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「忍びの家」 - 進化する日本の忍者エンターテインメント

★★★★★

賀来賢人のインタビューを読んで興味が湧き観てみました。エンターテインメントの王道を行く感じ、好きです。「サンクチュアリ」の相撲もそうですが、主にNetflixの舞台で、贅沢に予算を遣い海外から観てすごく日本的な題材を日本で本気で作品にするのは面白い動きに感じます。服部半蔵と風魔小太郎と言えば、日本人なら誰でも聞いたことくらいはある名前なわけで。それを最大限現代的に置き換えてみたらこうなった、という一本。漫画でならとても想像しやすい世界なのですが、それを普通に実写でできる時代になってきたのだなというぼんやりした感慨もありました。

あらすじ

服部半蔵の子孫であり現代においても忍びを生業とする俵家。6年前、BNM(忍者管理局)の依頼を受け、誘拐された政治家・向井瞳子を救出する任務に当たっていたが次男の晴(賀来賢人)は敵の風魔忍者と戦い相手を倒したものの命乞いをされるととどめを刺せずに終わります。父・壮一(江口洋介)が風魔小太郎を斬り向井の救出に成功しますが、晴が逃がしてしまった忍者の手で長男・岳(高良健吾)が刺され、海に転落してしまうのです。

岳を喪ったことをきっかけに忍びの家業を畳み、普通の生活を送ることにした俵家。壮一は表向きの仕事である酒造に専念するものの、資金繰りに苦しんでいます。晴は事件のことがトラウマになりアルバイト暮らし、母の陽子(木村多江)、長女の凪(蒔田彩珠)は普通の日々ではどこか刺激が足りない様子…(いやしかし俵家のキャスト豪華)。

そんな中、BNMの浜島(田口トモロヲ)が俵家に接触してきて、最近発生した遊覧船で乗客が全員毒物で死亡した事件の捜査をするよう要請してきます。壮一は断りますが、スーパーで万引きを繰り返していたところを浜島に見つかってしまった陽子は流れで個人的に引き受けることに。

晴は晴で行きつけの牛丼屋でよく出くわす伊藤可憐(吉岡里帆)のことが気になっており、ある日彼女にようやく取り付けた食事の約束をドタキャンされ、気になって可憐を尾行してみることに。

すると可憐は仮面をかぶってクラブへ入っていくのですが、そこで彼女に会った男性が謎の暗殺者に殺されてしまいます。暗殺者は可憐も殺そうとしますが、顔を隠した晴が助けに入り可憐を逃がします。ですが助けたのが晴ではないかと気づく可憐。

そして可憐は次に会ったとき、自分が雑誌「ムー」の記者だと明かし、晴をとある宗教団体の潜入取材に誘うのです…。

圧倒的に強いファミリーを圧倒的俳優陣で

まさに世を忍ぶ仮の姿で暮らす俵家。一見普通の家庭なのに生活の端々に滲み出てしまう常人離れした運動神経がユーモアになる序盤です。ヒーローものの鉄板とも言える導入ではないでしょうか。

やがて敵対組織としてうっすら姿を見せてくる謎の新興宗教・元天会。その教祖に君臨するのが山田孝之演じる辻岡洋介です。これはもう、山田孝之を使い倒すための役というか、山田孝之の行き届いた演技で伝説の忍び・風魔小太郎を贅沢に表現する、そんな存在です。本当に山田孝之は悪役が似合います(褒めてる)。

バトルが本格化するにつれ、華やかなアクションシーンの乱れ打ちに。個人的には母・陽子がめちゃめちゃ戦闘能力高いのが大好きでした。そして忍びモードの壮一は、普段のちょっと情けないお父さんとは全く違ってとことん強くてかっこいい。「ムービング」もそうでしたが、ずば抜けて強くて家族のために闘う親というキャラクターはヒーロー感が増すというか観ていて気持ちのいいものです。

晴も主人公らしく、淡い恋を端緒に結局は闘いの場に入っていくことになります。この作品のポイントは主人公の賀来賢人が原案を務めているところ。だからかやはり晴はすごく少年漫画の主人公的な存在感があって、物語を通して静かに成長を見せていくし、恋心もありながら忍びとしての宿命を背負っていくことになるのです。もちろん原案者としての創造性や商業的な意味での感性の鋭さもさることながらですが。

旧き善き忍びを現代的洋風解釈

監督はアジアにも強いアメリカ人の方のようで、確かにそこかしこに海外ドラマの趣もあるなと感じました(音楽の使い方なんかでアメリカの「ブラックリスト」がよぎったりしました)。それぞれに妥協せず、とてもいい塩梅に仕上がっているのだと思います。

シーズン2も想定した終わり方のように受け止めましたが、そのためか描ききらなかった部分も多い気はします。地上波のドラマでは難しい水準のエンタメを実現していると思いますし、贅沢なキャスティングを充分に活かしている良作なので海外でも評価を受けたらいいな〜と期待。続編を楽しみにしています。



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