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細胞は記憶がある

専門性 ★
・ポイント
細胞は記憶があるのか。
細胞の運命はどう決まるのか。
iPS細胞の不思議
事前知識 特になし

私たちは過去を思い出し、様々な考えを巡らせる。
犬や猫も飼い主を覚えている。
虫や魚などはどうなんだろう。記憶はあるのだろうか。
このあたりに関しては議論の余地があるとおもわれるが、脳があるため、過去の経験から導き出される行動もあるだろう。
そういう意味では記憶できるとは思われる。

では、もっと細かいところはどうだろうか。細胞は記憶するのだろうか。

突拍子もない?そんなの不可能?
では、なぜ細胞は細胞自身が分裂するときに、全く違う種類の細胞にならないのだろうか。
細胞がなぜ細胞自身の運命を知っているのだろうか。


「神経細胞が分裂して、皮膚細胞にならないのは、細胞が全く違うからだ。」といわれるかもしれない。
細胞は一見は違うが、DNAは同じである。ただDNA上の遺伝子の使われ方が違うだけである。神経細胞には神経細胞のための遺伝子の使い方があり、皮膚細胞にはそれに対する遺伝子の使い方がある。
要するに、遺伝子の使い方を変えれば、神経細胞を皮膚細胞にもできる。

それを証明したのが、あの有名なiPS細胞である。
iPS細胞は細胞を初期化したものであり、細胞の決まった運命(遺伝子の使い方)を全くの0の状態にできるような感じだ。
つまり、どんな細胞にもなれる細胞にできることである。それと同時に証明されたのは、「全ての細胞は同じDNAをもっており、遺伝子の使い方が違うだけ」ということである。


遺伝子の使い方が細胞の運命を決めるということはわかったと思う。
では、どうやって遺伝子の使い方が決まるのか。

それは環境である。
細胞の周りの状態、細胞内部の状態でほぼすべて決まる。

まず、周りの環境が影響するパターンの例えをあげよう。
神経細胞が周りにある環境だと、その細胞らが「あなたも神経細胞になるのだ」という命令を出している。
詳しく言うと果てがないが、神経細胞自体が周りを神経細胞にさせる物質を放出しているような感じだ。

この応用例として、iPS細胞を特定の細胞にさせる方法がある。
神経細胞に誘導できる物質が含まれている人工溶液に細胞を置いておくと、神経細胞ができる。


最後に、細胞が細胞自身の内部環境に影響されるパターンをあげよう。これが細胞の記憶と呼ばれるものである。

この細胞の記憶というものは、最初にある刺激が必要だ。
そして、その細胞は、この刺激を与えられたという記憶を持ち続けることができる。

簡単に説明しよう。
細胞がある刺激をうける。その刺激は「あなたはタンパク質Aを作りなさい。」という命令になる。
その細胞は細胞内でタンパク質Aをつくる。

普通ならこれで終わりだ。あるタンパク質を作れと依頼されただけだ。
しかし、このタンパク質Aにはある特性がある。
それはタンパク質A自体の遺伝子を活性化することができる。
つまり、タンパク質A自体が「タンパク質Aをまたつくってね」という命令になるのだ。

そのため、タンパク質Aをつくれという最初の刺激から時間がたっても、タンパク質Aを作り続ける。
そして細胞が分裂した時にはそのタンパク質Aも子孫の細胞に受け継がれ、作られつづける。

細胞の内部をみれば、この細胞自体(もしくはその細胞の親)が昔にあの刺激を受けた経験があったとみなすことができる。
それを目印に細胞は運命を決めていく。


つまり、細胞は刺激の経験を覚えていて、その経験をもとに自分がなるべき運命を決めている。
これを細胞の記憶である。

でも、細胞が記憶しているとは、なんか変な話に聞こえてしまうのはなぜだろう。

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