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【短編ホラー小説】短夜怪談「車椅子」

祖父のお見舞いで病院を訪れた。面会時間ギリギリまで居て、さあ帰ろうと言う時。薄暗い廊下を、私と姉で歩いていた。
ギッ、ギッ、ギッ。
車輪が動く音。後ろから。
「えっ」
姉と振り向くと少し遠くに、無人の車椅子がある。それはゆっくり、まるで人が乗って動かしているような動きで前進して来た。固まる私たちの前にある角を曲がり、看護師たちがいる方へ消えて行く。ぎゃっ、と悲鳴が聞こえたところで、見間違いなどで無いことが分かり、私たちはエレベーターへと駆け出した。

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