おでこ出しワンレン美人になれば愛されると思っていた頃の話

私は昔、ある人に恋をしていました。

それは私の心の中の話。だから現実に何も起きたことはありません。
ただ、心の中はいつだって暴れていました。そんな昔話。

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どうしたら振り向いてもらえる?

作業中も買い物中も、何をしている時も漠然と考えてしまう。自分が世間で言うところの「恋愛体質」という自覚はありました。仕事柄もあり、なんでも考え始めると収拾がつかないところまでいく体質なのです。それは私の長所でもあり、短所でもあります。

当時はいつだって話もできるし、その人から私を頼りにしてくれる時だってある。それぐらいの距離感で十分心地よかった。でも、その先を求めてしまう自分がいたことも事実。

「きっと…これが恋…。」(分かる人には分かる)

「人は思っているよりも他人を見ていない」とよく言いますが、それは特別な関心がないときの話であって、私はその人の目線によく気がつくようになっていました。

人は意外と他人をよく見ている

その人の好みは「ワンレングス(段を入れていない)」「前髪を作らない」「長髪のツヤ髪」のスラッとした品のある髪型の女性でした。その目が誰かを追うたびに、私も追ってしまう。まるで何かを確認するように。その目線の先には、確かに私も見惚れるような知性を感じる風体。その髪型になるべくしてなったような美しさ。

具体的に確認したことは無くても、有名人や好きなタイプの話題になると必ず名前が上がる、ツヤのある長髪が特徴のおでこが綺麗な女性たち。私は次第に間違った確信を持つようになりました。

同じ髪型にすれば「何か」あるかも?

実はこれが初めてではないのです。

私はいつも気になった人の好みが「その髪型」なのです。実際に以前も同じような思考になり、それをキッカケにお付き合いに繋げることに成功したこともあります。それはもっと前の昔話ですが、素敵な思い出のひとつ。後悔はありません。私の人生の宝物です。

そのこともあり、私は人を好きになるたびに同じ髪型を繰り返すようになっていました。また上手くいくとも限らないのに。

髪型が全てではないことも、十分すぎるほど学んできたのに。それ以上に魅力的なものを身につければいいと分かっているのに。ただのタイミングかもしれないのに。(ここで一旦深呼吸。)

それでも私は自分のお気に入りの前髪を横に流して、相手の好きそうな服装をまとい、その人のさりげない感想を自然と待ってしまうのです。きっと「どうしたの〜?」と、いつもの調子でからかってくれると信じて。

「あれ?趣味変わったの?」
「なんだか、らしくないよ。」

思っていなかった言葉がいつも調子と共に返ってきた。
いや、本当は分かっていた。昔と違って、いい大人にもなって、そんな見せかけでどうにかなることではないことも。その人は、私の「人柄」を好いて今までの距離感を楽しんでいてくれていたことも。

その時から急に恥ずかしくなった。

今までの自分の行動を振り返ると、人を好きになるたびに「自分らしさ」を見失っていたのです。大好きな服装に合う、大好きな髪型。それに合わせたネイルの色を選ぶ楽しさ。そんな普段の私の楽しみをなかったことにして、勝手に相手に合わせすぎてしまった浅はかな自分。いつもの自分は何処へ。「恋する乙女」ってそんな醜いものだったかなぁ。

思い込みを断ち切る時が来た

その人とは今も素敵な友達としていられています。というのも、きっと私が大事なことに気づいたから。相手の気を惹くために、今までの自分に逆らったような行動をしなくても、相手は私の良いところをすでに認めてくれていたから。恥ずかしい私の紆余曲折を伝えたら、笑ってくれました。

「ごめんね。気づけなくて。」

なんだか、その言葉でスッキリできたのです。

いつもの前髪を整える用の髪切りバサミを片手に、私は強いつもりで脆くもある、少し不安な意志を抱きながら、綺麗な前髪を作ったのでした。これまでの自分も認め、今度こそ本当の自分を見失わないための決意の断髪。
(ちゃんとあとで、美容師さんに整えてもらいました)

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そんな何も起きなかったけれど、私の中で起きた大切な昔話。

今は自分がなりたい自分を好きになって、そんな自分を好いてくれる人がいたら…が理想。あくまで理想。それに、そもそも美人タイプではないし?でも自信あることはいっぱいある。だからこそ頑張らなきゃ。

また暴走しそうになったらこの記事を読み返そう。繰り返さないように。

その為の自戒を込めた昔話、なんてね。

では、また!

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