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組織として成功するリーダーシップ

ただ命令するだけ、命令通りにできないメンバーや部下を叱責するだけ。
でも、実際に本人にやらせてみたら実はたいしたことができない。

そういうリーダーシップをとっている人や企業は案外多いものです。

なぜなら時代は常に変化し、移りゆくものですから、リーダーが実務担当者だった時代の技術が今も未来もそのまま活かされるとは限らず、自分の時代にはなかった技術を自身が体現者となろうと磨かなくなってしまった中で、メンバーや部下に一方的に押し付けようとするためです。

しかもメンバーや部下にとっては周囲に体現者が一人もいない状況の中、手探りで進めるしかない状態だとリーダーが望むレベルのものを、望むスピード・期限のうちに実現することは非常に厳しく、結果として多くのメンバーや部下が"いわれもない叱責"を受けなければならなくなっているのです。

リーダー自身も新しいものを受け入れ、身につけようと思ったらそれなりの時間を要するはずなのに、自分のことは全く省みずにメンバーや部下に一方的に押し付ける…こうなってくると、まともな信頼関係も生まれません。

もし、リーダー自身がその場で体現し、参考を指し示してあげられればメンバーや部下は手探りの中、不安を押し殺して進めることもなかったかもしれなかったはずなのに、です。

一方、世の中の多くの『優れたリーダー』と呼ばれる人たちは、

 “OPENNESS(オープンネス)”

を重要視しています。チームや組織から信頼や信用を得て、全体のベクトルを揃える…文化を醸成しやすくするためにはとても有用だからです。これはあらゆる国のビジネスにおいて共通の概念といっても良いでしょう。当然、日本でもそうです。

とはいえ、チームや組織において「オープンであること」「風通しが良いこと」が大事なのは想像がつきますが、具体的にどう振る舞えばいいのかと考えると人それぞれに違うイメージを持つのではないでしょうか。

信頼されるためにまず必要なこと

「OPENNESS」とは、主に

 「寛大さ」
 「心が開かれていること」
 「開示性」
 「開放性」

などポジティブな側面を意味していると考えてください。

2~3年ほど前、人材教育や人事コンサルを中心としているラーニングエージェンシーの田中敏志氏がとあるセミナーの中で仰っていましたが、「開放性」…すなわち他人の意見に聞く耳を持つか否かの度合いなどは本当に重要だそうです。

さらに、OPENNESSは2つの重要な観点を持っています。それは「自己を開示すること」「他を受け入れること」の2つの観点です。

企業でも政治の世界でもディスクローズ(情報を明らかにすること、発表すること)が求められているのは現在に限った話ではありません。情報が開示されないと透明性がなくなり、信頼・信用が得られないからです。

多くの場合、人が自ら判断し行動するためには必ず「情報の見える化」が行われなければなりません。

たとえば、私は今までに数多くのトラブルプロジェクトを解決、解決支援してきましたが、そこでも

 「すべての情報をまとめて開示してくれれば」
 「必要な情報が整理されていれば」

もっとさっさと解決できるのに…と常々思っていたほどです。それくらい必要十分な情報を手元にそろえるということを重要視しています。誰がどう思ってるとかそういう主観的なバイアスのかかった意見(opinion)ではなく、常に事実(fact)に基づいた経緯だけを教えてくれればあらゆることが解決できると思っています。

ITエンジニアのみなさんもよくトラブルプロジェクトの話を聞く際に、

 「お客さまが仕様を提示してくれない」

なんて言い訳を耳にすることがあると思います。これも『必要な情報が揃わないから動けない』の典型です。ゆえにすべての情報を"揃える""開示する""受け入れる"の3要素はつつがなく成功させるための必須条件であり、それをしない者が信用・信頼されることはないと言うことを意味するわけです。

そしてこのことはリーダーシップにも当然いえます。

メンバーやステークホルダーから信頼を得たかったら、リーダー自身が「自分がどういう人間なのか」「皆に信用・信頼してもらえるだけの人間なのか」を真っ先に体現者となって明らかにする必要があります。そうすることでメンバーたちはコミュニケーションのきっかけをつかめます。そうすることが深い関係を構築することにつながるのです。

もちろん、それがなくても命令や指示通りに動こうとはするでしょう。

上司やリーダー、マネージャーにはそれだけの権力があります。
だから、表向き言うことは聞くかもしれません。しかし、そんなもので満足していては言うことしか聞かなくなります。強権を振り回すだけしかできないリーダーシップでは、必要十分で信頼できる情報が開示されない以上、自分で判断できないからです。

こうして主体的に動くことのできない人材の出来上がります。

 「なんでこんなこともできないの!」
 「〇〇しなさい!」
 「◇◇してはいけません!」

親が小さなお子さんに断言口調で命令し、思考させる予知すら与えず、従属することを強いる…昔からこうしたシーンはよくありましたが、そうした子供たちの思考力の成長度合いが緩慢になるのは、その機会を作ろうとしないからなのは言うまでもありません。

そして、社会に出ているはずの親の世代がその程度のことしかできないんですから、その背を見て育ってきた子供たちも同じことしかできないリーダーとなりやすいのは言うまでもありません。他の成功例を見る機会が無ければ否応なくそうなるのではないでしょうか。

もしあなたがリーダーになって、そうした信頼されない存在になりたくないなら、時間や場所、公式か非公式かなどを問わずに、自分からどんどん積極的に情報開示しましょう。

内容も仕事に関わることだけでなく、趣味や好きなスポーツ、家族のことなどプライベートな情報も提供します。とにかく「相手との接点」をできるだけ多く見つけやすくなる環境作りから始めてみてはどうでしょうか。

特に「プロジェクト」活動などは期限が決まっている集団活動ですから、より早くメンバーやステークホルダーとの関係構築を進め、リーダーとしての信頼を得ていく必要があります。そのために関係構築のきっかけとなる接点をより多く提供することが重要です。ためらっている暇はありません。


キックオフで重視すること

プロジェクト活動においては、マネージャーまたはリーダーが計画を策定したらまずキックオフを実施することを推奨します。

これを、

 プロジェクト アクセラレーション プログラム
 (プロジェクト促進活動)

といいます。
今までしてこなかった人にとっては面倒と感じるかもしれません。開放性の足りないリーダーからしたら「なんで言うこと聞かなきゃいけないんだ」と思うかもしれません。中には「今までしてこなくても何も言われなかったのに」と反発する人もいるでしょう。

時間的にも、金銭的にも多かれ少なかれコストはかかりますが、チームビルディングのためのプログラムを最初に設けることは、個々人の納得(腑に落ちる)割合を増やし、主体的に活動できる領域を広げるためには必要なことで、そうすることで足並みが揃えやすく、パフォーマンスは向上し、プロセスの質…ひいてはアウトプットの質にまで好影響を及ぼし、

 『プロジェクトの成功率も高まり
  結果的にトータルコストも抑えられる』

と世界中で考えられています。

しかし小規模なプロジェクトの場合は予算もなく、中にはキックオフをする暇が無かったり、計画性もなく"戦力の逐次投入"と言う愚策に出なければならないケースもあるでしょう。そういったケースではなかなかキックオフする機会を作ることもできません。

その場合は自ら自己開示をして話題を提供し、共通点を探ってみると良いでしょう。

 「私は〇〇が得意です。みなさんは?」
 「私の趣味は◇◇です。みなさんは?」

と言うだけです。仕事だけではなくプライベートでもかまいません。とにかく共通点をたくさん引き出すことが目的です。

このワークのポイントは、あくまで"リーダーからの自己開示"です。

自分の情報を率先して開示するのは恥ずかしいかもしれませんが、これはファシリテートの1つでしかありません。リーダーがオープンにならずメンバーにだけオープンでいさせようとしても、さすがに信頼を得ようと努力しない仲でそこまで他人をコントロールすることは難しいでしょう。そうなるとチームビルディングのスピードもどんどん遅くなる傾向にあるそうですし、限られた時間のなかで強いチームを作るためにどんどん自分を出していきましょう。

これはたとえば教育研修などのなかで私がポロポロと説明する際にもよく使っている方法です。noteのなかでも実際に過去にあったこと、私が感じていることは実例として述べてきました。

失敗も成功も、考えている内面も、オープンにするからこそ説明に厚みが出てくるのです。

逆に、説明している本人自身ができないのに、偉そうに講釈垂れている内容など絵に描いた餅でしかないと感じるせいか、誰も興味を示しません。


価値観の違いを前提に

次に、OPENNESSのもう一つの観点、「他を受け入れること」について考えます。

たとえばあなたがあるプロジェクトメンバーだったとして、

 「タスクの順序設定はこうしたほうが良いと思います」

とリーダーに提案・進言したとします。

「いいから私が言った通りにやってくれ」と返答するリーダーと「なぜなのか、その理由を詳しく教えてくれないか」と返答するリーダー、どちらについて行きたいと思うでしょうか。

自分の提案が受け入れられるかどうかは別として一旦提案を受け止めてくれるリーダーについていきたいと思う方が多いと思います。

合理的に考えれば、YES/NOを早く決断してくれるリーダーのほうが、時間を無駄に使わないリーダーとしてよいのかもしれません。でも何か心の中にもやもやしたものが残りませんか?おそらくはあなたのなかにも何かしら根拠があるから提案したわけですよね。

他人を否定するのは簡単です。

有能なリーダーであればあるほど正しいことを誤っていることの区別がハッキリとついているかもしれません。

しかし、誰にでもプライドがあり、承認欲求があります。それに、100%正しい答えが無いのと同じように、どんなに否決されるようなものだったとしても100%誤っている答えもありません。だから、ただ有能なだけのリーダーではなく、ただしくリーダーシップを取ることのできる優秀なリーダーは、

 どんな内容の提案でも100%否定するのではなく、
 問題点だけを洗い出し、その点だけ改善しながら、
 極力取り込める部分は取り込むように持っていく

ようにします。

自分の提案を完全否定されると否定した相手とのコミュニケーションには気持ちが向かないでしょう。チームにとってはマイナスです。これは確実に信頼関係を断とうとするリーダー側の素行に問題があります。

また、人はそれぞれ違う価値観を持っています。

仕事をする理由、目標とすること、ゆずれないこと。

生きてきた環境や経験から生まれる価値観を否定することは、相手を否定することにつながります。価値観の異なるメンバーをどうまとめるか。明確な根拠をバックボーンに持つ正しい「議論」の重要性こそが信頼関係構築において最も大事なのです。

先ほどチームメンバーとの共通点を見つける重要性を述べましたが、価値観においても同じ要素、似た要素が必ずどこかにありますから、同一である部分から築いた信頼・信用関係を基に価値観が異なる部分について互いの相違点を議論していきましょう。その姿勢こそが大事になってきます。

議論によって他者を理解することができ、他者を理解することでプロジェクトチーム内で最もパフォーマンスが高くなる独自の文化が醸成されていきます。

これらのように、自己開示寛大さ…つまり「OPENNESS」は、チームビルディングの大前提です。

それはプロジェクトチームだけにとどまらず、組織を成長・拡充させていくためにも必須と言えるでしょう。だからこそ何年か前に話題になった吉本興業でのゴタゴタのようなことが起きたわけです。

 "隠蔽する"
 "人払いする"
 "承認欲求を無視する"
 "押し付ける"

これらは最初に伝えた「OPENNESS」に見事にすべて反しています。
挙句の果てに相手目線で見ることを忘れ、

 「そう言うつもりはなかった」
 「冗談のつもりだった」

と言うすべて自身の思い込みだけで勝手な判断を下そうとし、しかもそれが言い訳として成立すると思い込んでしまえば、その先に待っているものは組織の破綻だけです。「OPENNESS」に反し、自分さえよければいいと言う自己中心的な人の典型的な表れです。

 

もちろん、最初から完璧なリーダーなどいないのも道理です。最初はリーダーの真似事から始めて、少しずつ自信を培っていくものであるのも確かです。

しかし、チームビルディングの原理原則から知っておきたいと言うのであれば、ただただ見よう見まねでやっていくのではなく、ゴールを目指すためにまずは「OPENNESS」から始めてはいかがでしょうか。

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