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メンバーの心を動かすには

一言でいえば、

 「リーダーがブレないこと」

です。言い換えれば、優柔不断なリーダーにはついていきたくなくなるよね!?ってことです。

メンバーから信頼され、チームを動かすには、リーダーはやり方や考え方がブレないで一貫している方がいいでしょう。もちろん間違いに気付いていながら、自身のやり方に固執して変えようとしないのはNGです。

 「ブレない」≠「頑固」

だけは履き違えてはいけません。むしろリーダーには柔軟性が求められています。ですが柔軟な姿勢であるべきなのは、自らの非を素直に認め、常に最善を尽くす時だけです。それ以外がブレてはいけないということです。

 リーダーは部活でいえば「キャプテン」
 マネージャーは「監督」

と言ったところでしょうか。よほど大きなプロジェクトじゃない限り、リーダー兼マネージャーをさせている会社も多いと思います(キャプテン翼の三杉君、スラムダンクの藤真君みたいな立ち回りを要求されているわけですから相当負担が大きいでしょうが、偉い人たちにはそれがわからんのですよ)。

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ここでいうリーダーは「リーダーシップを発揮する者」と言う立ち位置で解釈しておいてください。

リーダーはメンバーを導くもの

一般的にリーダーは、チームを統率する上での方針や、仕事の進め方を大筋で決めているはずです(マネジメントをしているなら"大筋"程度では困りますが)。何も決めずに無策でチームを統率しているのであれば、確実に失敗する確率が高まってしまいます。

たとえば、

 仕事の目標や範囲
 体制や役割
 スケジュール
 仕事の進め方、進める順番
 仕事の結果についての責任の負い方
 メンバーや顧客への接し方
 仕事を進める上での諸々の判断の仕方
 判断基準
 仕事の評価の基準

など、あるいは大半はだいたい決めているのではないでしょうか。

また、リーダーであれば責任感も持っていると思います。正しく誘導する責任がありますしね。そこから業務やメンバーとしてのあり方、顧客との関係をどうするか、会社組織とは、仕事とはなどについての考え方や哲学を決めて(持って)いる方もいるのではないかと思います。

このような、決めている考え方や進め方がちょっとしたことでブレるようではメンバーは安心して仕事ができません。私が今までやってきた中で一番苦労したのは

 「その日、その場の思い付き」

で無計画にメンバーを振り回すリーダーさんでした。朝令暮改を責めているのではありません。納得できる理由があって朝令暮改になるのは仕方のないことです。問題は、無策で特攻しているという事実です。少なくとも私は二度と一緒に仕事をしたいと思いませんし、私のほかにも同じような意見の人も多いのではないでしょうか。

リーダーは、どんなに自信がなくても、どんなに不安があっても、多少の状況の変化や回りからのプレッシャーなどで安易に変えないようにしなくてはなりません。それでも自信が無くて変えたいというリーダーさんは、そんな状況になる前にもっと理論武装できるくらい勉強しましょう。

仮に経験が無くても、世の中のベストプラクティスはググればたくさん出てきます。PMBOK(ピンボック)なんて、世界中のプロジェクトの成功事例を集大成にしたような規格なので、丸コピは無理でも要所要所では十分に参考になります。他にも、有識者や経験豊富なベテランに聞くのもいいですし、周囲で起きた失敗談などからも学べることはたくさんあります。自分の中で『根拠』となる論理がきちんと言語化できるだけでも、相当自信になるはずです。

進め方や考え方、判断基準などが安易に変わったり、大した対策もせず朝令暮改ばかりを繰り返していると、メンバーはその都度振り回されてどう動いてよいのかわからなくなり、結果としてチーム全体が混乱します。そしてなによりリーダーとしての信頼を失います。場合によっては「そんなリーダーにはついていけない!」と反旗を翻されるかもしれません。

そのためプロジェクトでは大抵の場合、発足直後に

 キックオフ・ミーティング

が行われたりするのです(一部の大手SIerがやってるような定時後の飲み会のことではありませんよ?)。

キックオフ・ミーティングは、リーダーの、プロジェクトの進め方や考え方を形にした「計画書」と呼ばれるルールブックをもとに、その内容(目的、目標、手段等)をあらかじめメンバーに伝え、メンバーのみんなが付いてきてくれるように、あるいはついてきやすいように情報の共有を行い、教育や誘導を行うためのものです。

言語化、文書化することでブレにくい空気を作る、と言う意味もあると思います。全員の前で「〇〇します!」って宣言しちゃったら、ちょっとやそっとでは無かった事にしにくいですよね。むしろ、何かしら言い訳をつけてこの宣言ができないと言うことは、

 「いずれ、手のひらを返したようにみなさんを振り回します」

と明言しているようなものです。何も語らない方がよほど厄介なのです。

ですからまずは、キックオフ・ミーティング等によって、リーダーの考えていることをメンバー全員に通達すること。これが、プロジェクトにおけるコミュニケーションの第1歩と言っていいでしょう。


ブレないのが理想だけど、やむを得ない場合は柔軟に変化する

ただし、「計画」時点で決めたことが適切でなかったと確信した場合には、区切りを付けて改めることも重要です。常に状況の変化に応じて戦略や戦術を変更するのは、戦略家/戦術家であれば当然のことです。当初の計画に固執する理由は何もありません。

その場合には、変わったことがわかるように明確にメンバーに示し、変えた理由や今後の進め方を伝え、その変更が妥当であることを認めてもらいましょう。

一方的に押し付けるような独裁的なリーダーシップはご法度です。メンバーの信頼を根こそぎ失うことになりかねません。

リーダーが自ら決めたやり方や進め方を変え、そのせいでメンバーに負担をかけようとするのですから、最も大事なのはメンバーたちの

 『理解』『納得』

であることを忘れてはいけません。裏を返せば、それができないリーダーは、リーダー失格であると言うことです。

もちろん、人の記憶に依存し続けたまま運用するわけにもいきませんので、こうした変化点もしっかりと記録化することが大事です。記録に残して周知しないと、ある時忘れてしまったメンバーが誤った行動を起こしてしまうかもしれません。途中で変更する場合などは、みんなの目が届くところに貼っておくとか、毎朝の朝礼や雑談のなかで頻繁に取り上げる等した方がいいでしょう。

進め方や考え方、文書の様式等に変更が加わる場合、基本的にお客さまからの仕様変更と同じ扱いで、メンバーには気持ちや意識を切り替えてもらう必要があると考えましょう。これは、マネジメントにおける「変更管理(変更依頼管理)」の一部になります。

もしも経営でこのような変更を加える場合…たとえば内規の変更などを行う場合は、法律に定められた保管年限の間、履歴をしっかりと残しておかなくてはなりません。同じことをプロジェクトの経営を行っているリーダーも、実施しておきましょうと言っているのです。


リーダーがブレずにいてくれれば「経験」は後の成長要素となる

これをちゃんと実施していると、PDCAの「C」と「A」が最大限の効果を発揮できるようになります。

マネジメントの締めくくりは「振り返り」…すなわち「評価」することです。一番最初に立てた計画(これをベースラインと言います)から

 ・どれだけ変更したのか
 ・どれだけ実績と乖離したのか

この「計画と実績との差異」こそが一番重要な比較データとなります。なぜなら、差があると言うことは、「計画」時点で煮詰めきれなかったということだからです。

「計画」はリーダーから展開し、メンバーが了承した目的、目標、手段などの集合体です。もしも実績との差が出てしまう理由(真因)がわかれば、「計画」を立てる際にその反省を活かし、次からはもっと精度の高い計画にすることが可能になるということです。

そして、精度の高い計画は「進め方でもっとブレなくなる」ということでもあるのです。進め方をコロコロと変化させないと言うことは、メンバーに最も負担をかけないということでもあります。

ITエンジニアをしている方のみならず、プロジェクト活動をしている方ならわかるはずです。

当初計画(ベースライン)のスケジュールや見積りこそが、最も残業しないスマートなスケジュールのはずです。これがブレる…ということは、そのブレた分だけ作業が増えたり、やり直しが増えると言うことですから、自ずと『残業』を強制させられる機会も増えると言うことです。

ゆえに、計画の内容通りに終了できることが、最も優れた進め方であったと言うことになるわけです。だからこそ、

 「予定よりも遅くなった」
 「予定よりも残業が増えた」
 「予定よりもコストがかかった」

といった計画とのマイナス差異だけでなく、

 「予定よりも早く終わった」
 「予定よりも利益がたくさん出た」
 「予定よりも…etc.」

と言うプラス差異であっても、それは計画が杜撰だった証であって、必ずしも褒められたものではないのです(実際には、工事進行基準のような会計上の考え方にも共通するのですが、知っている人は少ないようです)。


経営者が一番「マネジメント」をわかってない

少し脱線すると、

 1. 計画を立てる
 2. メンバーに周知する(キックオフ・ミーティング)
 3. 計画通りに進める(進められるようにするためにはどうすればいいか)
 
4. 計画は容易にコロコロと変更しない(やむを得ない時だけ)
 
5. 計画差異を評価する
 6. 差異要因を明らかにする
 7. 次の計画に反映する


これがマネジメントの正しいあり方です。企業経営も年度始~年度末までを1つのプロジェクトとしてみた場合、同じような流れになっているはずですし、四半期でもやってるところはやってるでしょうし、月1で行っている企業もあるかもしれません。

(偶然または奇跡的に)利益を上げる人が優れているのではありません。
計画通りに進め、計画通りに利益を出せる人が優れているのです。

世の中の多くの経営者ですら、このことが理解できていないんですけどね。

だからノルマだけ与えて、ノルマを大幅に達成してしまったら中身を分析しないで評価し、達成しちゃった社員を昇進させようとしてしまうわけです。

実力の伴わない社員が「たまたま」「運よく」成功しただけの場合、当然ながら上司として、管理職として、部下を指導することができません。だって「運」や「外的要因」では本当の「実力」を補えないからです。つまり

 「組織的な活動による成功」が保証されない

人事を行ってしまい、会社にとっても、昇進された本人にとっても、その下に就く部下にとっても、不幸な結果となってしまうわけです。今、世の中で高原価ゆえにリストラされている人たちと言うのは、大抵そんな人たちです(あとは無計画に年功序列で上がった人?)。

「計画通り」に終わると言うことは、大抵の場合は残業過多になることもなく、顧客満足度もそれなりに高い評価になっているでしょうから、

 顧客⇔自社⇔リーダー⇔メンバー

の間で、本当の意味でのWin-Winが築けているはずです。

原則、この考え方に則っていないと、チームであっても、会社であっても、長期的な組織運営は決してできません。日本ではマネジメントを「管理」と意訳しますが、同時に欧米では「経営」や「運営」と言う意味で多く使われるのは、要するにそういうことです。プロジェクトのリーダーだけでなく、経営者にも同じことが言えるのです。

たとえば、チームであっても、経営であっても目先の評価ばかりしか見ないで、

 ・売上や利益は予定以上に出したけど、従業員を3人つぶした
 ・売上や利益は想定以上に回収できたけど、顧客は「もう二度とおたくに  仕事は出さない」と言った
 ・売上や利益は計画以上に達成できたけど、外注業者がみんな逃げていっ  てしまった

と言うのでは意味がありません。常に計画的でなければならないのです。

上場企業などは、年度の初めに予算計画などをIR情報(Investor Relations:投資家に対する広報活動)として公開していますよね(非上場の場合は企業側に業績等の開示義務がないため、多くの企業は掲載していません。)。

企業の成長戦略を公開することで、投資家の信頼を得て、自社の株を買ってもらってキャッシュを集め、事業の拡大を図ることを目的としているわけですが、この公開した情報は、計画通りでなくてもいいなんてことは一切ありません。

嘘の計画なんて発表した日には、投資家からの突き上げを食らうばかりでなく、証券取引所から締め出されて、二度と上場(株式公開による資金調達)をさせてもらえなくなってしまうかもしれません。

 「計画的」に戦略をたてる
 「計画通り」に事業を運営する

と言うのは、企業運営や組織運営では必須の能力です。プロジェクトマネージャーは、ミクロな組織体(チーム)の中で、経営の予行演習をしているようなものなのです。

ですから、実力に裏打ちされたプロジェクトマネジメントの結果として、成功を収められるリーダーやマネージャーこそが、最も経営に向いた能力を持っているともいえるでしょう。IT業界で、個人事業主やベンチャーを立ち上げる人の多くが過去にマネージャー経験をしていると言うのもうなずけます。

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