AI時代の泳ぎ方①システム2を働かせよ
自分の頭で考えるって何だ?
「自分の頭で考えよ」という言葉は昔からよく耳にしますね。
この言葉の重要性は、現代社会で益々高まっているように感じます。
「でも始終考えてるって疲れるし、意外に大変なんだよね~」と思うのは私だけではないでしょう。
考えるという行為は意外に大変
この実感は実は正しいし、理論的に裏付けられています。
行動経済学のベースになっている二重過程理論とは
行動経済学のベースになっている二重過程理論(dual process theory)というのがあります。
それによると、人間の思考には、システム1、システム2という2つの癖があります。(ダニエル・カールマン著『Thinking, Fast & Slow』より)
「システム1」は直感的な思考。つまり瞬間的に感じたり、反応したりする脳の機能です。
例えば、空を見上げて、「これから雨になりそうだな。傘は持ってたかな?」と反応したリ、朝、向こうから上司がやってくるのを見て、脳がこれは挨拶すべきと瞬時に判断し、「おはようございます!」と声に出すような現象です。
「システム2」は論理思考。つまり、より合理的で論理的な思考を指し、意識的で計算された判断を下します。
例えば、友人から「今度の投票に行く?」と尋ねられた時、システム1は「用事もあるし、面倒なので行かないかな」と促反応しますが、「待てよ。僕自身は民主主義の根幹である投票は大事と思っている人に見られたいな」とシステム2が思考し、「うん、その日は結構忙しいんだけど、投票は大事だからできるだけ行こうと思っているよ」と曖昧に答えるような現象です。
このことから、システム1は「速い思考」、システム2は「遅い思考」と言われます。
また、システム1の直感思考は、認知バイアスを起こしやすいことも証明されています。
例えば、初めて会った人を容姿と言動から「この人は多分こういうタイプの人だな」と即断してしまうとか、深夜の通販番組で商品のいい所を根掘り葉掘り聞かされた挙句、「これは今自分に必要な商品だ」と思わず買ってしまったが実際はあまり必要なかったという事例などです。
システム1は、日常不都合を生じることは少ないものの、このような認知バイアスも多く含んでいるので、歪んだ意思決定につながりやすいのは確かですね。
ここまで読めば、皆さん、自分はそういうバイアスができるだけないようにシステム2を働かせるようにしようと心がけるようと思うことでしょう。私もそうです。
システム2を働かせるのは疲れる
ところが、システム2を働かせるにはそれなりの努力が必要なのです。
何故なら、他の動物と違って人間は脳で大量のエネルギーを消費します。一日の総エネルギー量の20%~30%を消費するのです。なので、生命維持の観点から、エネルギーを枯渇させないように、脳は省エネモードを優先するように建付けされています。
そして、この省エネモードの脳の働きこそがシステム1なのです。
一方、システム2が働く時はエネルギー総動員モードになります。
どういう時に働くかと言うと、より複雑な問題を処理したり、今までにない新しい問題に直面したり、相手を説得したり、納得させたりするシチュエーションなどです。
今までの記憶を呼び戻しながら、現状をより幅広い観点から見て、そこから目的に対して論理的に組み立て直したりするので、遅い思考になるわけですね。
で、脳は全体の生命エネルギーが枯渇しないように、できるだけ省エネモードで働くようになっています。言い換えれば、最小努力の法則が適用されているのです。
システム1は大変優れたシステムだと言えます。例えば、スーパーコンピューターに比べ、人の脳は10000倍も省エネだと言われています。
但し、システム1は先程の弊害、認知バイアスの問題もあるのも事実です。つまり、思考の怠け癖があるということですね。
ですから、意識的にシステム2を使えと習慣づけるのは、結構な努力が必要なのです。
しかし、この思考は前述の認知バイアスも少なくなるし、もっと言うと、人類の科学や文明の基礎となる思考法でもあるわけです。
AIは100%システム2
話は変わりますが、AIの思考法は、完全にシステム2ですね。
あらゆる事象や思考を統計学的に処理して、論理的、合目的的に回答を出してきます。
これから本格的なAI時代に突入するわけですが、そんな時代を私たちはどう泳いでいったらいいのでしょうか?
システム2はAIに任せ、自分はシステム1優位の世界でお気楽に生きていけばいいのでしょうか。
そういう考え方もあるでしょう。
AIの入った将棋界は劇的に変化
一方で、一足先にAIが人間の知能を越えた将棋界で何が起っているのかと言うと、定石(=昔から研究されてきて最善とされるゲームの進め方)の猛烈な進化です。
今まで最善とされてきたものがことごとく覆され、新しくさらによいゲームの勝ち方が生まれています。
で、棋士たちはどう身を処しているかと言うと、AIが示すシミュレーション(=最短手数で勝つ筋道)を日々勉強しながら自分の血肉とし、なおかつ自分らしく戦う要素(=独自の思考)を加味しながら、日々精進を続けています。
つまり、そこには決してAIにはかなわないという諦めはなく、いかにAIを活用して自分の能力を高めていくかという発想のチェンジを行っているのです。
お互いにシステム2を総動員しながらそのパフォーマンスがぐんぐん上がっている状態ですね。
AIと人間の共創が起っている
ここから読み取れるのは、AI時代はAIと人間の役割分担、それぞれの特性を極めるという発想もさることながら、自分の成長や人類の発展に向けて、「AIと人間の共創」というベクトルに向かうということです。
これはビジネス界への大きな示唆になりますね。
すなわち、システム1、システム2といった人間の思考のクセを認識しつつも、人間はシステム2の思考法を意識的に増やし、AIを味方につけながら、身を処していくという方向性が見えるのではないでしょうか。
それでは、システム2をもっと働かせるにはどうしたらいいのでしょうか?
そこでAIと共創するやりかたはどうすればいいのでしょうか?。
このブログでは、脳のシステム2を意識的に働かせるという観点から、AIと共創する方法論を考えていきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?