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読書感想文を書きます。分厚い専門書よりはライトな新書、重厚な長編よりひとくちサイズの短編が好き。

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    読んだ本などの感想を備忘録的に記します。オールジャンル(予定)

最近の記事

「量子サッカー」とは「キバハゲデュエル」である。【『しあわせの理由』(グレッグ・イーガン)ネタバレ有感想】

はじめに グレッグ・イーガン(Greg Egan)はオーストラリア出身のSF作家で、『ディアスポラ』や『順列都市』などハードSFの作品で知られている。今回はそのイーガンの短編集『しあわせの理由』の各短編の感想記事だ。  SF短編小説のオールタイムベストにも選ばれるような短編集だけはあり、収録されている作品はどれも珠玉のものばかり。「SF小説」というフォーマットで「愛」や「幸福」、「死」といった人間存在の根源的な問いに対してアプローチしていくような、イーガンの深く鋭い洞察に触れ

    • 『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』

      人間は愚かである 「30%オフ!」の文字に釣られて余計な買い物をしてしまったことはないだろうか?夏休みの宿題を慌てて最終日に片付ける羽目になったことは?マッチングアプリのプロフィールがいつも実物よりほんの少しだけ魅力的に書かれるのはなぜ?  今挙げた例はどれも私自ら経験したことだ(最後の例に関しては、プロフィールでは45kgとあったのに実際に会ったら70kgだったから「ほんの少し」の範囲を「ほんの少し」逸脱しているかもしれない)。こういった事例は日常にありふれていて「人間って

      • ネタバレ:女王陛下は別に出てきません。『女王陛下の航宙艦』【読書メモ】

        あらすじ 人類が宇宙まで生存圏を拡げていった未来。地球上の国家はさまざまな惑星に植民地を樹立し、それぞれの領土を拡張していった。  ある日、人類の辺境植民惑星が異星人により壊滅させられたという衝撃のニュースが報じられる。さらに悪いことに、奪還に向け出撃した最新鋭の艦隊も異星人艦隊の前に全滅してしまった。  そんな中、建造から70年が経過し、もはや骨董品同然の英国航宙軍航宙母艦"アーク・ロイヤル"とその老艦長"セオドア・スミス"に対し下された特殊任務とは……。 良いところ・ツ

        • 「自由」と「希望」の紡ぐ圧倒的カタルシス。『ショーシャンクの空に』【映画感想文】

          ※ネタバレ注意 あらすじ 有能な銀行員であったアンドリュー・デュフレーン(アンディ)は、無実の罪でショーシャンク刑務所に投獄される。罪状は妻とその愛人の殺害で、刑期は終身刑。  刑務所は劣悪な環境だったが、囚人・看守との交流や苦難を経験しながら、自分の信念と希望を失わずに生きていく。アンディは刑務所内で財務や図書館の仕事を担当し、知性と機転で多くの人々から尊敬されるようになる。一方、彼の親友で刑務所の『調達屋』レッドは、刑務所の中で生きるしかない人生に不安を抱えていた。  

        • 「量子サッカー」とは「キバハゲデュエル」である。【『しあわせの理由』(グレッグ・イーガン)ネタバレ有感想】

        • 『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』

        • ネタバレ:女王陛下は別に出てきません。『女王陛下の航宙艦』【読書メモ】

        • 「自由」と「希望」の紡ぐ圧倒的カタルシス。『ショーシャンクの空に』【映画感想文】

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          9本

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          受け入れるのか、闘うのか。『火星の人/オデッセイ』【読書×映画メモ】

          あらすじ NASAの有人火星探索ミッション「アレス3」は、猛烈な嵐により開始6日目での中止を余儀なくされる。しかし火星から脱出する際、強風により破損したアンテナの一部がクルーの一人であるマーク・アトニーを直撃。そのまま嵐の中に吹き飛ばされてしまう。彼の生存は絶望的であり、すぐにでも出発しなければ全員の命が危険な状況。苦渋の決断の末、アレス3のクルーはアトニーを置いて火星を離脱する。  しかしアトニーは奇跡的に一命をとりとめていた!火星に一人取り残されたアトニーは生存を模索する

          受け入れるのか、闘うのか。『火星の人/オデッセイ』【読書×映画メモ】

          作者が1番面白い。「逆境ナイン」(1話目前半)

           マンガワンで「逆境ナイン」が読める。3月18日までだけれど。  私は結構な島本のファンで、「燃えよペン」「吼えろペン」「新吼えろペン」「アオイホノオ」のシリーズがとても好きだ。一時期、これを読むためだけに漫画喫茶に足繁く通っていた。  しかし他のシリーズはそこまできちんと読んだことがなかった。「逆境ナイン」も読んだような……読んでないような……というあやふやな記憶しかなかった。  読んでいて、島本和彦ってテンポが独特だよね、と思う。たとえば闘志が校長に殴られるシーン。普

          作者が1番面白い。「逆境ナイン」(1話目前半)

          一国の経済を建て直したハイパーメンタルつよつよおじさん『ルワンダ中央銀行総裁日記』【読書メモ】

          基本情報題名:ルワンダ中央銀行総裁日記 著者:服部正也。1947年に日本銀行に入社。1965年から71年にかけてルワンダ中央銀行総裁を務めた経験から本書を執筆し、本書により72年に毎日出版文化賞を受賞。その後世界銀行副総裁などを務め、99年に没する。 出版:2009年11月25日(増補版)初版は1972年 発行:株式会社中央公論新社 読書の時期 開始:2023/02/07 終了:2023/02/09 感想・評価など 大変話題になった本なので、すでにたくさん書評が出回ってい

          一国の経済を建て直したハイパーメンタルつよつよおじさん『ルワンダ中央銀行総裁日記』【読書メモ】

          プロパガンダ本に見えてプロパガンダ本じゃなくてちょっとプロパガンダ本な本『実子誘拐』【読書メモ】

          基本情報題名:実子誘拐 副題:「子供の連れ去り問題」――日本は世界から拉致大国と呼ばれている 編者:はすみとしこ。ホワイトプロパガンダ漫画家。著書に『そうだ 難民しよう!』(青林社)など。 出版:2020/12/10 発行:株式会社ワニブックス 読書の時期 開始:2023/02/03 終了:2023/02/03 感想・評価など※個人の見解強めです。 実子誘拐問題とは  実子誘拐問題について簡単に解説すると、離婚後の親権獲得を有利に進めるために、もう一方の親の同意なしに

          プロパガンダ本に見えてプロパガンダ本じゃなくてちょっとプロパガンダ本な本『実子誘拐』【読書メモ】

          読書メモ:驚きの英国史

          基本情報題名:驚きの英国史 副題:なし 著者:コリン・ジョイス(Colin Joyce)。日本で高校教師、記者などを経てフリージャーナリストに。オックスフォード大学で古代史と近代史を専攻。 訳者:森田浩之。ジャーナリスト。 出版:2012/6/10 発行:NHK出版 読書の時期 開始:2023/01/14 終了:2023/01/15 感想・評価など概要  「驚きの英国史」よりは「なるほどの英国史」くらいがちょうどいいのかもしれないが、それではまったく魅力に欠けるタイトル

          読書メモ:驚きの英国史

          読書メモ:「帝国(原題: A short introduction EMPIRE)」

          基本情報題名:帝国(A short introduction EMPIRE) 副題:なし シリーズ:《一冊でわかる》シリーズ 著者:スティーブン・ハウ(Stephen Howe)。専門は政治学・現代史。 訳者:見市雅俊。専門は近代イギリス史。 出版:2003/12 発行:岩波書店 ページ数:205ページ 読書の時期:2023/01/11(1日) 感想・評価感想  「帝国」という視点で古今東西の帝国を取り上げ、それが「何なのか」「何をもたらしたか」を俯瞰的に捉える世界史本。

          読書メモ:「帝国(原題: A short introduction EMPIRE)」