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酒を飲み交わし語ったのは「後継ぎ不在」。20年来の縁が生んだ「たすき」を探る!

皆さんこんにちは。
『ツグナラ』新人コンサルタントのひらないと申します。

今回から連載するのは「御社のたすきはなんですか?」シリーズ!

地域企業の後継ぎ問題に関心がある新人コンサルタントの私、ひらないが、事業承継に成功したご当地の優良企業(ツグナラ企業)にインタビューを行っていきます。

記念すべき第一回目は、栃木県宇都宮市のツグナラ企業
「幸洋運輸株式会社」平賀会長にインタビューです!

運送業×運送業 同業種の引き継ぎ

ひらない ツグナラに引き続き、2度目の取材ですね!どうぞよろしくお願いいたします。

平賀会長 はい、よろしくお願いします。

ひらない 幸洋運輸さんでは、なんと2度も事業承継を経験されているんですよね。しかも、どちらも第三者承継(M&A)。今日は興味深いお話が聞けるのではと楽しみにしてまいりました!

記念すべき第一回は平賀会長!にこやかにお答えいただきました。

ひらない 御社にとって初めての事業承継は、同業種の「竹中運送店」さん。

平賀会長 そうですね。もともと竹中運送店の社長である竹中くんとはトラック協会の青年部の仲間だったんです。さらに同じ大学の後輩でもあり、何かと縁を感じる人物でした。

ひらない そうなんですね!同業の中でも強いシンパシーがおありだったんですね。

平賀会長 あるとき、酒の席で竹中くんのせがれさんが別の会社に就職して後継ぎがいないんだと相談を受けました。
同時に、彼の竹中運送店への想いや従業員の生活を守りたいとの思いを聞いていく中で、地域にとって必要とされ、誰かの居場所になっている会社が無くなってしまうのはさみしいなと思ったんです。
そして、何とか救ってあげられないかと…そこで「あとは俺が見てあげるよ」と覚悟を決めM&Aという形で竹中運送店を引き継がせていただきました。

お酒を飲みかわしながら語る平賀会長と竹中社長。
地域に必要とされる企業がなくなってしまうのは悲しいものです…(イメージ図)

ひらない 古くからの仲が結んだご縁だったんですね。同じ運送業ですが、扱う商品も一緒だったんですか?

平賀会長 いいえ、まるっきり別でした。竹中運送店は農協がメインのお客様である会社で、主に食材を運びます。1952年創業の老舗で、牛を生きたまま運ぶ仕事から始まった会社なんです。県内でも数少ない専門業者として続けていました。

ひらない 生きたままですか?!特別な仕事だからこそ知識や経験が必要になりますね。運ぶものが違うと新しい事業展開もできそうです。

平賀会長 そうなんです。竹中運送店では運ぶだけでなく、食材センターの発送管理まで運営していました。うちにはないものを持っているからこそ、手を組んだらきっと面白いだろうなと思ったことも事業承継の決断をしたポイントでしたね。

ひらない ちなみに、承継のお話が出たのはいつ頃のことだったんでしょうか?

平賀会長 2018年の3月29日。一緒にお酒を飲んだのがその半年くらい前だったから…動き出してから成約までにかかった期間は約5か月でした。

ひらない 話が出てから成約まで半年?!すごくスピーディーですね。通常、親族外承継では1年ほどかかる事例が多いですが、ここまで早く進められたのはなぜでしょう…?

平賀会長 やはり昔からの知り合いだったからかな。それに、事業承継をした後も竹中くんが取締役として2年間残ってくれたんです。おかげでM&Aによる事業統合後も取締役に伴走してもらいながら引継ぎができたので、スムーズだったと思います。

ひらない なるほど!会社を引き継いでからも一緒に伴走してくれるなら安心ですね。事業承継は結婚によくたとえられるのですが、この時サポートしてくれた仲人のような金融機関や専門家はいましたか?

平賀会長 お互い違う金融機関をメインにしていたんですけど、弊社のメインバンクだった銀行に仲介をお願いしました。会計士さんもうちでお願いしていた所に入ってもらいましたね。引き継ぐにあたってお金回りも含めて竹中運送店の中身から変えるために数字を検討しました。

ひらない 一方で、新しい業界と関わることに戸惑いや難しさは感じられなかったんですか?

平賀会長 昔から知ってたし、竹中さんは自社の荷主(お客さん)がいる運送会社だったから、特になかったです。竹中くんは、60歳で引退したいという本人の人生設計があったんですよ。ちょうど承継の話が出たときに58歳だったから、それなら今だなと思って。

ひらない 荷主がいると、どんなメリットがあるんですか?

平賀会長 運送業の中でも他の運送会社から仕事をもらっている会社と、荷主から直接仕事をもらっている会社があります。
うちは地域に根ざした経営なので、他の運送業とは必ずどこかで繋がっているんです。だから、運送会社同士で仕事をやり取りしているところを事業承継しても新たな事業やお客さんに繋がるとは限らない。一方で荷主がいれば、他の業界との繋がりを持てますし、自社にないノウハウや学びが得られますね。

ひらない 具体的に、どんな学びやポジティブな影響があったか教えてください!

野菜の出荷時期によってスケジュールが決まっているそう。
栃木の美味しい野菜をお届け!(イメージ図)

平賀会長 竹中さんは旬の野菜を取り扱っているので、出荷時期が細かく決まっている仕事でした。
ですから、年のスケジュールや収支が毎年安定している事業内容だったんです。1年の予定が決まっていると会社の経営も見通しを立てやすいですから、その点ではすごく勉強になりました。
竹中さんの数字の作り方や営業の仕方は見習うべき良いところが多いので、同じような仕組みができるといいのかなと思いました。

ひらない おっしゃる通り、違ったやり方でやってみると得られる学びは大きいですよね!ちょうど承継後にコロナ禍突入といった時期でしたが、影響はありましたか?

平賀会長 コロナ禍によって、それまでの中心だった牛を運ぶ事業が出来なくなり、売り上げ減少の打撃を受けました。しかし、新しく栃木県内の病院に手袋や医療用のガウンなどを運搬する仕事を受けるようになりました。この仕事内容だと牛の運搬のように特殊な車や専門の技術が必要ないので、女性やある程度高齢のドライバーでもすぐに運べます。地域の雇用を創出することが出来たので、悪い影響だけではなかったと思いますね。

ひらない なるほど。地域の雇用を守ることも事業承継の役割の1つですからね。引き継いだ社員さんに関しては、不安点はなかったのですか?

平賀会長 実のところ、いちばん不安だったのはドライバーが残ってくれるかでした。竹中さんの従業員は10人程度で、ドライバーさんとパートさんが半分ずつくらいです。
パートさんは皆さん女性ですね。M&Aをすると決め、内々で話を進めていき、成約の1~2か月前に社員に話をしました。一人ひとりと面談を行い、今後のことについてじっくり話せたのが良かったと思います。ほとんど皆さんが今でも残って働いてくれていますね。

ひらない 面談があると安心ですね!さて、最後の質問になります!
事業承継ではリレーのように想いや社員さん、会社の建物や設備、社長の言葉まで、様々なものを受け継ぎます。私はこの引継ぐものを「たすき」と呼んでいるのですが…平賀会長が竹中さんとの事業承継において、受け継いだ「たすき」を教えてください!

平賀会長 「お互いの想い」ですね。
お互いの想いを大切にすれば、いい形の事業承継が出来るのかなと、そんな気がしますね。私は友人である竹中さんだけでなく、会社が積み上げてきた歴史、栃木・宇都宮という地域全部含めて想いを大切にしています。

平賀会長の考える「たすき」は想い。
本社には、大きな「笑」の字が掲げられていました!


事業承継はM&A、つまり合併・買収という冷たさを感じる言葉で表されることもありますが、私は「後を継ぐ」ことだと考えています。まさしく承継ですよね。それまで培われてきた人の想いを後世に継いでいって、地域に密着した事業を守っていきたいです。
この承継への想いが譲り手と預かり手で重なったとき、同業異業を別として、どんな事業でも上手くいくのかなと思います。

ひらない 平賀会長にとっての「たすき」は「想い」なんですね。とてもいいお話を聞かせていただきました!ありがとうございました!


幸洋運輸さんからは、同業種の事業承継についてお話をお伺いしました!
次回は、さらに異業種との事業承継についてもインタビューさせていただく予定です。

幸洋運輸さんのツグナラ記事はこちらから

違う業界のお仕事を引き継いだ、貴重なご経験をお話いただきます!
たすき第2回もお楽しみに!

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