスやクリアが前線まではなかなか飛ばないため、ゴールキックの時は、49番 スベンド・ブローダーセン 選手も後ろから運ぶ選択肢を選ぼうと駆け引きするシーンが何度もあった。ただそれでも劣勢に陥らなかったことで、岡山がしっかり戦えていたと言える前半であった。
その証拠に岡山もしっかり攻撃の形を作ることができていて、PKでの得点ではあったが、先制することもできた。「攻撃は最大の防御」という言葉があるが、岡山の前から嵌めていくプレスと制限していくプレス、パスコースを消す守備から始まり、中盤の拾い合い、パスカットのための守備網、前線のプレスバック、サイドでの1対1やスピードでの対応。DFラインでしっかり空中戦で競り勝って跳ね返す壁、危険な位置への侵入をクリアで防ぐプレー、WBが戻ってきてサイドのスペースを埋める守備対応。
特に変わった守備スタイルでこそないが、こうした隙のない総合力の高いDF‐MF‐FWの「岡山式三段撃ち」の守備構えがあることで、対戦クラブの攻撃を撃ち返して、後退させることで、押し返し、押し込んで、逆に攻撃に移る。この構えが突破されても最後は、選手がシュートに体を投げ出してのシュートブロックがあり、そこを突破されても49番 スベンド・ブローダーセン 選手の最後の砦がある。
基本的な守備で、対戦相手のスタイルや個の力、組織力、連動性で、対応できるところでしっかり対応していく。守備をしていく中で、自然と攻撃に移る。その攻撃もシンプルながら多彩ということで、ここまでの試合で5(6)試合で1(1)失点という守備の安定感に繋がっている。
3、動かざること岡山の如し~不動如岡山~
岡山の守備が安定しているのは「岡山式三段構え」を軸としたシンプルな堅さだけではない。ほぼ焦れることないメンタル面の強さである。
通常であれば、後半に追加点を決めることで、勝負を決めてしまいたいという勝ち急ぐ隙が生じてしまうところではあるが、岡山にそれはない。
多少風が弱まっても風上という状況であれば、そこを活かして士気高く攻めていくということが、通常であれば心の中で攻め意識が拡大していくが、岡山は、1点リードしていることから、追加点を取れれば幸運ぐらいに捉えて、一番は事故的な失点をしないことを優先し、後方の守備のバランスを崩さないことで「岡山式三段撃ち」を崩さないことを徹底していた。
とはいえ前半からこうした岡山の戦い方を身をもって体験した上に風下の影響を受けた水戸サイドからすれば、岡山にボールが渡ることで、岡山に攻めの時間が増えて、追加点を奪われることを当然ながら警戒して、全体のプレーの判断として、ボールロストしない戦い方にシフトした。
こうなると、試合は、両チームに攻撃の形こそできるものの試合自体は膠着してしまう。そこで、それを良しとできる岡山の守備への自信は相当なものであるように感じる。
この間に水戸は、岡山のプレスを受けて自陣でのプレーが増えることとなったが、GKの51番 春名 竜聖 選手を中心としたビルドアップでの着実な前進を目指すことを徹底していた。とはいえ岡山も無理こそしていないが、それなりの強度と迫力のあるプレスとコースを切る埋める寄せるを組み合わせた頭脳的な守備ということもあり、水戸がそのビルドアップに失敗すれば、岡山の追加点を意味するので、そこのプレシャーは相当感じていたはずである。
そして、この攻防の場所が、水戸の陣地が大半であったことから、流石にリードしている岡山はともかく、水戸もそれを良しとしていたわけでは当然なく、45番 寺沼 星文 選手での最後の反撃を狙っていた。
岡山として、そこで守備一方になるようだと難しくなるので、攻撃にでていかなくてはならなかったが、今季の岡山は、5番 柳 育崇 選手か18番 田上 大地 選手がリザーブメンバーに基本的には控えているだけではなく、15番 本山 遥 選手のDHでの投入での守備固めをしっかりできる。
この試合では、シャドーの10番 田中 雄大 選手と攻撃的WBの16番 河野 諒祐 選手を下げて、18番 田上 大地 選手を右CBに、右CBの15番 本山 遥 選手はDHに、DHの44仙波 大志 選手はシャドーに移った。右WBには、そのまま88番 柳 貴博 選手が入った。
この交代で、シンプルに高さと守備強度が上がった。とはいえ、ゲームプランとしてここで攻勢に出るために、スタミナを温存していた水戸が、勝負にでる。流石に5番 柳 育崇 選手の空中戦勝率こそ流石に下がったものの冷静かつ粘り強く守備対応すること。セットプレーでの守備も何度かあったが、ゾーンでしっかり守って、そのまま逃げ切ることができた。
岡山のこうした相手のサッカースタイルをシンプルに受け止める戦い方で応対するだけではなく、ゲームプランに対してもしっかり準備できている。そして、劇的な決勝点のあった試合こそあるが、こうした戦い方ができる岡山は、客観的に(数字や順位で)考えても「安定している」といえる。後は、昇格候補と言われているクラブに対して、どこまで戦えるかではないかと思う。
この試合の岡山の勝ち方は、確かに強い勝ち方ではあるが、次戦で対戦する群馬も昨シーズンは、プレーオフ圏内を狙える戦いができたチームで、主軸選手の移籍が何名かあって入れ替わってこそいるので、簡単ではない。
とはいえあの選手がデビューする可能性は十分あるんじゃないかとは感じています。これは決して侮っているのではなく、期待するに相応しい選手だからで、逆に群馬もその方が嫌かもしれない。
何れにせよ今季は「不動如山=動かざること岡山の如し」に基づいた手堅い選手起用、攻守での戦い方、プレーの選択を含めて、本当に我慢強く戦えている。
4、熱き結束と蒼き闘争心~水戸ホーリーホック~
毎年メンバーが大きく変わっているからこそ、水戸のクラブとしての安定感が光っている。J2の中でもチーム予算が多いクラブではない中で、難しい編成が迫られているクラブの1つだが、新人選手がとても多いことからもその難しさが伝わってくる。
そういった状況の中で、クラブとしての方向性の意識の共有と、クラブとしてのサッカースタイルの一貫性を共有することは簡単ではない。3節の試合を見た限りだと、前からのハイプレスは、強度こそ高いが、連動性は伴っておらず、2人目3人目が遅れることも多かった。
この試合は、3バックにDHが降りてくることもある岡山のビルドアップにプレスをかけようとするも人数的にも状況的にも岡山に繋ぐ怖さを与えるまでは至らなかった。そのため、そうした水戸の若い選手が多いという特徴を活かした前から速さと運動量の伴った攻守にアグレッシブなサッカーこそ体現できなかったかもしれないが、その分繋ぐという新たな一面が見れた試合となった。
そして、その中心にいたのは、19歳のGK51番 春名 竜聖 選手である。岡山のプレスがかかる状況でも的確な判断で、しっかり繋ぐことができていた。水戸のイメージとしては、伝統的にプレー強度が高く、総合力の高いチームに対して、安定した守備とカウンターで勝ちきるイメージがあるが、そこに繋ぐ力が加われば、より勝てる試合が増えてくる。
ただ、メンバーが大きく変わる以上簡単ではないが、5節時点でそこにしっかりトライできている。まだまだ前進できるとまでは言わなくてもクラブとしての選択肢の幅は広がる。この試合でも風下で難しい時間帯で、今の岡山に対しては致命傷となる2失点目を許さず、45番 寺沼 星文 選手のポストプレーに期待をこめて戦うということを敗れはしたものの体現できた試合となった。
チーム強化という観点でも難しい面こそあるが、岡山に完全移籍で加入した43番 鈴木 喜丈 選手のように、将来性のある若い有望な選手が水戸に終結してくる。その選手たちの良さを引き出すクラブとしての積み重ねがあり、一体感を生み出す「熱き結束と蒼き闘争心」があるクラブ。それが、水戸ホーリーホックなんだと感じた一戦であった。
5、可能性の探求の口実~把持~
「岡山式三段撃ち」の攻撃を意識した守備と「動かざるごと岡山の如し」とした手堅い戦い方や試合運び、我慢強さをしっかり示せている分、どう出場機会の少ない選手にチャンスの機会を作っていくのか。岡山が「J2の頂」を目指すのであれば、各選手の成長は必要不可欠である。
特にリザーブメンバーにも入ることができていない選手が、練習でアピールした選手をどう起用していくのか。選手層が厚いだけに、その辺りの選手起用が最も問われていくことは間違いない。
ホームでの8番 ガブリエル・シャビエル 選手や11番 太田 龍之介 選手にチャンスこそなかったが、連戦の最後ということで、群馬戦のメンバー入りも十分可能性はある。どういった選択を木山 隆之 監督が、決断するのか注目の一戦である。
群馬は、組織的戦えるクラブであるので、岡山としても組織で負けないことはもちろん、そういった個の強さや選手層の厚さを活かせる試合にして欲しい。
リーグ戦4連勝に向けて、どういった戦い方を岡山が体現してくれるのか、とても楽しみである。
攻撃に課題こそ感じているようですが、チームとして手応えを感じている様子が伝わってきますね。3連勝できていますが、まだまだチームとしての伸びしろはあるように感じます。まだ観ることができていない選手も多いですし、今後の試合がとても楽しみですね。
文章・図・写真=杉野 雅昭
text・figure・photo=Masaaki Sugino
ファジ造語を今回は、2語追加しています。
2024 J2 第5節(H)vs水戸ホーリーホック
『 ファジアーノ岡山のMOMは? 』
6、アディショナルタイム(今日の写真)
7、アディショナルタイム(ファジ造語24)
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