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巻き込み型の商品開発から生まれた秋田杉葉の除菌エタノール〜株式会社サノ・高嶋

秋田杉の葉からできた除菌剤として発売された「杉の雫」から辿る対談企画をスタートします!開発担当者と学生インターンが「杉の雫」を片手に、携わってくださった方々の「思い」を探る対談シリーズになります。

また「杉の雫」がどのように製品として誕生し、販売に至ったのかを、6名の皆様との対談を通してお伝えできればと思います。

まずは、対談を始める前に「杉の雫」の開発を担当した株式会社サノ・高嶋について、紹介します。商品開発の要は「周りの人を巻き込むこと」。地元企業や学生インターンまでもを巻き込んで商品開発を行った背景について迫ります。どうぞお楽しみください!

株式会社サノにて(高嶋)

自分たちの足で稼いだマーケティング

三政
「2022年2月中旬に皆さんに杉の雫をお届けできるようになるまで、どのくらいの月日がかかりましたか」

高嶋
「始まりは、2020年4月にコロナウイルスが流行し始めた頃からですね。アルコール消毒やマスクが足りない…となっていた時期でした。その頃に秋田県総合食品研究センターの進藤場長が秋田杉の葉からできた除菌用エタノールを開発しました、という記事が秋田さきがけ新報に載っていて…当初は技術のみで、商品化されていなかったので、製造販売を行う企業を探していたみたいです。そこでうちの会社が商品開発していきましょう、という形になりました」

三政
1年10ヶ月という長い長い時を経て、ようやく世に出すことができた杉の雫ですが、商品開発をしてきた中で難しかったことはありますか」

高嶋
ターゲット層にこの商品を買っていただけるのか、というマーケティングの部分が大変でしたね。三政さんに一緒にやってもらったけれど…一緒に考えてもらって、いろんなところに取材や調査にも行きました。三政さんと一緒にいろいろ考えた部分(マーケティング戦略)が現実になるか、というところもドキドキではあったし…いろいろな方から商品について話を伺う中で、実際に『すごくいいね』と言ってくださる方も多かったので、今は早く皆さんに届けたいなという気持ちですね」

三政
「マーケティング戦略を練るために2021年の4月から本当にいろんなところを駆け巡ってきましたよね。林業がわからないとなれば、林業の現場を見学させてもらうために山奥に行ったり、秋田県の林業センターにお邪魔したり…。人と直接会って話を聞く、そんな足で稼いだマーケティングだったのかなと個人的には思いますね」

高嶋
「いろんな人に会って話を聞くって大事だし、為になったし、勉強になりました」

三政
「そうですよね。机の上で弾き出すマーケティングももちろん大事なんですけど、今回は足で稼ぐことを大切にしてきたなと思います」

未来につながる消費をライフスタイルに

高嶋
「杉の雫が『森にやさしい』という点や『未来につながる消費』という部分を強調してくれたのは、三政さんでしたよね」

三政
「インターン生として杉の雫に携わる中で、未来や環境をまもるという点にフォーカスした理由としては、私のニュージーランドでの経験があったからだと思います。ニュージーランドは国も小さく、資源も限られているので、環境問題への意識が高い国でしたね。ペットボトルで飲み物を飲む人をあまり見かけなかったかもしれません。水筒を持っている人が多かったです。エコバックはみんな持ち歩いているし、環境にやさしい商品がスーパーなどでも多い印象です。そんな中で暮らしてきた後だったから、より一層、未来や環境へのやさしさを考えていたのかもしれないです。加えて、杉の雫を通して林業に携わる皆さんのお話を伺ったことも大きいと思います」

高嶋
「うちの会社でもSDGsに貢献する商品として推していこうとしていたところを、三政さんから会社全体でSDGs(持続可能な開発目標)に取り組んでいった方がいい、という指摘もあったから…会社全体でもSDGsに取り組もうっていう前向きな姿勢をとることができましたね。杉の雫もその会社のSDGsの取り組みへの一環という位置付けになりました。三政さんの環境への意識に影響を受けました」

三政
「私はあまり仰々しく捉えていなくて。環境に良いことをしているという感覚はそんなになかったです、きっとそれはニュージーランドの街の人たちも変わらないと思います。意識してやっているというよりは、ライフスタイルの中に自然と組み込まれている当たり前が、実は環境にやさしいというのがいいなと感じていました。何気なしに、でも実は…という。もしかしたら杉の雫を手に取ってくれる方たちも『環境問題に意識が高いからこれを使っています』というよりは『実は、環境や社会の一助になっているんだな』くらいの気持ちでいてもらってもいいのかなと。生活の一部に未来を見据えた消費を取り入れてもらえたら嬉しいですね」

高嶋
「杉の雫は、除菌という点で自分の身の回りや家族を守るというのはもちろんだし、使っていて香りが心地いいというところは当然で、実はそれが環境にもやさしいんだ、というところを自然に感じてもらえれば嬉しいなと思います。SDGsが盛んに叫ばれている中で、一時的なブームではなく、長く続けていくための商品としていてくれたらいいですね」

人を巻き込んだ商品開発で秋田を盛り上げたい

三政
「高嶋さんが商品開発をする上で大切にしていたことはありますか」

高嶋
「製品の安全性や安心感のために誠意をもって丹念に行うのはもちろんですが、コンプライアンスも徹底することを意識して商品開発しています。あとは、製品を作っていく上で携わってくれている人たちとのコミュニケーションをきちんと取ることです。曖昧にせずに、わからないことは聞きますね。人と人とのつながりも大切にしてきたし、そういうつながりを大切にしていただける方々とやりたいと思ってきました」

三政
「高嶋さんは、人を巻き込んだ商品開発をされているなと感じていました。現場の空気感や人とのつながりを大切にしてきた商品開発なんじゃないかなと個人的には思っていて。だからこそ、携わってきてくれた一人一人の思いがあるということが私も分かったし、その背景ごと杉の雫に出会ってくれた人に愛して欲しいなという気持ちは私もありました。だからこそ、今回対談という形で杉の雫に携わってくれた方々の思いを届けられることが嬉しいなと思います。そこを高嶋さんが大事になさっているからこそ、今回こういう形でプロモーションしていくことにできたと感じていますね」

高嶋
「…ありがとうございます」

三政
「うちの会社はそもそもBtoB(企業が企業に対してビジネスを行うこと)がメインで、会社に新機軸を持つためにBtoC(企業が一般消費者に対してビジネスを行うこと)に挑戦していくという理由でできたのが、直にお客さんにフォーカスしていく食品開発課ですよね。これまでBtoCのノウハウが全くないところから始まって、そこの中心人物としてやってこられたのが、高嶋さんだなと思いますね。

人を巻き込んで仕事を進めていくコツはありますか?私はいつも一人で仕事を進めてしまう傾向があって、それで何度も失敗を重ねてきました。高嶋さんなりのノウハウがあれば教えていただきたいです」

高嶋
「何もできないから人に頼るしかない…っていうところです笑

自分には秀でるものがないので、それぞれプロの方に話を聞いてアドバイスをもらって一緒にやっていただく…という感じですかね。わからないので、教えてください、というスタンスです。もちろん個人でも勉強して知ろうとしますけど、プロに聞くことは大事だと思います。巻き込むというより、自分への自信のなさがそうさせているのかもしれないですね。自分一人では何もできないから、いろんな人を巻き込もうという考えで商品開発をしていますね」

三政
「なるほど…謙虚な姿勢がベースにあるんですね。その点で言えば、私という学生インターンも商品開発に巻き込んでいらっしゃいますよね。学生インターンを巻き込んでみて、率直な感想はありますか」

高嶋
「いわゆるZ世代(*主に1990年代後半〜2000年代に生まれた世代を指す言葉)と呼ばれる子たちが本当に環境問題や社会問題について真剣に考えているんだなというのがわかりましたね。リアルにそういうことを考えて、杉の雫のコンセプトブックを作ってくれたので、非常に思いが詰まっているなと思います。三政さんに、出会えてよかったです」

三政
「ありがとうございます。でも、学生インターンを巻き込んで商品開発をするのって難しいところだと思うんです。途中から新メンバーとして加えて、これまで培ってきたものを共有しつつ、業務も教えつつ、商品も開発しないといけない…って逆に大変なんじゃないかって思います。何か難しかった点はありますか」

高嶋
学生インターンが来たとしてどこまでできるのかな、というのはありました。実際に三政さんが来てみて、その心配はなかったんですけど…あとは、インターン生がうちに来て良かったって言ってもらえるかどうか、というのは不安でした。これまで短期で一週間だけ高校生や大学生を受け入れたことはあったんですが、今回が長期としては初めてだったので」

三政
今後も商品開発に学生インターンを巻き込みたいと思いますか」

高嶋
「そうですね。やわらかい頭でアイデアを出してもらえたら嬉しいです。ぜひうちでやってみたいという学生さんがいれば、受け入れたいですね」

三政
学生インターンをはじめ、いろんな人を巻き込んで中心になれるコミュニケーターが商品開発には必要なんだなと高嶋さんの姿を見て感じていましたね。BtoCの商品開発というお仕事は気に入っていらっしゃいますか」

高嶋
「大変ではありますが、世の中に出る商品を作る経験は他にできない経験だとは思いますね。それを消費者の方が気に入って、いいねと言ってくれたり、リピートしてくださったりするのは嬉しいですね」

三政
「お客さんの反応をダイレクトに知ることができるのは、やはりBtoCの商品開発の面白さだと感じます」

高嶋
「そうですね。生みの苦しみはあるんですけど…」

三政
「私はずっとBtoCの商品開発は楽しいものだとばかり思っていました。一種の憧れみたいなものも抱いていて。でも実際にやってみて、もちろん面白さもあるんですが、その分辛さもあると思いました。正直、どの方向に開発を進めるのも開発者次第なところはあるなと感じて。ちょっとしたデザインしかり、写真一枚しかり、自分のセンスと経験が問われていることに重さを感じる日もありました。自分の意思や経験を反映できる一方で、自分の陳腐さに打ちのめされる瞬間はありましたね。春からは全く違う業界で働くので、この感情を噛み締めてはいるんですけど…笑」

高嶋
「会社の事業としてやっていくために、売り上げや利益についても考えつつですからね。そこはやっぱり大変だと思いますね。他の会社さんだと、商品営業やマーケティング担当もいるんでしょうけど、うちにはいないので、私たちで完結しないといけないので…」

三政
「食品開発課で全てやりましたもんね笑」

高嶋
「その上、商品の品質管理まで担っていますからね。それでも、やはり消費者に届けられる商品をつくることは喜びです」

三政
今後はどのような商品開発をしていきたい、という目標などはありますか」

高嶋
「いろいろやってみたいなとは思っています。杉の雫をブランド化して商品ラインナップを増やしていくこともやりたいです。あとは、食品開発課なので、秋田の食品に関わりたいです。秋田の食品を無駄なく、無理なくみんなに食べてもらえるような商品がつくれたらいいなとは思います」

三政
「今後も秋田にこだわった商品開発をしていきたいという形ですか」

高嶋
「そうですね。秋田には良いものも、美味しいものも、自然も、豊かな人もあるので。そこはぜひ今後も県内だけでなく、県外にも広められたら良いなと思います。秋田の人たちは、良いものを持っているけれど、個別にやっている人が多いと思うので。一緒になって、集合体になってできるのが夢ですみんなで手を取り合って、秋田をPRして届けられたらいいですね」

三政
「そうやって集合体となって秋田をPRしていく中で、中心となるコミュニケーターは欠かせないと思うので、そういう意味では高嶋さんのような商品開発をしていく方が活躍されていくんじゃないかなとお話を聞いて思いました」

高嶋
「ありがとうございます!」


というわけで、開発担当者の高嶋に迫ったインタビューはここまで。杉の雫が持つ背景について、少し深く皆さんに知っていただけたなら嬉しいです。6名の皆さんとの対談も併せてお楽しみください!

今回対談相手を務めた学生インターンの自己紹介はこちらから!