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【短編ホラー小説】短夜怪談「古放送」


帰宅してリビングに入ったら、液晶テレビの代わりに古いブラウン管テレビがあった。

部屋を間違えたかと思ったが、テレビ以外は正真正銘、自分の部屋。呆然とテレビを見ていると、ザーッと音がして、画面が付く。中には、喪服姿のアナウンサーみたいな男。神妙な面持ちで映っていた。
「○○家長男 ○○さん。✕✕家当主 ○○さん。△△家次女 ○○さん……」
名前は聞き取れないが、知らない家々の人たちの名前を無機質に読み上げている。BGMがやけに明るくポップな曲調で気味が悪い。
「以上の方々です。式場のご準備をお進めください。参列予定の方は鏡と喪服をお忘れなく。尚、清め塩は効力がごさいません。ご容赦ください」
理解出来ない内に、男は綺麗な形でお辞儀をする。バツンと音がして、テレビは切れた。ハッと我に返ると、ガムテープでそのテレビをぐるぐる巻きにしていた。そしてそのまま布団を被って寝たのだ。

次の日。リビングにはガムテープでぐるぐる巻きにされた液晶テレビがあった。




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