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JICA隊員の球磨KUMAさんぽ#5〜田舎のホスピタリティに触れる新しい旅のカタチ「農泊」〜

JICA海外協力隊の派遣前の実習プログラムで人吉球磨に滞在中のSuuuuusanです。

#5の今回は人吉球磨で楽しめる宿泊のカタチ、農泊をご紹介します。

農村地域のお宅にホームステイのような形で宿泊し、新鮮な食材を利用した美味しいご飯をいただき、現地の生活を体験する「農泊」。
特に都会に住む人にとって、その生活はまるで田舎のおばあちゃんの家に泊る時のような、懐かしい気持ちを呼び起こす非日常となります。

本記事では農泊ってどんなものなのか、から解説しつつ、人吉球磨の農泊の魅力に迫ります。


農泊とは?

言葉の意味としては、農林水産省が全国的に押し進めている農村体験型旅行のことです。元々は長期バカンスを楽しむことの多いヨーロッパ諸国で普及した、「グリーンツーリズム」という概念をもとに日本でできた言葉です。

◆農泊とは・・・
「農山漁村滞在型旅行」のこと。旅行者にその土地の魅力とともに、日本ならではの伝統的な生活体験や農村地域の人々との交流を味わってもらいます。つまり「農泊」=農山漁村体験+宿泊+食事!

「農泊」は、農林水産省の商標です。

「くまもと農泊ガイド」より抜粋

ちなみに、人吉球磨には農家さんのお家に泊まる「農家民泊」と非農家だけれど農村にあるお宅に泊まる「農村民泊」があり、どちらも農泊として扱われます。

旅人にとっての農泊の魅力

「鶴瓶の家族に乾杯」という番組をご存知でしょうか?
鶴瓶さんとゲストが旅人として各地を訪れ、地元の人々と触れ合いながら旅をしていく番組です。

農泊では、まさにあんな体験ができます。農村漁村の人の食卓にお邪魔して、そこで取れる食材を使った美味しいご飯をいただきながら、そこで生まれるコミュニケーションを楽しむという旅のスタイルなのです。

準備や片付けを手伝いながら、お母さんと食卓を囲み、楽しく会話しながら飲む!

田舎で土や野菜に触れることによるリラックス効果も高いと感じます。都会の仕事に疲れて、のんびりしたくて来たと仰るゲストもよく訪れています。

個人的には、田舎がない都会人にもおすすめしたいところです。農泊に行くと、密接にその家庭と関わることになるので、その土地のお父ちゃん、お母ちゃんができます。農泊先が新たなふるさとになるのです。

また、農泊をやっているご家庭は地域づくりに関心が高く、地域にコネクションがたくさんあるような方が多いため、移住先を探すのにもいい方法だと思います。

景色の良い公園に朝ごはんを持って行って食べる農泊もある。外で飲むお味噌汁って最高よ

期待される受け入れ側への効果

農泊を外部の人を呼ぶ観光資源として推進することで、地方農村が抱える課題をたくさん解決する良い効果がたくさんあると考えられています。

【期待される取組の効果】
・農家所得の向上
・地域所得の向上
・移住者の増加
・遊休資源の利活⽤
・観光客の増加
・インバウンドの増加

農林⽔産省農村振興局
「農泊の推進について.pdf」より抜粋

上記に関するわかりやすいイラストが農水省のウェブサイトに載っていたのでお借りします。これを見るとわかるように、農泊は日本の農山漁村が元気になる一つのヒントになるのではないかと思います。

農林⽔産省農村振興局「農泊の推進について.pdf」より抜粋

人吉球磨での農泊の魅力

人吉球磨には、10市町村ありますが、全ての自治体に一つ以上の農泊があり、農泊内でネットワークができています。それぞれのご家庭に特色があって、農泊を泊まり歩く旅も面白そう!

今営業している4つの農泊をピックアップしてスライドでご紹介します。
ぜひ写真と共に眺めてみてください!

平岩の和ちゃん家(ぎゃー)

ゆっくりサボッテン 馬場のてっちゃんち

ゆうがの杜

農家の宿 茶乃実

以上、人吉球磨にある4つの農泊をご紹介しました。
どこも素敵でしょう!
どうですか、もう泊まってみたくなっていませんか!

人吉球磨で農泊したい!と思ったら

農泊の推進団体である「隠れ里ひとくまツーリズム」のウェブサイトで情報収集ができます。
気になる農泊先に電話で問い合わせることをおすすめします。

また、下記のステイジャパンというウェブサイトからオンライン予約が可能な農泊先もあります。
※オンライン予約が可能かどうかは、農泊先のお父さん・お母さんのITスキルにもよります

平岩の和ちゃん家では、毎年5月頭に素晴らしい藤棚の下でお花見を開催。

農泊の課題

農泊には素晴らしい部分もたくさんある一方で、まだまだ課題もたくさんあるように見えます。

営業キャパの問題

あんまりたくさん来られても困る、という受け入れ側の思いもあります。
例えば農家さんの場合、本業の農業が忙しい時期にはとても農泊の受け入れなんてできません。そうでなくても、一般のお家に泊まる場合は特に、日々の暮らしの中で毎日の受け入れは不可能です。

あくまで農泊は副業として進める必要があり、バランスが難しいのです。

withコロナでの楽しみ方

農泊の方に伺うと、「農泊は3密を楽しむ空間」という言葉がよく聞かれます。存分に農泊の魅力を楽しむにはどうしても、一緒に食卓を囲みたいところ。感染クラスターの元になりかねません。
また、農家さんの家を抗菌仕様にしようと言っても、普通に暮らしている家を変えるのがそう簡単でないことは想像がつきます。

そして、後でも触れますが、農泊経営者の高齢化問題もあります。また高齢者に影響が強いようなウイルスが流行ったりなどすれば、都会から持ち込むわけにもいきませんから農泊は閉めざるを得ないでしょう。

後継者がいない

せっかく良い農泊ができているけれど、後継ぎがいないお家が多いです。10年後に続いていくプロジェクトなのかは、正直なところ、私には見えていません。
後継ぎがいないという問題は農泊だけでなく、農業全体に言えるのかもしれません。中でも農泊に関しては、うまくビジネス化できておらず、やりがいや思いでやっていて持続性がないところが多いのも確か。かかるコストに比べて価格が安すぎる(1泊6000円台・2食付きというところもある)というのも問題かも。

人吉球磨の農泊も、高齢化の波を受けています。お母さん・お父さんが体調が悪く、入院などされていて、農泊の受け入れができていないところも出始めています。

認知度の低さ

農家への認知度の低さと、旅人への認知度の低さがあります。

・農家さんへの認知度の低さについて
グリーンツーリズムというと、ちょっと宗教っぽく聞こえてしまって農家さんに伝わりづらいという面もあります。利益をちゃんと取るモデルを作って、ビジネスとして普及する必要はありそうです。

・旅人への認知度の低さについて
旅の選択肢として、農泊というものがあること自体、そこまで有名ではないでしょう。実際、私も旅には相当のアンテナを張っていたつもりでしたが、こんな素敵な取り組みを全く知りませんでした。

そこで、自分の周りの認知度と、みんなが正直どう思うのかが気になり、調査してみることにしました。

若者の認知度調査

TwitterとInstagramのアンケート機能を利用してわたしの知り合いを中心に、認知度を調査しました。

SNSでの調査結果

回答してくれた合計82名の中で、農泊という言葉を知らない人がやっぱり5割を超えました。
私のフォロワーは20~30代の若者中心ですが、中には旅好きな人も多いのに、認知度はかなり低いと思われます。

農泊自体を知っている人はいましたが、観光・農業・一次産業関連の仕事についている人か、農学を勉強していた人に限られた印象でした。

Twitterアンケート内容

Instagram アンケート内容

認知度調査・全50票

Twitter・Instagram 記述回答の抜粋はこちら↓

Q: どこでどう知ったか?
・研究室の活動でアグリツーリズムを調査していたとき
・電車の広告で
・ゼミ合宿
・会社の研修の一環で長崎のアスパラ農家に泊まって農作業をした
・一次産業関連の会社で
・農業に関わる手段がないかなあと調べていたとき
Q: やってみたいと思うか
・泊まりたい
・人生経験としてやってみたい
・都会の生活に疲れたら行きたくなりそう
・たぶんやらないと思います

旅人の認知度を上げるためには?

とっても低い旅人側の認知度を上げていくには、メディアに取り上げてもらうなど、積極的に発信することはもちろん、泊まる施設やウェブサイトを最低限整備して、若い人が来やすい土壌を作ることは必要なのではないかと思います。

なぜ若者を重視したいかというと、若者の方が農村のおじいちゃんおばあちゃんへの溶け込みが早いことや、SNSなどを利用した発信力に期待したいからです。実際、農村漁村に足りていないのは圧倒的に若者。見にいくだけでも面白がってくれると思うのです。

体験自体は素晴らしいので、農泊というビジネスを持続可能な形に整備すること。そしてマーケティングも意識して情報発信していくこと。このあたりが農泊推進の肝となりそうです。

IT隊員からすると、人吉球磨の農泊のウェブサイトもまだまだ、改善の余地があります。改善するにしても、どれだけお金をかけられるか、どれだけ運用する能力があるか、という観点で検討が必要かとは思います。また、後継者がいない今、どういった形でどのくらいの人を呼びたいかということは明らかにしないといけません。

3ヶ月様子を見てきた感想としては、少なくとも来たい人がオンラインで予約・問い合わせくらいはできるようにはしたほうが、裾野も広がり、認知度アップにもつながるのではないか、と感じました。


終わりに

長々と書きましたが、旅人からすると農泊ってとても楽しいよ!ということを最後に伝えたいと思います。
旅先での地元の人とのふれあいやつながりが、非日常として、新鮮なのに懐かしい、とても貴重な体験になります。

私はこの研修中、農泊にどっぷりと浸かった3ヶ月でしたが、そのおかげで人吉が第二のふるさとになりました。関係人口として、協力隊から戻って来た後も積極的に関わっていきたいと思っています。

今、残念ながら、コロナ禍もあり、農泊の情報は多く出回っているわけではありません。
でも、頑張っている農泊はあります!
ぜひ、自分から情報をとりに行って、貴重な素晴らしい農泊体験をしていただけますと幸いです。

馬場のてっちゃんちのお父さん・お母さんと他ゲストさんたちと
農泊の魅力はなんといっても美味しいご飯!お母さんたちの腕の見せ所!
こんな綺麗なトマトも! ご近所さんがトマト農家なので、その日に採れたものを使います。


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