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夏と秋の間。探しものはハイスミスの日記。

 夏のような日差しの日々が続いている。
暦の上では秋だけど、緑が目に眩しくて、夏とも秋とも言えない季節になると観返したくなる映画がある。
『リプリー』(原題『The Talented Mr.Ripley 』)という1999年のアメリカ映画である。

これは1960年にアランドロン主演で有名な『太陽がいっぱい』のリメイク作品で、孤独で貧しい青年トム・リプリーが、富豪の息子に近づいて殺し、彼になりすますお話である。

両作ともすごく面白かった。
けれどわたしは、アランドロンが演じた筋骨隆々の美男子で野心家のリプリーよりも、マットデイモンが演じたおとなしくて冴えない根暗眼鏡のリプリーが、次第に周囲を取り込んでいく様子が不気味で印象に残っている。

どことなく郷愁を感じるイタリアの島の風景の美しさも相まって、秋だけど暑い季節の今頃に無性に観たくなる。

この映画をDVDで初めて観た直後の2010年の9月、沖縄の離島に行った。
友人10人くらいで、夏休みに。
Twitterが日本で普及し話題になっていた頃だった。
(でも流行に疎いわたしたちのことだったから、周囲ではもっと早くに話題になっていたのかもしれない。)

「呟くって、何を?何のために?」
「さあ…歩いてるなう。とか、かな」

焼け焦げるような強い日差しの中、申し訳程度の日除けにしかならないトタン屋根の下で、作中にリプリーが歌う「My Funny Valentine」を聴きながらそんなどうでもいい会話をしたことを覚えている。

 閑話休題。

 リプリーの原作者のパトリシア・ハイスミスの本で探しているものがある。
小説にはなっていないけれど、作品のイメージソースになった私生活が日記としてまとめられたようなもの。
5年くらい前にその本のことを知ったけれど日本語訳になっておらず、辞書を引き引き、読むしかないか。でも挫折せずに最後まで読めるかしらと逡巡した後、いざ検索しようにも肝心のその原題を忘れてしまっていた。

えーーん。と思いつつ、ハイスミスの名前と自伝小説、と検索をかけると、なんとも素晴らしく新鮮な情報が手に入った。

どうやら今年の11月に、ハイスミスのドキュメンタリー映画が日本でも公開されるらしい。
わたしが探していた、彼女が私生活を赤裸々に綴った日記をベースに制作されている模様。

やったーーー!!!!
ずっと読みたかったんだ。こんなに早く映画になるなんてハッピーすぎる。
もしかしたらこれを機に和訳された日記が出版されるかもしれない。
もう今から11月が待ち遠しい。

ハイスミスの世界が好きな方はぜひお出かけください。
ていうか、よければぜひわたしとお友達になってください。

noteでお友達募集をかけるのもどうかと思うが、正直な気持ちです。




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