2024ファジアーノ岡山にフォーカス30『 最高の11人でいるために~結束の力~ 』J2 第17節(A)vsベガルタ仙台



1、背中を預ける意識~信頼~


2024 J2 第17節 ベガルタ仙台 vs ファジアーノ岡山
2024年05月26日(14:03kick off) ユアテックスタジアム仙台

 前節も少し触れましたが、開幕の頃は、今にしても思うと「個での解決」への意識が強すぎた側面は否定できないのではないでしょうか。今季での編成においての主軸選手の秀逸なプレーが光った中で「任せる」というプレーが少なかったように感じます。

 この意識が高かったことを示す代表的なプレーとして、18番 田上 大地 選手と88番 柳 貴博 選手が退場した試合がありましたが、退場した時の危険な守備の挑戦にありました。こうした個で解決する意識で戦った序盤戦こそ、個の力で相手を抑え込んで、完封勝利とも言える強さを示していましたが、そこで1つ崩された中で、個で責任を背負うようなプレーを選択しがちでした。その時に対して、今の岡山は、その時と違い「任せるプレー」。つまり「信頼」を感じるプレーが増えてきました。

 確かに1人の選手の力で勝つことができれば、勝ち点3は、ぐっと近づくと思いますし、勝ち方としては、シンプルであったと思いますし、1つの理想形でもあります。

 現在の岡山はその時と違った1つの理想系である11人が1つになって戦える一体感があります。それこそリザーブの7人だけではなく、普段の練習からファジアーノ岡山の勝利を目指す1人1人の力を1つにした上で、総合力で対戦クラブを上回る。決して簡単ではないですが、今季の岡山のチーム編成は、誰が出てもというテーマはあったと思いますし、この試合のダゾーンの解説の方も岡山の離脱者の多くに触れつつ、予想外での試合進行に驚きつつも、キャンプから誰が出てもというサッカーができていた事に触れていました。

 特に守備に関しては、無理をしないプレーが、チームとして共有できるようになってきたと思います。この試合でもボールを保持する仙台に対して、行ける時に後悔しないように守備のチャレンジする一方で、無理と感じたら無理せずに他の選手に任せるということを90分間を通してできていました。

 もちろん、そこで奪えない。突破を許すというシーンも増えましたが、守備に挑戦するということで、味方選手も準備できていますし、チームの中での判断の良さが際立ちます。その辺り目に見えない部分での強さが目立ちます。

 こうしたサッカーの理詰めだけでは語れない岡山の強さ、一体感は間違いなく、今の岡山にあると感じています。逆に戦術的な細かい分析や解説のレビューは、雉球さん、ファジスキーさん、ゼロファジさん、うにがしらさんといった方々に任せて、私は、目に見えない気持ちの部分についても言及していきたいと思っています。それこそ、選手や監督の熱い心の中や冷静さなどの心境を想像にはなりますが、私なりに感じた率直な気持ちをレビューとして、言葉として発信していきたいと思っています。

 それでは、今節も、試合というよりは、1つのテーマとして、事象から語っていきたいと思います。よろしくお願いします。

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2、リーダーシップ×信頼~三枚の盾~


 長崎戦と甲府戦、仙台戦と1つの共通点があります。長崎戦は、スタメンでは3選手が揃っていなかったですが、守備においてリーダーシップがとれる選手が、初めて揃っていたのが、この3試合です。だからこそ、私達が思っている以上に、7番 竹内 涼 選手が、ピッチの中心にいる意味は大きく、DFリーダーである18番 田上 大地 選手と副キャプテンの5番 柳 育崇 選手が揃っている心の安心感というのは大きいのではないかと感じます。

 22シーズンや23シーズンにもあった5番 柳 育崇 選手とヨルディ・バイス 選手(当時23番)の「熱さ」を軸としたリーダーシップに、24シーズンは、冷静さ、経験、言語能力に裏打ちされたコーチングが加わったことで、飛躍的に守備の判断の正確性と安定感、そして、心の粘り強さ、つまり精神力の強さに繋がっているように感じます。

 戦国大名である 毛利 元就 氏の逸話として「三本の矢」という逸話がありますが、今のファジアーノ岡山には、個の守備というよりは、心の守備という観点での簡単には敗れない「三本の盾」という粘り強さが、あるように感じます。17節終了地点で、J2の3位と4位の得点数を誇る長崎と甲府との試合で、無失点にできたことは決して偶然ではなかったと感じます。そして、それこそ希望に感じた理由と言えそうです。

 本日の仙台戦は、PKで失点こそ記録しましたが、流れの中では3試合無失点。心が整った中で、49番 スベンド・ブローダーセン 選手のリーグナンバー1のセーブが光り、4番 阿部 海大 選手の身体能力で守ったら岡山ナンバー1の対人守備が、引き出されている。チームの中での役割が明確になることで、中盤の選手の持ち味が光ってきています。

 それこそ、「持たれる」を「持たせる」。「運ばれる」を「運ばせる」。「打たれる」を「打たせる」。「入れられる」を「入れさせる」など。左から右に近づかせることで、データ以上に、岡山が守れていて、岡山が攻めた試合に近づけることができていました。

 仙台は、16節終了地点で、3位で4連勝中と勢いがあった中で、岡山として「持たせない・運ばせない・打たせない・入れさせない」などのアクションを選択した時のイエローカードが多く出てしまう試合にこそなりましたが、PK以外では最後はやらせなかった試合にできました。

 仙台戦での快勝に繋げた岡山の粘り強い守備は、メンタルにおける「三枚の盾」からの粘りから生まれましたが、その守備が長崎、甲府、仙台に続いて、「J2の矛(17節終了地点でJ2最多得点)」である千葉に対して、鬼門フクアリでどこまで戦えるか、とても楽しみですね。

2024ファジ造語No.23
『 三枚の盾 』

 24シーズンにおける守備におけるピッチ内での精神的支柱である3選手。中盤でチームを1つにするキャプテンである7番 竹内 涼 選手。23シーズンのキャプテンで今季の副キャプテンである熱き真っすぐな5番 柳 育崇 選手。開幕から守備を統率するDFリーダーである18番 田上 大地 選手。この3選手が揃った時には、劣勢の苦しい試合でも粘り強く守り、各選手の役割を明確にした上で、選手の持っている守備力を引き出せる。そして、声かけやコーチングも的確で、守備の判断の正確性と90分間やるべきことを徹底する集中力と簡単には折れない粘り強さを実現。毛利元就氏の「三本の矢」が有名だが、岡山には攻撃も批判も責任も3人で受け止めることで懐の深くなる「三枚の盾」がある。


3、J2屈指の快速アタック~ベガルタ仙台~


 スコアこそ1-4で、ほぼ岡山の快勝と言える試合でしたが、仙台の2列目に対して、岡山が守れていたかと言えば、怪しい部分はありました。結果的にPKでの失点のみに抑えて、「三枚の盾」で守りきった試合でこそありましたが、岡山は、4枚ものイエローカードが掲示された通り、後手に守るシーンが多かった試合でした。判定に対しては、少し違和感を感じた部分はありましたが、チームとして熱くなり過ぎなかったことで、過度に荒れなかったことは救いでした。

 仙台が2列目を中心とした局面で優勢を築くことができていた理由として、この試合における仙台の核である2列目でのサイドアタックとボランチのチャンスメークや攻撃参加にあるように感じた。

 27番 オナイウ 常磁 選手は、右サイドを駆け上がり、深い位置からのクロスの配給に何度も成功していて、そこまで行けなくても1対1で抜ければというシーンを何度か作ることができていた。その内の1つは、PK獲得に成功していて、岡山の弱点を突く以上の成果を挙げていて、仙台の武器と岡山の弱点は噛み合っていて、岡山としては、かなり苦しめれていたのも事実だと思います。

 左サイドの14番 相良 竜之介 選手も岡山の誇る4番 阿部 海大 選手を手玉にとって入れ替わったり、7番 竹内 涼 選手や24番 藤田 息吹 選手のフォローを物ともせず、得点こそ記録できなかったが、岡山のゴールに何度も迫った。

 ここ数試合出場機会を掴んでいる24番 名願 斗哉 選手も同じように、左サイドから岡山への反攻を試みていた。試合を通して、岡山は「止めること・防ぐこと」は難しかった。近年は、資金力の部分での差が顕著で、こういった武器がある選手は、J1から海外へと引き抜かれることも多く、J2でこういった選手を抱えることは難しくなっていますが、そういった選手を多数抱えることができる仙台のクラブの底力を感じた。

 全体を見ても技術水準は高く、2トップの7番 中島 元彦 選手は、J2ナンバー1の枠内シュート数を誇ると紹介されていましたし、相方の11番 郷家 友太 選手も得点というよりは、チャンスメークの得意なMF寄りのタイプの選手である。そして、ボランチの6番 松井 蓮之 選手は、チャンスメークだけではなく、得点を狙える力のある選手でもあり、元日本代表の37番 長澤 和輝 選手のMFとして総合力が高い。

 4連勝を記録しうるJ2でも屈指のMFを揃え、攻守のバランスの良さは、(16節消化時点で)3位であったのも納得のハイレベルのチームであったと感じた。

 仙台が持っている力の高さは、岡山サイドからすれば、その得点に繋げるチャンスを作る力という部分で、強く感じた試合となった。シュート数からしても仙台からすれば、悔しい敗戦こそなったと思いますが、ここから再び連勝して、自動昇格を狙っていく力があると思いますし、スコアほどの差はなかった。それこそ逆になっても不思議ではない見方もできる試合であったと感じていました。

 ただ、ビルドアップでの所での岡山の守備のプレスや寄せで、ボールロストしたシーンや岡山に中央で攻撃の形を作らせてしまい抑えきれなかった守備、岡山の(現)エースである99番 ルカオ 選手に持ち味を出せてしまった部分など、仙台サイドに1-4相応の課題が生じた部分もあった試合になったのではないかとも岡山サポーターとしては感じたので、その課題に対して、仙台は、2巡目の対戦ではクリアしてくると思います。

 仙台には、これからの有望な若い選手が多く、チームを引き締めるベテラン選手もしっかり主軸として活躍している。私は「MF=総合力」というイメージを私は持っていますが、そういった仙台の総合力の高さを持っているチームという認識を抱いた試合となりました。その仙台が、雪辱を期して岡山に乗り込んでくる仙台との2巡目の戦いも熱い難しいゲームになることは間違いないですが、両チームとも一度気持ちをリセットして、次に向けて準備していくことになりますから、そういった試合の先に、どういった2巡目の対戦となっているでしょうか。お互いに良い状態で対戦できることを願いたいですね。


4、三位一体の攻撃~心技体~


 そして、再び岡山の話に戻りますが、この試合の岡山が「三枚の盾」で、結果的に1失点に抑えることができた試合でしたが、この試合では4得点できた通り、攻撃も良かった試合です。「三枚の盾」が揃ったことでの「守備こそ最大の攻撃」となったことも大きいですし、39番 早川 隼平 選手のJ1の浦和からの育成型期限付き移籍での加入や19番 岩渕 弘人 選手の復帰から好調で、99番 ルカオ 選手が、スランプから抜けることができたことも大きいでしょう。

 この試合では、スタメンの3選手の持ち味を存分に発揮できた試合で、2得点に絡み1アシスト(ほぼ2アシスト)の99番 ルカオ 選手が、フィジカルの強さを活かして、多くの攻撃の形を作り、岡山での中央で起点になれるだけではなく、サイドに流れてDFラインを突破するということもできていました。

 39番 早川 隼平 選手も同点ゴールが象徴される通り、止める蹴るがしっかりした上で、決断良くシュートやパスを選択して、アクションできますので、観ていて気持ち良いシュートが打てる選手です。同点ゴールのシーンを見てもシュートを打つ素振りを見せなかったことで、J2屈指のGKである元日本代表33番 林 彰洋 選手でも防げないシュートを、絶妙なコースへと突きさすことができました。今後のアシストの記録も含め、彼の絡んだ攻撃は、とてもゴールへの期待ができます。

 そして、19番 岩渕 弘人 選手のFWとMFの良いところのみを足して、2で割ったような総合力の高さというのは、驚かされるばかりで、決定機を呼び込むポジショニングというストライカーのような嗅覚に優れるだけではなく、味方選手を活かすことができるチャンスメークや決定機に繋がるラストパスも出せる選手で、視野も広い。彼がいることで、攻撃の手数は大きく増えるだけではなく、高確率で決定機を作れます。この試合でも1G1Aの大活躍でした。

 岡山の攻撃は、統一感のある攻撃や守備というよりは、こうした個性を前面に出すことでの相乗効果を出すことで、得点を狙い、守ることで勝利を目指すチームです。そういった組み合わせの中でもスペシャルな9番 グレイソン 選手や8番 ガブリエル・シャビエル 選手などを軸とした総合力の戦い選手を軸とした戦い方の模索から、この日のスタメンの3選手のようにタイプの異なる選手の個性が輝かせる23シーズンの方向に近づいたことで、4得点できた試合となりました。

 バランス感覚に優れる「心」の19番 岩渕 弘人 選手から直感タイプで予測ができない上に不屈のメンタリティという「心」を持つ27番 木村 太哉 選手。

 止める・蹴るだけで「技」で違いを出せるJ1浦和で将来が渇望される39番 早川 隼平 選手から、決めきれるシュートテクニックやゴール前での駆け引きの「技」に優れる10番 田中 雄大 選手。

 そして、速さ・強さ(・高さ)を兼ね備えた「体」のフィジカルモンスターである99番 ルカオ 選手から世界クラスのトップスピードを誇る「体」の29番 斎藤 恵太 選手。

 今季の岡山は、「心技体」の尖った個性の相乗効果を狙った「三位一体の攻撃」こそ、岡山式の攻撃であると、改めた感じた試合にもなりましたね。

2024ファジ造語No.24
『 三位一体の攻撃~心技体~ 』

 個性を攻守で大事にする木山ファジにおいて、岡山スタイルという戦術的なスタイルは、3-4-3という並びのみに留めて、統一性や相手の良さを消したり、弱点を突くのではなく、基本的な形と簡単な方針のみを決めて、尖った個性を前面に出すで対応させない攻撃や総合力や個の力、そこに連携や気持ちを乗せて、得点に繋げるスタイル。今の前線を任される3選手はまさに「心技体」の個性が光るタイプの違う3選手の力でゴールを目指す。


5、最高の11人でいるために~結束の力~


 今の岡山は、中盤とDFラインの内の3選手のリーダーシップで、チームを引き締めて、堅守をより強靭で粘り強い堅守へと昇華させることができる「三枚の盾」と、チームとしての独自スタイルではなく、選手1人1人の「心技体」の個性の組み合わせによる相乗効果を狙うことで、選手の力の可能性からチームの攻撃の力としての可能性を広げることで、得点を目指す「三位一体の攻撃」。この攻撃と守備における軸となる方針こそ、ここ3試合の上位と言える長崎・甲府・仙台といった力のあるチームに対して苦しみながらもスコア上は、互角以上に戦えた結果に繋げることができた理由ではないでしょうか。

 チームとしては、意思統一するという観点での一体感という部分での未熟な部分は、どうしても目立ってしまう脆さこそ内包していますが、自由に戦う中で、個性が個性との創造性で繋がり、心が心との共感性で繋がることができる。

 自由に戦う分、合わない時は合わない。逆に合う時は面白いように合う。普段からそうして戦ってきてるからこそ、リードしていてもチームとしての隙は大きくならないですし、悪い時でも簡単には崩れない。

『 34番 早川 隼平 選手 』
先に失点してしまったが、取り返して勝利できると思っていたので、気持ち的には焦りはなかった。

ファジアーノ岡山公式HP
J2第17節 ベガルタ仙台戦 監督・選手コメント
より一部引用
URL:https://www.fagiano-okayama.com/news/202405261730/

 説明することが難しい曖昧とも言える強さ、目に見えない強さが、木山ファジに、ファジアーノ岡山にはあると言えるのではないでしょうか。

 それこそ、23シーズンにあれだけ言われてきた岡山スタイルの必要性を訴える声を、一部の主軸選手が欠場しても他の主軸選手や代わりに出場機会を掴んだ選手でカバーして、誰かが出ていなくても粘り強く戦える。そういった個性と力を引き出すことに100%主眼に置いた戦い方で、内容の伴った結果を出せた試合を積み重ねることができたことで、そうしたファジアーノサポーターやメディアの声は、少なくなったように感じました。

 それどこから、そうした木山ファジの戦いぶりにいつの間にか惹きつけられている方も多いかもしれません。

 1つ1つの勝利だけではなく、1つ1つのプレーというサッカーの枠組みすら超えて、1つ1つの選手や監督の言葉が、私達の心に響き、応援したい夢を実現したいという心の衝動へと突き動かされるものがあります。

 そうして、俺たち私たちは、木山ファジの優勝を、木山ファジの勝利を求めて、自由な意思のもとで希望を抱き、スタジアムに足を運ぶサポーターの1人となっていく。

 そして、この試合の木山ファジのように「心技体」で「結束」し、サポーターも「ココロヒトツニ」することで、「チーム・スポンサー・サポーター」が「三位一体の心」で戦っていると胸を張って言えるように、これからも「最高の12人目」でいたい。

文章・図=杉野 雅昭
text・figure=Masaaki Sugino

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筆者紹介
 冷静さと熱さを両立した上で、自分の感じた事を自分の言葉で表現することを大事にしている。ハイライトやテキスト速報をレビューを書くために確認するが、極力SNSは、情報を遮断して、レビューを執筆している。流石に通知や開いた時などに、偶然に目にすることもあるが、綿密に分析するというよりは、サッカーというスポーツの魅力を発信することを一番大事にしており、ファジアーノ岡山だけではなく、対戦クラブにも最大限のリスペクトの気持ちで言葉にしている。同時に、サポーターとの交流や魅力を語り合うことも好きで、レビューを書き始めて、中断期間や書けなかった試合もあるが、10年以上、ファジアーノ岡山を中心にサッカーのある生活をエンジョイしつつ、応援してきた。同時に、数少ないから岡山問わず、交流のできたサポーターもいて、「趣味」という「生活」の一部になっていて、サッカー観戦を心より楽しんでいる。


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