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【小説】自然と農

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森の中に暮らす家庭菜園初心者の主人公が、雄大な自然と、時々愉快な仲間たちと送る、ちょっぴりお洒落で心温まる日々の記録。
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#日記のようなもの

自然になる

自然になる

風に揺れる草花。

甘い香りのジャスミンと、
陽光に揺らぐ影。

ガラス越しに臨むいつもの風景。

グラスに注がれた麦茶の水面が揺らいで、
全てのものは動揺しているのだと、
再認識する。

終始一定のものなど無い。

全て心地良く揺れている、
みな大海の上。

波に揺られているだけ、
決められるのは方向性のみ。

波を搔き分け全力で泳げば、
疲れるのは必至。

肩の力を抜いてプカプカ漂えたら、

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良い兆し

良い兆し

太陽が山の奥へ沈み始めると、
急に風が強まって、
幾分暑さが和らぐ。

風の吹き荒ぶバックガーデンで、
懸命に足を踏みしめて、
荒れ放題のスイカ畑とサツマイモ畑を手入れする。

ここ数日の降雨で草勢凄まじく、
鎌を振る僕の右腕を砕いた。

しかし、
スイカ畑に時折顔を覗かせる小さなスイカの実が、
僕の心を勇気づけた。

風はいよいよ強く丘を吹き下ろすが、
しかし、
涼しいのは何よりである。

平生

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