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傾聴の難しさ

 傾聴の勉強をしているという方とお話をしていて、こんなことをおっしゃいました。

「勉強しているとおりに、怒っている相手に対して、一生懸命に傾聴したんだけど、かえってその怒りがどんどん増して行っちゃって。まさに火に油を注ぐような状況だった。」

「傾聴」の誤解

 「傾聴」ってよく聞きますね!最近特に!
検索したら、〜熱心にきくこと〜 って書いてありました。

「傾聴」が大切って誰もが分かっていますが、これ、結構深くて・・・
みなさんも経験ないですか?
 こちらは聞いているんですが、相手から「全然聞いてない」って言われたりすることって。

これ、すごく大切なことだって思っていて、

「行為」としては、聞いているんですけど、
相手が聞いてくれてるって思えない限り、聞いていないことになるんですよね。

なんだか複雑な表現になってますが・・・

要は、「話している側が、聞いてくれてる」って思うことが必要なんですね。


「聞いてくれている」って、どんな状態?

 では、相手が聞いてくれていると思うときって、どういう状態なんでしょうか?

ここでまた一つ例を挙げてみますね。

 私がまだ20代のときの話で、
 私も経験を積み、少しずつ、責任ある立場を任されるようになった頃、(今思えば、誰もが通る道なんでしょうけど、)やることなすことうまく行かないときがあって、気持ちがいっぱいいっぱいになり、ある上司に、「わー」とひたすら私が一方的に怒りの感情をぶつけたことがありました。

そのときに、その上司の方が言った、たった一言で私は救われました。

「おまえ一人に、苦労かけちゃってたんだな」

 当時の私は、自分ひとりでがんばっている。なんて思っていたんです。みんな俺の苦労なんて知らずに、好き勝手言いやがってって思ってたんです。

 部下や後輩への指導方法や関わり方、お客様へのアプローチの仕方、企画書の作り方、などなど。挙げたらきりがないほどの、「うまく行かない」ことへの助言なんていらないんです。
 自分の気持を理解してほしかったし、自分はひとりじゃないことを知っていたかったんです。

 「おまえ一人に、苦労かけちゃってたんだな」は、
その上司に対する私の不満を、真正面から受け止めてくれた一言だったんです。
“おまえ一人に苦労かけちゃってゴメンな。おまえがそんなにつらい思いをしていたなんて知らなかった”
“おまえが人一倍がんばってることは、しっかり分かってるよ”
 そんな思いを感じることができた一言でした。

 言葉を聞くことは大切です。
 感情を聞くことも、もちろん大切です。

 そして、とっても大切なことは、関係性の中で、受け止めることです。

上司と部下
カウンセラーとクライアント
友人、家族、恋人関係
仕事上の取引相手、お客様とお店

相手とは、どういう立場関係で会話をしているのか。

背景と経緯

 冒頭、火に油を注いでしまったというお話に戻りますね。

●背景
 ある組織では、一年に一度、総会を開くことになっている。
 その総会では、一年間の活動や収支報告から、翌年度の活動方針や収支予算などの議案の発表がある。
 その総会には、会員が出席し、会員は、議案に対して、質問をしたり、賛成・反対の議決権がある。
 会員本人が出席できない場合には、委任状を持って出席扱いにすることが出来る。
 今年の総会は、新型コロナウィルス感染予防のため、縮小版で行なうことにした。
(*仮に、私が話を聞いた、怒らせてしまったという人(「油を注ぐような状態だったよ」と話した人)をAさんとし、怒った人をBさんと呼びます)
 Aさんは、運営委員長(運営にかかり責任を持っている立場の人)
 Bさんは、組織の監事(組織が適切に運営されるよう管理監督し、必要であれば助言をする立場の人)

●経緯
 Aさんは、総会を縮小する形で行なうに当たり、事前に色々な立場の方に相談し、監事であるBさんにももちろん相談をして、Bさんからも了承を得ていたため、今回は、議長(会長)、司会(運営委員長のAさん)、議事録作成人(事務局)、議事録署名人(会員)の4名のみで開催することにしました。Bさんに対しては、議案内容について、事前に説明をして、Bさんからも意見をいただき、賛成の意思を受けていたため、今回は、この4名で総会を開催しますので、(Bさんは高齢でもあるので)今回は、参加されなくても大丈夫ですよと、好意として伝えましたが、Bさんは、なぜ自分をのけ者にするのか?自分をのけ者にして、なにか企んでいるのではないか?と、激昂してしまいました。

 このように、激昂したBさんに対し、誤解であることをいくら説明しても理解してもらえず、Aさんは、自分が学んでいる「傾聴」の技法を用いて、

「Bさんは、自分が呼ばれていないことに怒りを感じているんですね」
「自分が呼ばれていない理由は、なにか企んでいると思っているからなんですね」

などの、受け止めを伝えたが、一向に収まらず、むしろ怒りが膨れ上がってしまい、最終的には、Bさんが電話を切ってしまった。ということでした。

考察

*正解か間違いということではありません

 このBさんの怒りは、Aさんに向いていました。Bさんは、自分の考えを整理したいのではなかったのかもしれません。むしろ、自分の怒りをAさんにぶつけて、Aさんに理解してもらいたかったのかもしれません。

「私は、監事として会として非常に重要な人間であり、その責任を果たしたいと思っている」
「私という存在を、尊重してほしい」

 そのようなことをBさんが、ちゃんと理解してもらえていると感じない限り、Aさんがどんな説明をしても聞き入れてもらえないのかもしれません。

まとめ

 いろいろな場面で感じることですが、人の「重要感」ってすごく大切だって思うんです。

「あなたは大切な存在です」

 多くの場合、この何気ないことが感じられずに、あたかも自分がバカにされていると感じてしまい、怒りの感情が産まれて、衝突が起きてしまう。

 傾聴にとって大切なことは、相手の心の中までしっかり受け止めることなのではないでしょうか。

 傾聴で、すべての事がうまくいくわけではありません。
 傾聴はあくまで、人と人とが対するときの、相手への姿勢です。

 まず自分自身が、このことを日々意識していかなきゃいけませんね。

長文お付き合いいただきまして、ありがとうございました!

2020年8月1日(土)
菅原 琢也

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